Killing time -9ページ目

Killing time

よくわからないようなことをちょこちょこ呟くだけ。
小説を書いては消してをしているかも


自己満足の為に書いているので、ペタは出来るときにしかできません。

思い出すのはあの光景。




消したくとも一生消えることのない、忘れることのできない忌まわしき記憶。




そこにあるのは、恐怖だ、畏怖だ、絶望だ。




ぎりぎりと絞まる音、ひゅうひゅうと頼りない呼吸の音、もう二度と聞くことのできない音。




黒い影がニヤリと笑った。








■ ■





赤、赤、赤。

あぁ、どうしてなんだろう。彼は逃げていたはずで私が勝手に戻ってきて、彼はそのまま逃げるはずだったのに。どうして、どうして今彼が目の前にいるのだろう。

生暖かい赤い液体が顔にかかる。水が弾けるように赤が彼を、彼の周りを赤く染める。


「……ま、つおにい……さま? ぁ、いや……う、そ……いやぁあああ゛あ゛あ゛!!」


少女の叫びが私の体を引き裂いた。






ふと、目が覚めた。

とても嫌な夢を見た。あたりも、自分も真っ赤に染まってもう傷つけてはならないと思ったのにまたあの子を傷つけてしまう夢だった。

目覚めは最高に悪い。今日は真夏日に近くてとても暑いはずなのにガタガタと体が震えて、止まらない。カチカチと歯が当たる音が聞こえる。

これが、未来なんだろうか。だとしたら夢であってほしい。あれはきっと自分のせいだ。自分のせいで、松さんが死ぬかもしれないなんて。


「考えたくもないよ……っ!」


頭を抱えて涙を流す。誰にも気がつかれたくなくて手で声を必死に殺して恐怖に震える。

なんて恐ろしい。望んだはずの力、望んだはずの非日常。それがこんなにも恐ろしいものだなんて。彼らはいつから、いつからこんな世界に身を置いていたのだろうか。自分では、到底無理だ。このままの世界の中で生きていくなんて。今にも今にも倒れてしまいそうなのにそれが何回も、何年も続くのだとしたら。

自分はきっと――壊れてしまう。


「壊れないよ」


隣から声が聞こえた。


「ななちゃんは壊れないよ」


あぁ、この声は聞き慣れた。


「私が絶対に壊れさせないよ」


おねえちゃんのこえ。




■ ■





日暮尾道場。

達筆な字でそう書かれている看板が掲げられた門の前に刀神湊人は立っていた。

カジュアルな服を身につけた若者らしい男性だが、その顔には何かの花の蕾が三日月の上に咲いているような刺青をいれ、手には木刀袋を持っているためかさきほどからその道を通る通行人から怪しげな視線を向けられている。途中でその視線に耐えかね、手で刺青を隠そうとしてものの、腕が疲れるので結局やめてしまい視線を見て見ぬふりをすることにした湊人は門を開いた。

湊人はこの道場に通っている門弟である。

知り合いに教えてもらい、勧めてもらったのにいかないというわけにもいかず通い始めたのだが、この道場、様々な武道が学べるということで多数の門弟がいるが、その中でも湊人は師範に認められた数少ない人物だ。同じように認められている門弟は一つの分野に関して認めらているのだが、湊人の場合は強くなるため全ての武道を齧り、熱心に鍛錬したからなのか習い続けている分野すべてに関して認められるという快挙を成し遂げている。

だからなのか、例え休みの日であっても許可をもらえれば道場の中に入り鍛錬をすることを許可されている。しかし、今日は鍛錬しに来たわけではない。


「はぁ……遅いなぁ」


この家の双子の兄妹を待っているのだ。出かける約束をして、門の前で待っていてと言われて待っていたのだが遅すぎる。仕方なく中に足を踏み入れ、玄関から家の中に入る。

ドタドタと足音が聞こえてきたので急いでこっちに来ているんだろうと判断し足を止めとりあえず玄関で腰を下ろす。


「わりぃ、待たせた」


よく似た双子の登場にため息を吐いてからにっこりと笑ってすぐに思い浮かんだ言葉を吐く。


「はーい着替えてこーい」


「はぁ?」


何である直人の方が首を傾げたが。


「相変わらず直人くんはお人好しだなぁ。咸ちゃんがスカート持ち出したらどうするの?」


直人の後ろでにこにこと見慣れた笑顔を浮かべていた咸の顔が一瞬にして無表情になる。その隣で直人がニコニコと笑い始めた。


「ちぇー、バレちゃったかー。着替えなーい!」


といいつつも、直人の格好をしていた咸は走って自分の部屋に戻っていく。

咸が直人に、直人が咸に入れ替わっていたのに最初から湊人は気がついていたのだ。

どうして気がつかれたのか咸も直人も分かっていないが出かけることを優先したのか、問うことはしない。

小さくため息を吐いた直人が呆れたような笑顔を浮かべ咸の後ろ姿を見ていた目線を湊人に移す。


「多分、俺はあいつが望むなら従うよ」


咸そっくりの姿で直人がそう小さく呟き、咸の後を追いかけていった。

その短い言葉にどんな気持ちが、どんな思いが込められているのか知っている湊人にとっては直人の覚悟はひどく重い。咸が嘘つきに、死にたがりになってしまったのを自分のせいだと完全に思い込んでいるんだろう。


「わからなくは……ないけど」


それじゃあ、いつか疲れてしまうよ。

その言葉は出さずに飲み込んだ。





まだまだ続くよー