港の防波堤に腰掛けて
水平線に区切られた空と海の
ふたつの暗闇に散りばめられた
星の群れを眺めていると、
その煌びやかの一部を刳り貫くかのように
大きな影が揺れているのが見えた。
雲が流れて月が顔を出せば、
影の輪郭が逆光に描き出される。
思ったよりも近くで揺らめいていたそれは、
向かいに伸びる防波堤に接岸していたガレオン船だった。
私は立ち上がり、
コンクリートの足場を強く蹴って
船のマストよりも高く跳躍する。
重力をほんの少し無視するイメージで
ゆっくりと大きく跳んだ。
ガレオン船の甲板に着地すると、
そこには小さな船長がいて、舵を大切そうに握り締めていた。
近づくと、彼が青い海軍服を着た子供だというのがわかった。
事の経緯はわからないけれど、
この狭い港になんとか停泊できたものの
今度は出られなくて困っているらしい。
さらに、時折どこからかボウガンや大砲などの
攻撃を受けて困っているのだという。
そう嘆いている最中にも、どこからか飛んできた銀の杭が、
船長の手をブツッっと貫通した。
でもあまり痛そうではない。
出られないのは、接岸しているこの場所が浅すぎるからだという。
来たときはシケで水位が増していたのだろう。
私はガレオン船を港の外に出してあげるため、
船の中央の最も大きなマストに立ち、
そして畑の大根を引き抜くような感じで
ガレオン船ごと自分の身体を真上に浮上させた。
私の浮力は身体に接しているものにも及び、
それが大地に縫い付けられてない限りは質量を無視して持ち上げられる。
但し、空を飛んでいられる時間は、
力の及ぶ範囲が広いほど急激に弱まっていく。
私はガレオン船が壊れないようにゆっくりと、
そして出来るだけ急いで防波堤を飛び越えようとした。
だけど、電線に引っ掛かってしまった。
暗くてよく見えなかった以前に、港に電線があるあたりが意味不明だ。
電線は電柱に、電柱は防波堤に繋がっている。
私の「ものを浮かべる力」はあまり広く分散してしまうと
一瞬にして失われてしまう。(海水みたいに
柔らか過ぎるものなら途中で区切れるけれど)
私はスーパーマンではないので、
ガレオン船を腕力で支えていたわけじゃない。
するりと手から滑り落ちたマストと一緒に、
ガレオン線は防波堤に激突して大破した。
船長の姿が瓦礫と一緒に海へ沈んでいく。
ごめんね。