川端康成の小説「雪国」。
「国境の長いトンネルを抜けると、雪国であった」という冒頭は、あまりにも有名ですよね。
昔、若い頃に読んだ時には、何だか、よく分からず、何とも思わなかった。
でも、最近、読み直したところ、非常に、面白く、味わい深い感じ。
さすが「名作」と言われ、ノーベル文学賞の対象作品になっただけのことはある。
なぜ、昔、よく分からず、何とも、思わなかったのか。
それは、恐らく、この小説の「書き方」に原因がある。
主人公は、「島村」という、東京で文筆業をしている男。
東京には、妻も居て、子供も居る。
この島村が、雪国の温泉街(具体的には、越後湯沢のようですが、小説の中に固有名詞は出て来ない)に、「駒子」という女性に会いに来るというのが、この小説の物語の中心。
この小説の冒頭で、島村は、列車の中で、一人の女性に目を留める。
それが「葉子」という女性で、葉子は、病身の男を看病している。
この病身の男が「行男」ということになる。
この「島村」と「駒子」との関係。
そして、「駒子」と「葉子」の関係。
更に、「駒子」と「行男」、「葉子」と「行男」の関係。
この四つの関係が、島村、一人の視点から語られているので、どうも、駒子、葉子、行男の三人の関係が、よく分からない。
特に、駒子と葉子の行動が、理解し辛い部分が、多々、ある。
読者は、島村を通して、物語の風景を見ているので、島村に分からないことは、読者にも分からない。
そこが、昔は、「よく分からない」という感覚になり、最近、再び、読んだ時には、色々と想像をすることで「味わい深い」という感覚に変化をしたのだろうと感じるところ。
さて、僕が、この「雪国」を再読するきっかけになったのは、NHKのBS4Kで、高橋一生さんを主演にして「雪国」がドラマ化をされたという話を知ったから。
島村を、高橋一生さん。
駒子を、奈緒さん。
葉子を、森田望智さんが演じている。
ドラマのホームページを見ると「新解釈でドラマ化」と書いてあったので、どのようなものかと思っていたのですが、原作の雰囲気、そのままの、とても良いドラマでした。
「新解釈」とは、小説では、よく分からなかった部分を、具体的に描いていたことを指しているのだろうと思います。
駒子、葉子、行男の関係。
そして、島村の前で見せる、駒子の不可思議な態度など、具体的な解釈で、ドラマとして物語の中に加えられていて、とても、分かり易く、面白いものでした。
やはり、ドラマを見る前に、小説を読んで、色々と考えるのが、面白いのではないかと思うところです。