藤子F不二雄さんの漫画に「TPぼん」という作品があります。
「TP」は「タイムパトロール」と読みます。
主人公は、「並平凡」という少年。
タイムパトロール隊員である女性「リーム」の仕事を、偶然、目撃してしまったことにより、凡もまた、タイムパトロール隊員に、採用されることになる。
この「タイムパトロール」が、何をするのか。
それは、歴史の中で、不幸、不運によって亡くなってしまった人を助けるのが仕事。
そして、それは、「歴史を変える」ことなく、「出来るだけ自然な形」で、遂行しなければならない。
そして、対象の人を、どのようにして助けるのかは、現場の隊員の裁量に任されている。
この漫画は、「歴史的事件」の史実による物語と、「タイムパトロール」というフィクションの物語が、絶妙に組み合わさって、とても面白い作品。
藤子F不二雄さんは、まさに「天才」だと思うところ。
個人的に、強い印象が残っている物語を、二つ、紹介します。
まず「TP隊員の犯罪」という一話。
並平凡のところに、本部から「隊員が、殺人事件を起した。その隊員の身柄を確保しろ」という指令が来て、凡は、相棒の隊員安川ユミ子と共に、現地の時空に飛びます。
なぜ、人命を守るのが仕事のタイムパトロールの隊員が、殺人事件を起したのか。
凡は、その隊員を追い詰め、身柄を確保したところで、その隊員が殺人事件を起した動機を聞く。
実は、その隊員は、凡の住む時代よりも以前の時代から採用されたタイムパトロール隊員だった。
そして、その隊員の生活している時代、「クジラ」が、乱獲により、絶滅の危機に瀕していた。
その「クジラの絶滅」に心を痛めたその隊員は、クジラの乱獲が始まるきっかけを作ることになるある人物を探して、この時代に飛んだのだった。
しかし、その「きっかけ」を阻止することに失敗し、隊員は、その人物の殺害を決断したという理由だった。
凡は、事件を起した隊員を、本部に引き渡す時、「僕の時代では、クジラの保護が進み、数も増えています」と、その隊員に伝える。
隊員は、安心して、連行されることになる。
と、言う物語。
もう一つは「戦場の美少女」という話。
並平凡と、相棒のリームは、「桜木少尉」の命を救えという指令を受け、太平洋戦争末期の沖縄に飛びます。
桜木少尉は、神風特別攻撃隊の隊員で、今、まさに、特攻機が、アメリカ艦隊に突入を始めている。
時間の流れを遅らせ、凡とリームは、特攻機の中から、桜木少尉を探します。
しかし、なかなか、見つからない。
悲惨な戦場の中で、凡は、リームに、こう叫びます。
「体当たりをする特攻機にも、体当たりをされる軍艦にも、人が乗っているんだ。誰彼構わず、助ければ良いじゃないか」
しかし、リームは、
「黙っててよ。私が、平気だとでも思っているの。早く、桜木少尉を探しなさい」
と、涙を流しながら、凡に、叫び返す。
ようやく、桜木少尉を見つけた凡とリームは、桜木少尉を時間の流れから外し、特攻機から救出する。
しかし、救出をされた桜木少尉は、拳銃を持ち、一人で、アメリカ軍に斬り込もうと行動を始めます。
何とか、桜木少尉を止める方法は無いのか。
凡とリームは、桜木少尉の恋人の幻影を、桜木少尉の前の出現させ、恋人による説得を試みる。
しばらく、恋人の説得を受けた桜木少尉は、ようやく、アメリカ軍に投降する決意をする。
と、言う物語。
他にも、良い話、面白い話が、たくさんあります。
藤子F不二雄さんが、亡くなったことで、完結は、していませんが、とても、良い、面白い漫画です。