Killing time -36ページ目

Killing time

よくわからないようなことをちょこちょこ呟くだけ。
小説を書いては消してをしているかも


自己満足の為に書いているので、ペタは出来るときにしかできません。



地面に転がる男の手を踏みつけたまま腹に蹴りを入れる。蹴るまでの間に手を踏んでいる足だけで体を支えた為か男が痛みで叫ぶ。やめろ、知らないと男が痛みに引きつっている声と混ぜて叫んだが、足で痛みを与え続けている青年の表情はまったく変わらず、笑顔のまま背負った鞄から弓と矢を取り出す。


「黒髪で青い瞳の女の人知ってるよね、早く教えて」


引き攣りながらも何度も叫んだ言葉を言うが男は首を傾げる。


「どうして、そんな嘘いうのかな。俺知ってるんだよ、あなたが黒髪、青い瞳、マスクをしている人と歩いてたって。違うっていうなら昨日一緒にいた人の名前を言って?」


ニコニコと笑いながら青年はもう一度、腹を蹴った。ゴホゴホと咳き込む男を無視して、青年は弓を引こうとする。


「ななん、あ名前なんて覚えてねーよ!」


「じゃあ狂気って書いてくるきって読む名前だった?」


弓だけを目に映し怯えながらも男は首を振った。青年が言っている女とは確かに一緒にいたが、飲み会で偶々帰りが一緒になっただけの知り合ったばかりの女だ。名前を聞いた記憶はあるが、しっかりと覚えているわけでもない。が、青年の口から発せられた奇妙な名前ではなかったことは確かだ。

青年は一瞬、顔から表情を消したがすぐに笑顔に戻り、矢を下ろした。


「無駄だったわけか……」


ぼそりとつぶやくと青年は顔を少し歪め、自分が傷つけた男をそのままにして歩き出した。弓はそのまま手に持っているが先ほどまで人を甚振っていたとはとても思えない。

やっと解放されたと涙などでぐしゃぐしゃになった顔を乱暴に服で拭き取り、今すぐ家に帰って警察に連絡するために痛みを訴える手で支えながらもなんとか立ち上がり、震える足で一歩踏み出した。

まだ完全に恐怖がなくなったわけではなく、むしろ濃く残っている。そのせいか、体は震え、口から自然と震えた声が出てしまう。早くこんな記憶は忘れてしまおう、夢にしてしまおうと足を急いで動かす。


「さようなら」


しかし、その言葉が男が聞いた最後の言葉になった。




■ ■




「なんで、私まで買い物しなきゃいけないんですか」


「お前が食う飯だからに決まってんだろ」


むすっとした顔で刀麻は歩いていた。隣には、まだ刀麻が中学生だった時に怪我していたのを気まぐれで手当てしたことがきっかけで家に来るようになった先輩である雪が歩いている。

手当してくれたお詫びと、その日の晩御飯をご馳走になった時に口を滑らせて、懐かしいと言ってしまったことで毎日お弁当で食事を済ませていたことがバレてしまい、なぜだかそこから毎日ご飯を作ってくれるようになり、今では学校に行くのも、帰るのも一緒になってしまった。

ただ手当てしただけなのに、どうしてここまで世話を焼くのか、どれだけ人がいいんだと最初は引きまくっていた刀麻だが、今では慣れてしまい家にいるのが普通と思ってしまうまでに一緒に時間を過ごしている。

今だって、今日食べるための素材を買いに一緒にスーパーに行っているところだ。

普段は無表情が多く、敬語で冷たい印象を持ってしまう刀麻だが、雪の前では敬語は崩れるし、子供のように駄々も捏ねるし、出てくる表情も普段より多い。心を開いているという証拠だ。


「……先に一人で届けに行ってきてもいいですか」


「は? なんでだよ」


顔を歪めてから声を押し殺して溜息を吐く。

素直にいえば、ただ一緒に同級生の家に行くのがいやだからだ。

昨日、布屋としてのお客さんが異能に目覚めたばかりというクラスは違うが刀麻の同級生を連れてきた。その時は2徹して依頼されていたものを完成させて寝てもいなかったせいで頭が回らずすっかり忘れていたのだが、今日から夏休みなのだ。委員会か部活でもない限り、生徒はいない。

すっかりとそのことを忘れていて、異能について詳しく書いた紙を学校で渡すなどと行ってしまったのだ。頷いていた相手も相当混乱していたようで刀麻と同じように夏休みだということを忘れていたのだろう。

渡さないわけにもいかず、仕方なく担任に住所を教えてもらい、家に届けに行くことになったのだ。

丁度家に来ていた雪にそのことを伝え、持っていこうとした際についでだからとスーパーに行くことになったのだが、正直、一緒にはスーパーに行きたくない。

元々、刀麻は祖父母と一緒に暮らしていたのだが、二人共刀麻に激甘で食べれないものがあると仕方ないかと残しても怒られなかった。二人がこの世を去ってからはずっと買ってきた弁当を食べていたので嫌いなものが入っているものは買ってこなかったので未だに食べれない食べ物が多い。

それを素直に食べれないというと、雪は無理矢理口に突っ込んでくるのだ。嫌いな食べ物を見て顔を歪めると叩いてくるのだ。割と本気で。

嫌いな食べ物を見ると顔を歪めてしまう。それで叩かれるのかと思うと嫌で仕方がない。

そんなことを考えている間にスーパーからは離れ、目的地には近づいていく。

顔を歪めたまま歩いていると道の真ん中に立っている二人組を見つけた。女性としては少し身長の高い刀麻よりも少し高くヒールでさらに高くなっている女性と、楽しそうに笑っている少年が何かを話している。一方的に少年が話しかけているようにも思えるが、女性が時折頷いているのを見るとちゃんと話しているようだ。

ちらりと、雪を下から見上げる。

女性と少年の髪が、雪の髪色とそっくりで思わず見てしまった。

髪の色は似ているが、雪はまったく気にせず歩いているところを見ると知り合いではないらしい。となるとただの髪色が似ている人というだけだ。気にすることもない。

そのまま、歩き横を通り過ぎる。


「へー、教えてないんだ。あの人らしくないね、誰にでも冷たいのに」


横を歩いているところで少年が言った言葉が偶々聞こえてきた。誰の話をしているかは知らないが、なんとなく気になり横目で少し見てみると、少年は笑っていた。口元も、目もしっかりと笑っている。しかし、普通じゃない。その目は完全に獲物を狙っている目。その目には刀麻ではなく、刀麻の横を歩く雪を捉えている。

ぞっとした。

普通じゃない。明らかにこの少年は刀麻よりも年下だというのに、経験値は少年の方が高い。そう思ってしまうほどに、この少年は普通じゃない。

恐怖を感じることはないが、その場にいるのが居た堪れなくなる。無意識に早足で歩き出した刀麻を見て、くすりと少年が笑う。そのことには気がついていない刀麻だが、嫌な予感がして雪の手を強く掴んで、走り出した。

角を曲がったところで、手を離し大きく深呼吸をして下から雪を睨み上げる。睨まれている雪といえばキョトンとした顔で、見下げている。


「あの人達と知り合いですか?」


「いきなりなんだよ」


雪から言わせれば何言ってんだこいつといったところだが、刀麻は雪のことなど考えていない。


「いいから答えてください」


少しイラつきながら言うと、雪は溜息を吐いて首を横に振った。


「知ってたら声かける」


嘘をついているわけでもないことは顔を見ればわかる。だったら、あの少年はなぜ雪をあんな目で見ていたのか。初めて会ってあんな目をするなんてありえない。


 向こう側は知ってる、ということですか。


妙な相手に狙いを付けられたものだなと、雪をチラリと見上げる。


 私には一切関係のない話、ですね。


雪には家の掃除やら、食事やら、仕事の手伝いやらとしてもらっているが刀麻が望んだわけではなく、勝手に雪がやりだしたことだ。問題ない。たとえこの人が死んだとしても私には問題ない。少しご飯の味が落ちるだけだ。

自分にそう言い聞かせ、いつもの調子を取り戻そうとするが、心のどこかが引っかかる。それを無理矢理無視して、足を動かす。


「ならいいです。行きますよ」


後ろからなんなんだよという溜息が聞こえてきたが、それも無視して歩く。

問題がないはずがないが、そんなことを思ってしまわないように小さな声で拳銃の名前を呪文のように刀麻は唱えだした。それを後ろから見た雪がもう一度溜息を吐いたが、拳銃の名前を言うのに夢中になってしまっているので聞こえていない。

なぜ、あんなことを聞いたのかと気になることもあるが聞いたところで答えが帰ってこないことは今までの経験でわかっているので、雪は文句を飲み込み代わりにもう一度溜息を吐き出す。
少年の言葉はしっかりと雪にも聞こえていた。少年の目線にも気がついていた。けれど、気にせず歩いたのは少年の顔に覚えが全くなかったからだ。狙われる理由もわからないし、少年が言ったあの人が誰なのかもまったくわからない。

警戒心がまったくない行動のように思えるが、雪は角を曲がるまでずっと少年に意識を向けてしっかりと警戒していたし、攻撃されてもすぐに反撃ができるようにと腕に巻きついている鎖を少しだけ出してもおいた。警戒心がないフリをして歩いていただけで、刀麻は気がついていないが雪は最初二人を見つけたときから警戒していた。

ただの一般人であったなら、警戒心など抱かないが自分とそっくりな灰色の髪をしている人間がいたならば警戒するようにと普段からしているので意識もせずに、自然に警戒していたのだ。どうして警戒しなければいけないのかという疑問はあるが、それは雪からしたら普通で、その疑問すら抱いていない。

どうしてと聞けば、不思議そうな顔でそれが普通だからとすぐに答えられるほどに雪にとってはそれが普通であり、日常。

子供の頃に親が死に、すぐに母親の兄だという人の家族に引き取られたが、中学生になる前にその人が死んでしまった。そのあとすぐに従兄が保証人になってくれたのだがその従兄の家に移った日から毎日ずっと自分と同じ髪の色のやつを見つけたらとりあえず警戒しろと言われて育ってきた。

雪が中学三年生になった頃には職場に寝泊まるようになり家に帰ってくることはまず無くなり、言われることもなくなったが、その時にはすでに雪の中では同じ色の髪の人物を見つけたらとりあえず警戒することが普通になっていた。

最初はなんでそんなことをとも思っていたが、今ではすっかり癖になってしまった。癖になってしまったらなかなか直せない。直そうとしたこともあったが、警戒しておくことが悪いことでもないしなかなか直せずもう諦めてしまった。

刀麻のあとを追って歩きながら、雪は髪をくしゃっと掴んでそのままわしゃわしゃと頭を掻く。


 俺が死んでも関係ないとか思ってんだろうな。


それについては問題ない。


 別にいいけどよ、それよりこいつ、だよな……。


刀麻が心配で仕方がない。関係ないなどといいつつ、雪が死んだあとの刀麻が心配だ。お茶は入れられるが、料理は作れないし、気がつかなければ支障が出ない限り食べることも寝ることも忘れて作業を続けるような刀麻だ。心配しないはずがない。

死んでやるつもりもないが、万が一を考えて料理でも教えておくかと考えをまとめると、刀麻の足音が止まった。2歩ほど遅れて雪も足を止め、刀麻が向いている方向と同じ方を向くと、家のドアが開けっ放しで玄関でエプロンを着たままの女性がオロオロとしていた。


「どうしましたか?」


普段は滅多にしないにっこり笑顔で刀麻が訪ねた。最初その笑顔を見た時は真顔で引いた雪だったがもう慣れっ子だ。見なくてもわかるいつもとはまったく違う顔にげっそりとしつつ、雪はあたりを見渡した。


「なんか、探し物っすか?」


何か落ちているようには見えないが、尋ねると女性は先ほどの焦った顔とは違いおっとりとした笑みを見せた。


「娘がね、追いかけられてるの」


はぁ?と刀麻と雪の口から同時にそんな声が出ていた。




■ ■





最後の一本だったうどんを吸い上げ、隣にどけてから隣に置いてあったカレーを今度は目の前に置く。カレーを口いっぱいに頬張りながらもスプーンを持った手と逆の手に持った書類に目を向ける。

書類に書かれているのは先ほど自分で解剖したばかりの男の死体の状態を書いたものだ。誤字脱字がないかを確認しているのだが、死体がどんな状態だったかも書いてある。読んでいるだけで気分が悪くなるようなものなのだが、カレーを頬張り続ける男はまったく気にせずカレーを平らげる。

確認し終わった書類を机の端において、次の料理に手をかける。次は焼かれた肉が大量にもられている大盛りの丼。すでにうどん、カレー、その前に2品も食べているというのに男はまだまだ足りないといった様子で肉に齧り付く。


「うげぇ、裕士さんどんだけ食べてんのさー」


後ろからかけられた声に丼を持ったまま振り返ると、真っ白な何も模様がない仮面で顔の上半分を覆い、男と同じ白衣を来ているが、仮面をしている方は前を閉じている。

二人は、同じ研究課で働いている同僚になるが、見た目で言えば丼をもしゃもしゃと食べている男の方が年上だろう。


「仕方ないだろ、仕事終わりなんだ」


仕方ないでは済まされないほどの量を平らげているが、裕士と呼ばれた男からしたらそれが普通なのだ。腹が減っては動くことすらしたくなくなる。動けなくては困るし、何より腹が減って気がおかしくなりそうになるのだから周りからなんと言われようと満足するまで食べておいた方がいいだろう。

大盛りの丼を食べている様子に顔を歪める仮面の男は裕二の前の席に座る。


「黒木さんが私をお呼びするだなんて、一体なんの御用でしょう」


ニッコリと笑った――目は隠れているが――男の口調が突然女性的なものに変わる。初めてそれを見たらぞわっと気味が悪いと思うような変わりようだが、裕士は気にせず丼を食べ続ける。

一度箸をおき、端に置いた書類を渡すと再度丼を平らげ始めた。


「あんたこんなの見ながら食ってたのかよ! 神経どうかしてんじゃねーの!?」


また男の口調が変わる。口を開けば口調が変わっているのだが、裕士はまったく気にしていない。


「慣れだ慣れ」


大量にもられていた丼を食べ終え、水を飲み干すと小さく咳をして皿をお盆の上に重ねていく。正直まだ少しだけ食べ足りないのだが、どうしても食べたいというわけでもないのでぐっとこらえ、お盆を重ねていく。

仮面の男は溜息を吐くと書類を顔を歪めつつも読み始めた。

裕士が皿を返しに行き、持ってくると仮面の男は書類を持ったまま机にベタッと倒れ込んでいた。元々座っていた席に腰を落とすと仮面の男がクスリと笑った。


「ひっどいね。これ、拷問ってわけでもないし暴行ってほどでもないし、お遺体さんはどっちなの?」


口元を上げているのを見ると仮面の下は笑顔になっているのだろう。その表情に裕二は少し顔を歪めたが、すぐに元の顔に戻り、持ってきた水を一口飲む。


「異能者だ」


「あははっやっぱりデータあったんだー。そっかー異能者かー。向こうさんも異能者なのかなー」


ベタッと倒れたまま顔をあげて下から裕士を見上げる男の仕草はまるで子供だ。


「さぁな。傷跡からして異能じゃない、と思うが物質精製、その他の異能者の可能性はある程度ある。ないとも言えるが」


「わー全然だめじゃーん」


「異能がなんだかわかるわけないだろう。火傷とか毒死とかしてたんなら絞れないこともないが、ほとんど今回のケースが多い。わかるやつがいつんだったらぜひ会いたいもんだ」


煙草に火をつけ、紫煙を吸い込んで吐き出す。


「ハッ。で、俺に何をしろって言うんだ?」


にやりと男が笑う。この口調の方が裕士にすればしっくりくるのだが、男の普段の口調は幼い口調。口調によって一人称も、二人称も変わるし性格も口調に合うものに変わる。それには3パターンあるが、人格が変わっているわけではなく多重人格というわけでもない。

演技かと思うだろうが、演技でもない。ただ、男は普通に口調が代わり、性格も代わり、また変わる。幼い口調と、女性的な口調と、人を見下したような口調の三つ、その間でコロコロと変わるのだ。口調によって印象も違くなる。しかし、別の人格としか思いようのないものが3つもあるというのに同じ考えの元で行動している。


「俺をどうやって役立てる?」


ただ、役に立ちたい。

それが仮面を付けた男の目的であり、生きがい。しかし、決して彼は正義ではない。役に立てるのならばなんでもするのが彼だ。誰かを殺して欲しいと言えば笑顔で引き受け、誰かの心がほしいと願えば笑顔で異能を使い記憶を改竄する。やっていることは悪だと言えるが、助けてと言えば喜んで助けるので完全に悪だとも言えない。どちらにも関わっているくせに、どちらとも言えない。それがこの男だ。

ニヤニヤと笑って下から見えげてくる男を見下ろし、裕士は煙草を灰皿に押し付け火をもみ消した。


「知り合いにサイコメトリーがいるって言ってたよな。そいつはどんなやつだ」


「それは役立つことに必要なことかしら」


無表情で男を見下ろし、新しく煙草に火をつけると裕士は紫煙を吐き出してから首を縦に振った。すると男はにっこりと笑い、体を起こす。


「一言で言うのなら人間不信ですわ。長いですが簡単に言うと、おしゃれに全く興味のない二次元大好き人間大ッ嫌いな引きこもりというところでしょうか」


「それは……大変だな」


「うふふ、そうでもないです。意外と可愛らしいところもあって可愛い妹のような感じでとても楽しいの」


「そうかい。なら、その子共々俺の役に立ってくれ」


隣の椅子の上に置いておいた中にこっそり借りてきた死体の男に止めを刺したであろう凶器である弓が入っている袋を入れた紙袋を男に向かって投げつける。

慌てることもなく手を軽くあげてキャッチしたところを見ると、まだ女口調のままでいるようだ。

椅子から立ち上がり、紫煙を吐き出すと裕士は白衣のポケットから棒付きの飴を取り出した。


「いいか、俺の役に立つことを優先しろ。ほかのやつに聞かれても情報を教えるな、何も言うな」


飴を投げつけると袋同様、慌てる様子もなく手に掴み、握った飴を少しの間不思議そうに見てから、クスリと男が笑う。


「喜んで」


白衣を掴んでドレスをきた女性がするあいさつの真似をした男に裕二は苦笑を漏らす。確かに口調は女性風だが男がそんなことをやっても、苦笑いするしかない。


「頼んだぞ」


自分と同じ位置にある頭に手を乗せ、ぐしゃぐしゃと乱暴に男の頭を撫でると、裕士は仕事場からそのまま履いてきてしまったスリッパを鳴らしながらもひらひらと手を振って食堂から出て行った。

残された男は撫でられたせいでぐしゃぐしゃになってしまった髪を手で梳かす。元々、髪の長さが所々のせいかボサボサに見えているので整える必要もないのだが、今は人格が女のように変化しているせいでつい直してしまっていた。無意識にやっていることなので男はそのことに全く気がついていないようだが。

頭の上に手を置いたまま、男は小さくつぶやく。


「子供扱い、されてしまいましたわね」


一度目を瞑り、しばらくそのままでいると、手を頭から退け軽く伸びをする。


「よーし! 運び屋くんにたーのも!」


元の幼い口調に戻り、楽しそうにスキップしながら食堂から出て行った。