Killing time -10ページ目

Killing time

よくわからないようなことをちょこちょこ呟くだけ。
小説を書いては消してをしているかも


自己満足の為に書いているので、ペタは出来るときにしかできません。

よそのお子さんをお借りしています




スーパーの中に入ると涼しい風が体を撫でる。普段なら寒いぐらいに感じるそれだが、ずっと暑い中歩いていたせいか心地よく感じる。

先輩はといえば、何もいわずさっさとかごを取ると慣れたように歩き出した。自分のその後ろに続く。別に自分は特になんのようもないし、中に入る必要もないのだが、折角だから涼しい場所にいたい。しかし、なにもすることがないので、仕方なく後ろを歩く。

いちいち食材を見比べて、かごの中に入れていくが自分からしたら違いがまったくわからない。確か出会った時は先輩が中3の時で、その頃から今みたいに、主夫かと思わず言いたくなるようなことをしているから、その前から自炊をしていたんだろう。どうやら月島さんと一緒に住んでいたと言っていたので、先輩の主婦力が上がるのも納得だ。

主婦力のある不良とは珍しい? いや、そもそもこの人が不良とは言いづらい。確かに口は悪いし喧嘩早いし、夜遅くに出歩いている。でも、出歩いているのはバイトをしているからだし、不良とは言えないんじゃないだろうか。鶏肉を選び出した先輩をこっそり後ろから見ていると、突然振り返った。

そのことに驚いたが、なんとか顔には出なかった。

顔には出さずほっとしていると、ユキ先輩が口を開いた。


「綿棒なくなってたよな確か」


「え、あぁ、そうでしたね。取ってきましょうか?」


「いや、いい。一緒に行く」


ついでにテッシュも欲しいし、と言われ、なら両方私がとってきたほうが別のものを取りに行けるのに、という言葉は飲み込んで後ろをついていく。

私は数回しか来たことがないため、どこにどこがあるのかわからないが、どうやら先輩はよく理解しているらしい。迷うことなく早足でさっさと行ってしまうため、自分も少し急いで歩かないといけない。


「「あっ」」


角を曲がったところに、知り合いがいて思わず声を上げてしまった。それはあちらも同じだったらしい。あまり話したことはないが、同じ生徒会役員であるので思わず声を出してしまったのだろう。

声を出してしまってから、しまったと口を手で押さえた。しかし、もう声を出してしまったんだから遅い。

知り合いは、同じ生徒会の時任くんだ。その両隣には姉らしい女子と、幼馴染だという青年。何度か見たことがある程度だがいつも三人でいるような印象を受ける。

それにしても、まさかこんな時間にいるとは思っていなかった。お金に関してとても厳しいと思っていたせいか、てっきりセールを狙っていつも買い物に行くのだろうと思っていたせいか、少し驚いた。


「なんだ、知り合いか? このちっこ、ってぇな何すんだ刀麻てめぇ!」


「うるさい、ちょっと黙ってってください! むしろあっちいけ、しっしっ!」


言い終わってしまう前に横から腹を殴り、自分へに対する怒りを向けることで途中でいうことをやめさせることができた。ちっこいとは思っても言ってはいけないことだ、生徒会の活動に支障が出たらどうするこの野郎。

そんな気持ちを込めて、下から睨みつけていると仕返しとばかりにデコピンをされた。

力を抜いてくれていたようだが、痛いものは痛い。


「なにするんですか!」


「仕返しに決まってんだろ! この武器コン!」


「なっ、武器コンで何が悪いんですか! そんなこというならあげた鎖返せこの野郎!」


「いやですー、もうあれは俺のですー。テッシュと綿棒ちゃんと取ってこいよ」


ムカつくセリフを言ったあとに、ちゃっかり持ってくるものを頼んで驚きの速さでどこかへといってしまった。仕返しなんてしつつも、ちゃんと席を外してくれるなんて、やっぱり不良とは言い難い。

それにしても結構重たい武器を隠して持っているというのにどこからあんなスピードが出るのやら。


「すみません、うるさかったですよね」


はっとして慌てて謝る。

ユキ先輩と口喧嘩をすると周りが見えなくなり思わず大きな声を出してしまうし、普段の私を知っている人から随分と印象が違うと言われるような言葉使いまでしてしまう。

普段の私に戻らなければ。誰にでも冷たい。顔になにも出さない、けれど内心では面倒だと思う。そう、それが私だ。落ち着け。


「確か生徒会の子だよね?」


特に気にした様子もなく、にっこりとした笑顔で時任くんのお姉さんが訪ねてくる。時任くんは私よりは感情豊かだし、顔に割と出ているような気もするが、私は笑顔を見たことがない。話すことなんてほとんどないに等しいのだし当たり前なんだろうけど、もしかして時任くんも笑うとこんな感じなのだろうか。


「はい、書記の布居刀麻といいます。いつも時任くんにはお世話になっております」


仕事を手伝う、手伝ってもらうなんてことはしていないが、時任くんがずばっと言ってくれたお陰で、少し会長の八つ当たりが減った。お陰でちゃんと定時で帰れる日が増えた。店があるのでなるべく早めに帰りたいと、いつも急いで仕事を終わらせているがそこに後片付けまで付け加えられると、決して口にも顔にも出さないが面倒なのだ。あと、すごく重たい重力の中なんとか這いずって逃げるのは一苦労で、それが少しでも減ってくれると大変助かる。武器を作っている姿を見ているときは見入っているため、大して気にならなくなるそれも、普段だととてつもなく重く感じて体が潰れそうと思ってしまうほどに重い。時任くんでなければできなかったことだろうから、お礼を言ってもおかしくないレベルなので、大変感謝している。


「こちらこそ、うちの雨水がお世話になってまーす」


にこにこと人が良さそうな笑顔で笑いながら、幼馴染の人が時任くんの頭を抑え、無理矢理お辞儀させる。


「なんで旭がいうんだよ!」


すぐに手を払い、頭からどけさせはしたがそれ以上はなにも言わないし、なにもしなかったところを見ると相当仲がいいのだろうか。

私にも幼馴染はいるが、年が離れているせいかこちら側が一方的に構われ、守られているような気がするし、なにより年上であまりものが言えない。同世代となると、こんなに仲がよくなるものなんだろうか。

そんなことを考えながらぼーっと見ているとツナギのポケットに入れていたスマホが揺れた。取り出し、見てみるとこのスーパー内のどこかにいるはずの先輩からだ。なんだ、と思いつつ電話に出てみる。


『友達できるといいな』


「黙れ、このエセ不良!」


ブチっと切ってやった。

笑いをこらえたような声で人が気にしていることを言いやがって! 家に帰ったら父さんからもらった拳銃を乱れ打ちしてやる! 軽傷になる程度で! 

スマホを握り締め、どこかにいるであろう先輩に対するイラつきをぶつけるため睨みつけているとこほんと咳が聞こえてきてはっとして顔をあげた。


「す、すみません」


くっ、本当にあの人と喋ると普段の自分がどこかへ行ってしまう。

落ち着け私、普段の冷たい私に戻るんだ。でなければ人に情が湧いてしまう。

こっそり深呼吸をする。


「えっと……仲いいんですね」


「どこがですか!?」


思わずすぐに言い返してしまい、しかもそのあとに続いてまだ言いそうになってしまったので慌てて口を噤む。

戻ってこい、いつもの私!

なんとか落ち着くことはできたが、居心地が悪い。

きっと彼は、何かを思って話しかけてくれたんだろうに、思ったことをそのまま口から出してしまって申し訳なく思う。支障が出たらどうしよう、会長に合わせる顔がない……そうなったら武器が、見れなく……この世の終わりだ!


 い、いや……初対面の時に色々いってしまったから今更か。


「すみませんでした、えっと……失礼します、さようなら」


逃げるように綿棒とテッシュを取り、スタスタとこの場から逃げる。

うまく言い訳をできればよかったのだが、あのままその場にいたら言わなくていいことまで言ってしまいそうで、逃げるのが最適だろうと思った。

夏休みが終わる頃にはこのことを忘れていてくれると助かるのだが……忘れてくれることを願うしかない。




■ ■




今頃慣れないことをしているせいで顔には出さないがあたふたしているであろうと思うと自然と笑えてくる。いっそのこと冷静ないつもの刀麻は自分で作り出した外面だというのを教えてしまうのもいいが、そうするとあいつのプライドってもんが壊れそうでできない。教えず、しかし違う印象を与える方法をバカなりに考えてみたが、思いついたのは電話であいつが気にしていることを言ってやる、ということだけだった。もう少しいいアイディアが浮かばないものかと、ウロウロとしていると見覚えのある姿を見かけた。


「詩織か?」


緑色の髪を緩く縛った姿は見間違えることなく、詩織だったが、念の為に声をかけてみる。


「え、雪君?」


思った通り、振り返ったのは詩織だった。手に調味料を抱えているあたりおつかいでも頼まれたんだろう。

よぉ、と挨拶をして隣に並び醤油をかごの中に入れる。


「一人か?」


どれがいいのか、悩んでいるのか商品をじっと見つめていた詩織に挨拶をするぐらいの軽さで話しかける。


「うん。おつかい」


話すときはしっかり人の顔を見るあたり、育ちのよさを感じる。どっかの赤髪とは違う。

スーパーに来る前に見た時間からして、そろそろ暗くなってくる時間だ。いくら異能があるとは言え、女一人で出歩くのは少し危ない。どっかの赤髪なら昔、俺と出会ったときにしたように拳銃をその場で作り上げ、「本物かどうか、試してみますか?」とか言って普通に帰るだろうから心配はしなくていいが。


「雪君は?」


「ん、あー、連れが一様一人」


と、いったところで後ろから走っているであろう足音が聞こえてきた。

振り返ると予想通りというか、刀麻がそこにいた。


「う、うわ~……ナンパ?」


「してねぇよ! 元々の知り合いだ!」


「えっ、ユキ先輩に知り合いなんていたんですか!? 先輩の勘違いでなく?」


「てめぇなぁ!」


「うわこわーい、はい!」


はい!と声を出したと同時に手に持っていたティッシュと綿棒を投げつけてきた。慌てて片手だけでなんとか掴み、落としてしまう前にかごの中に乱暴に入れる。二つ入りの綿棒と、ティッシュの箱が何個か入れられているものをうまく片手だけで掴めるものがいるなら会ってみたい。掴むというより、俺の場合は手に当てる、だったし。


「先に帰っています、あ、先輩は別に帰って来なくてもいいですよ」


普段だったら鳥肌ものの笑顔を浮かべ、さっさとスーパーの出入り口に歩いていく刀麻の背中を横目に決心する。


「決めた、今決めた。明日トマトずくしにしてやる」


「え、え、えっと良いの?」


「ん? あぁ、問題ねぇよ」


一人で行かせていいの?という意味から来るであろう言葉に、すぐに言葉を返す。さっきの拳銃ってのもそうだが、使い手の気持ちが知りたいとか言って戦術コースを選び、まだ一年とはいえ隙を作って逃げるぐらいのことは可能だろう。口もよく回るから、精神的に落ち込ませる、なんてこともできるあいつに心配という言葉は一向に浮かんでこない。

それに。


「そちらの方を送ってあげてください、お友達なのでしょう」


「え?」


「とか、あいつなら絶対言う、いや言わないところが想像できねぇな」


「そう、なんだ。信頼してるんだね」


「恩返しのつもりで世話見てたらあいつがいうこと大抵わかるようになっちまっただけだ。買うのそれだけか?」


「うん」


「んじゃ、帰るか。送ってく」


「あ、えっと、あり、がとう」


「気にすんな。俺がそうしたいだけだー」





■ ■





友人をしっかり家まで送り届け、急いで雪が刀麻の家に帰ると、刀麻は武器とにらめっこしているところだった。雪が帰ってきていることにも気がつかず、ひたすらに武器と向き合い、険しい表情をしながら作業している。これは声をかけても気がつかないやつだ、と判断した雪は刀麻の横を通り過ぎ、まっすぐ冷蔵庫に向かった。終わるまで待ってやった方がいいだろう。幸いと水泳部が忙しくなるからといってバイトはしばらく休みをもらっている。遅くまでいることになったらいつも通り泊まっていけばいい。着替えは数着なら置いてある筈だ。と、肉に下味を付け、染み込むまでの時間は確保できたと考えながら、とりあえず部屋の掃除を始めることにした。

武器を作り始めると周りが見えなくなる刀麻は周りをよく汚す。

刀麻に片付けさせればいいのだが、汚れを見るとつい掃除してしまう癖がついてしまったために、ほぼ無意識的に雑巾とバケツを手にしていた。雪の従兄であるアズミがそれを見れば「立派な主夫になってお母さん嬉しいわーぶふっ」とおふざけ混じりに言われそうだが、そんなことをいうやつは今はいないのである。

刀麻が汚し、雪が片付け、また刀麻が汚す。

作業が終盤に差し掛かってきたのか、段々汚す量が少なくなってきた。

そろそろ終わりか、と伸びをすると丁度戸が開く音が聞こえた。もう店はしまっている時間帯のため、鍵はかけておいた。そのはずなのに開けたということは相手は鍵を持っている人物だけだ。刀麻の両親は外国を飛び回り、彼此五年以上も会っていないらしいし、夏は忙しいので連絡もつかないと刀麻がこぼしていたので、可能性はほぼ0に近い。あとは、刀麻と四歳年が離れた従兄である洸だけだ。


「やっほー! って刀麻はまーた武器作りっすか~聞こえてないっすねこれ」


「いや、見えてもないですね、俺も見えないっす」


そこに、洸の、いや人の姿はない。ただ不気味なことに青年であろう者の声だけが聞こえる。


「うぉっと! いやいやすっかり忘れてたっす」


その声が聞こえると、刀麻の目の前に突如人が現れた。

赤いつなぎを身にまとった青年。銀色の髪は縛られそこそこに長い。明るい笑みを浮かべているが体はがっちりしている方で、高身長の部類に入る雪よりも10cmほど高いが性格だけでいうならばこちらの青年の方が年下に見える。


「それにしても驚かなくなったっすね。最初の頃は俺っちが現れるたびにこっちが驚くぐらい驚いてたのに」


「それなりに付き合い長いんで」


「それもそうっすね。おーい、とうまー気がついてるっすかー?」


「ないだろ絶対」


「ですよねー」


「気づいてますよ」


「「うぉ!? う、動いた!」」


「ハモらないでもらっていいですかキモッ」


「雪いえーい!」


「洸さんいえーい」


「うわぁ……」


ふざけてハイタッチをした男二人に完全に刀麻がドン引きをしたことでさすがにこれ以上ふざけるわけには、とでも思ったのか洸がコホンとわざとらしい咳をした。


「ほいこれ。さっき、そこで刀麻に渡してほしいって頼まれたっす」


洸が取り出したのは黒い封筒だった。中に手紙でも入っているのか少し膨らんでいる。首をかしげつつも、刀麻は封筒を開ける。刀麻の隣に座っている雪だが、それは刀麻に届けられたものであり、覗くわけにもいかず、とりあえず洸に話しかける。


「どんな人に渡されたんすか」


「あー、綺麗なお姉さん、だったすね。でも、その人も黒い服着たおじさんに渡されたって言ってたっす」


ほー、と適当に雪が返事をすると、ダンッと大きな音がした。音の発生源に目線を向ければ刀麻がテーブルに手を乗せ、顔を伏せていた。テーブルに封筒とその中に入っていた紙を叩きつけたのだ。何事だと首をかしげる二人をおいて、刀麻がいきなり飛び出した。いつもなら静かに開けるにも関わらず戸を乱暴に開けそのままどこかへと走り出す。洸が反射的に飛び出し追っていったのに対し、雪は封筒と紙を手にとった。封筒の方にはもちろん差出人などは書いていない。

紙の方にはただ一行、言葉が書いてあった。


 祖父母と同じ場所へ行きたいか?


意味がわからない。

当然だ。雪は刀麻と知り合い以上の関係であるとしても、刀麻の好き嫌い、性格、口調がわかっていたとしても、過去までは知らないのだから。雪の過去を刀麻がしらないように、刀麻の過去も雪は全くと言っていいほどに知らないのだから。