岩波文庫「新美南吉童話集」。
どれも、良いお話ばかりでした。
タイトルは「童話集」ですが、対象は、やはり、子供よりも、大人が読むべき作品のような気がする。
もっとも、子供が読むことを前提に書かれている作品なので、子供が読んでも、十分に、面白いはず。
個人的に、印象に残った、大好きな作品を紹介します。
「最後の胡弓弾き」
これは、かつて、日本の各地で見られたであろう「門付け芸人」のお話です。
この「門付け芸人」とは、家々を訪ね、その門前で、芸を披露し、お金を貰うことを職業にする人たち。
主人公は、プロの芸人ではないのですが、胡弓に魅せられ、一年の、ある期間だけ、胡弓の演奏を披露して家々を訪ねることになる。
しかし、その胡弓の演奏を楽しみにしてくれる人も、次第に居なくなり、ついに、主人公は、胡弓を手放し、「門付け芸人」を辞めることになる。
もしかすると、多くの「門付け芸人」の人たちが、こうやって、消えて行ったのではないでしょうかね。
「おじいさんのランプ」
少年が、家の中で、偶然、見つけた「ランプ」。
少年が手にしていた「ランプ」を目にしたおじいさんは、自分の過去と「ランプ」の物語を話し始める。
この物語には、かつて、家庭で広く使われていた「ランプ」が、どのように広まり、そして、消えていったのかということが描かれています。
世の中に「新しく、便利なもの」が生まれて、それが広まることになりますが、やがて、それは、別の「新しく、便利なもの」に取って代わられ、消えて行くことになる。
これは、虚しいですが、仕方がないこと。
「百姓の足・坊さんの足」
このお話は、どても面白い。
詳しく話すと長くなるので、敢えて、内容は省きますが、アニメにでもすると、とても面白いものになるだろうと思います。
「百姓」とは、どういう人なのか。
そして、「坊さん」とは、どういう人なのか。
本当に「偉い人」とは、どのような人なのか。
やはり、「文学」となると、どれほど良いことが書かれていたとしても、読むのが難しい上に、内容を理解することも難しいという場合も多い。
しかし、子供が読むことを前提にして書かれた「童話」「児童文学」は、とても、読みやすく、分かり易く、面白い。
そもそも、本を読むことに抵抗がある人は、こういう作品から読み始めるのが良いのではないですかね。