目が覚めた後、もう眠りたくない。
これ以上、この夢を見たくない。
前回この夢を見た時よりずっと長く、はっきり会話も覚えている。
情景も、相手の表情も。
何故か夢が私を手放してくれない。
睡魔に襲われながら、絶対に寝たくないと思っていました。
ふっと引き込まれそうになった時、
部屋の何処からか、犬のうなる声が聞こえました。
ハッと一瞬、現実に戻されました。
でも、その声はシフォンではない。
なに?
再び、ふっと夢に引き込まれそうになると・・・
外から犬の吠える声が聞こえました。
何で、こんな夜中に犬の声??
何で吠えてるの?犬が吠えられたら、シフォンが吠えちゃうよ。
そんなことを思ってたら、やっぱり睡魔に飲まれ・・・
気づくと、彼と向き合って話している場面でした。
彼に私がどういうことなのか聞いています。
「ごめん、言えなかった。
もう別居してずいぶん時間も経つ。こうして1人暮らしもしている。
時々お金を払っているけど、子供にも会っていない。
向こうが離婚してくれないんだ。俺を放してくれないんだよ。」
彼は頭を両手で抱えて、テーブルに肘をつき、うな垂れています。
私が、
「奥さんのこと、好きじゃないの?子供は?」
と聞くと
「好きじゃないよ、子供ももうずっと会っていなくて・・・」
と言う。そして、消え入りそうな小さい声でこう言いました。
「そもそも、成り行きだったんだ。
彼女は俺の高校の先生で、二人で出かけた時に雨に降られ、
びしょぬれで彼女の部屋に避難したんだ。
そこで・・・成り行きで・・・本当にその時だけのつもりだった。
でも子供が出来て・・・」
彼が10代の頃、一度の過ちで結婚して、
その後、彼もそれなりにやっていこうとしたけれど、
どうしても愛情が持てずムリだったと・・・。
「子供は4人もいるんでしょ?どうしてるの?」と私。
彼は、
「子供たちには責任がある。養育費は払っていく。
でも、俺がどんなことしても彼女は別れないっていうんだよ。」
そう言って、放心した顔で宙をボーっと見ていました。
私は、
「ムリだよ、私には背負えない。
急にこんなこと言われても、私はムリだよ。」
と言い、顔を背けました。
彼の奥さんの、薄っすら笑った顔を思い出し、身震いしました。
どこまでも付け回して来そうな、そんな執念を感じて。
彼をどうしようもない人間だと思うと同時に、
少しかわいそうな気もしました。
でも、もう、一緒に居るのはムリ・・・
そう思ったところで、急に目が覚めました。