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Killing time

よくわからないようなことをちょこちょこ呟くだけ。
小説を書いては消してをしているかも


自己満足の為に書いているので、ペタは出来るときにしかできません。

おい起きろと遠いところから聞こえてきた声で意識が浮上する。泥沼に沈んでいくかのように深い眠りについていたのか目覚めはいい方だった。


「遅いぞメス豚!」


これがなければ。

私へと飛んできた罵倒と共にお腹あたりに何かが突き刺さる激痛が走った。ゴブリッと横になったままだった私の口から血が勝手に飛び出る。ズルリと突き刺さった何かは抜けたが痛みのせいで動けず、ただ苦しみに喘ぐ私を横にいきなり人を殺してきた男は親の仇でも見るような目でこちらをチラリと見ると出て行った。ひどい激痛なのに、思考がまとまっているのは慣れてきてしまったからなんだろうか。だとしたら厄介な慣れだ。痛みに慣れるなんて前の人生だけで十分だったのに、どうしてあの時以上の痛みを味あわないといけないのか。それに慣れないといけないのか。私にはさっぱりだ。

服にも、もちろん布団にも穴が空いたというのに私のお腹はすでに元通りに戻っている。服やシーツには血がべっとりとついていて、もちろん肌にもべっとりだ。それなのに傷はふさがっている。どうせ元通りになるなら血まで体の中に戻ってくれればいいのに。一度致死量に至るほどに血を出したことがあるが、それでもなぜだか私は死なない。どうせ死なないんだから、周りが血だらけにならないようにしてほしかったものだ。

貧血でフラフラする頭を抑えながら血だらけのベッドから抜け出し、同じく血だらけのパジャマのまま風呂場に入る。私が監禁されている部屋には色々な設備が設置されていて、風呂場は二人で入っても余裕があるぐらいに広いし、トイレも無駄に広いし高性能、キッチンまであるのだから呆れてため息が出る。

服を着たままシャワーを浴びて、その場で脱いで体を洗ってから、血を洗い流して絞ってかごの中に放り込む。後で私の世話を見てくれる女性が回収してくれる。私が殺されて血だらけになるのはいつものことだからその人も慣れてくれているようで最近では処理の仕方が手早い。

適当にタオルドライしてから着替えを取るためにタオルを巻いたままの状態で風呂場から抜け出し元の場所に戻ったと同時に近くにあった置物をいつの間にか綺麗に片付けられたベッドの上に座っていた男に向かって思いっきり投げつけた。ガラスで出来ていたその置物は当てるつもりで投げたのに避けられてしまったせいで壁に激突し、粉々に砕け散った。


「あなたが避けたせいでガラスが割れたじゃない。どうしてくれるのよ変態」


ペタペタと足音を立てながらタンスから下着と大量に予備が用意されているパジャマを取り出す。


「俺のせいだっていいてェのか? 色気のねェ下着だな、赤にしろ」

 

「死ねロリコン」


いつの間に買ってきたのか明らかにこの男の趣味であろう真っ赤な下着を取り出して男に投げつけ、自分は風呂場に戻る。

鍵をしっかりかけてから胸の形なんて気にせず素早く付けて、パジャマを着たタイミングでドアが蹴り破られた。もちろん蹴破ったのはロリコン変態くそじじぃ。初めは着替えている途中で蹴破られ、素肌を見られたり、モロに見られたり、襲われかけて全力で急所を蹴りあげたりしていたが、早着替えは特技だと胸を張って言えるほどのテクニックを身につけた。時間通りに生きていれば早着替えなんて普段で必要なものではないと思うけれど、この男の前に関しては絶対必要だ。見るだけではなく、触ろうとしてくるんだから隠すものは隠してしまうのが一番。


「つっまんねェガキ」


「そう思うなら解放しなさいよ」


男の横をすり抜け、新しいものに変わっているベッドの上に倒れこむ。貧血でずっとフラフラしていたのに全力で置物を投げたせいで余計疲れた。ご飯を食べて少しでも血を増やすべきなんだろうけどどうせなくなると思うと食べる気が出てこない。

このまま眠ってしまおうか、と目を閉じたところでギシッとベッドが軋む音がした。

その音の原因はわかっているので目を開ける必要はない。というか見たくないので無視する。


「無視とはいい度胸だな、黒葉」


「眠い、黙って」


寝足りないわけではなくて、寝起きで殺されたせいで疲れたんだろう。とにかく眠たい。死んでほしいほど嫌いな男とは言え人の体温に触れているせいだろうか。


「おいおい、起きたばっかりじゃないか。俺と遊ぼうぜ」


「あなたの、遊び……は、遊びじゃ……な、い」


だめだ、落ちる。





■ ■




温い。感じたことのない温さなのに、ひどく心地いい。その温さに顔をすり寄せると自然と心が落ち着いてくる。

なんだろう、これはいったい何なんだろう。それと、なんだか頭の上から呼吸が聞こえる。なんだろう。重い瞼を開けるとドアップで見えたのは赤い布だった。見覚えのあるそれに身が固まる。


「起きたか?」


いつもはセットして私にはそれがなんの魅力なのかさっぱりわからない髪型をしているはずなのに横になっているせいなのか潰れていつもと雰囲気が違う男に違和感を覚えつつ、見てしまわないようにと気をつけながら、ジリジリと後ろに下がる。けれど結局壁にぶつかって、逃げ場はない。真ん中に置かれていたベッドを落ち着かないという理由で壁側に寄せてしまったのか悪かった、あのままにしておけば落ちるなりなんなり逃げられたのに。

ニヤリと笑った男の骨ばった無駄に長い足が足と足の間に滑り込んでくる。ビクリと震える私に気がついているくせに気がついていない振りをして私の髪を掴むとそのままぐいっと後ろに引っ張った。わざわざ腕を回してまで引っ張るなんてよっぽどの悪い趣味を持っているようだ。

幾度となく髪を引っ張られた――主に私を朝一で殺したあいつにされているけれど――せいか引っ張られる痛みにも慣れてきた。この慣れ具合には嫌になる。

スルリとパジャマがめくれて出てきている素足を足で撫でられ、ピクリと反応すれば男が笑う。不愉快極まりない。けれど、ここで抵抗すればやつに思うツボだ。無理矢理を好むのかわからないけれど反応すればするほどこれはちょっかいを出してくる。基本無視すればいいのだ。そうすればおもちゃに飽きた子供のように別のおもちゃに手を出すはずなのだから。

抵抗しなければいいのだ。なにをされても無反応で無表情で無感情でそういう人間になればいい。そうすればさっさと飽きるはず。

早く、飽きればいい。おもちゃを捨てるようにポイッと私なんて捨ててくれていい。毎日殺され、毎日セクハラされる生活を送るぐらいなら一人の生活でいい。元の生活でいい。

だから早く。


「これだからお前は好きだ」


飽きればいい(解放してほしい)