昔は、文章を書く時に使う言葉と、喋る言葉が違っていた訳で、今では、かつて、文章を書く時に使っていた「文語」というものは、使わない。

そのため、今では、文語で書かれた小説は、非常に、読みづらく、そして、分かり辛いものになっている。

泉鏡花や、樋口一葉など、いくら「名作だ」と言っても、手に取って、読んでみようと思う人は、今となっては、少ないのでしょう。

しかし、この「文語」で書かれた小説の中でも、比較的、読みやすく、分かり易い小説が、一つ。

それは、幸田露伴の「五重塔」という小説。

 

 

物語の主人公は、十兵衛という大工。

腕は、確かなのですが、何事にも、愚鈍で、要領が悪く、周囲の人からは軽んじられ、普段は、小さな仕事しか貰えない。

しかし、感応寺というお寺で、五重塔が建設されると聞いて、この一世一代の仕事を、ぜひ、自分でやりたいと、一念発起をして、お寺の上人に頼み込むことに

何事にも、愚鈍で、「五重塔を、自分で建てたい」という信念に取りつかれた十兵衛は、周囲の人たちとトラブルを起こしながらも、五重塔の建設に打ち込む。

そして、様々な困難、トラブルの末に、ようやく完成をした五重塔を、大暴風雨が、襲うことになるのだが・・・。

 

非常に、よく出来た物語で、分かり易く、面白い。

 

幸田露伴は、口語でも小説を書いていますが、いくつか、読んでみたところ、どうも、古臭さを感じます。

文語で書かれた小説を、他にも、読んでみたいところです。