Killing time -33ページ目

Killing time

よくわからないようなことをちょこちょこ呟くだけ。
小説を書いては消してをしているかも


自己満足の為に書いているので、ペタは出来るときにしかできません。

月島をアズミと呼べない問題が(´・ω・`)

どうでもいいか。

今回はいつも以上に文の完成度が甘いです。







唐突に夢から覚めた。

おはよう、俺の名前はルイ。本名は訳あって話せない。なんで小説の一行目のような話し方をしてるかというと朝のふざけたテンションだ。察しろ。性別? んなもんどっちでもいーんだよ黙ってらっしゃい。

瞬きをするとぼやぼやとしていた視界が少しずつ見えてくる。視界に最初に入ったのは部屋の壁。まだ眠たいけど顔を枕に擦り付け、唸り声を上げながらも体を起こす。体が汗でベトベトする。それに溜息を吐いて寝る前に開けた窓を閉めて、クローゼットの中から着替えのジャージを手に取り部屋から出る。部屋と言ってもあるのはパソコンを置いた炬燵にもなれる低い机とそれに合わせて買った背もたれが後ろに倒れる柔らかい椅子とふかふかなベッド。あとは全部本棚。特注で作ってもらった引き出しのように取り出せてそれなのにたくさん本をしまえる本棚だ。結構高かったけどすごくいい買い物をしたと思う。

伸びをするとボキボキと体のあちこちから音が聞こえた。夜遅くまで座ったままずっとパソコンにかじりついていたのが悪かったかもしれない。いつものことだけど。

服を脱いで、洗濯機に投げ入れ風呂場のドアを開ける。

頭から熱いお湯を浴びるのは気持ちいいから好きだ。夏だから少し温度は冬より低めにしてあるけど。さっきまでしょぼしょぼしていた目も覚めてきた。髪も体も洗い終えて、ジャージに着替える。

髪を乱暴に拭きながらも寝室よりも広めなリビングに出て、エアコンのスイッチを入れると丁度チャイムが鳴った。

俺の家を訪ねてくるのなんて宅配便か俺の保護者になってくれている昔馴染みの変人しかいない。宅配を頼んだ覚えはないから、後者か。

危機感がないと言われるかもしれないけどめんどくさいからそのままドアを開けた。やっぱりそこには白い仮面を付けたまさに変人の知り合いの弥唯さんがいた。弥唯と女性のような名前だが、れっきとした男である。苗字の子笠と呼べば男っぽいのだが、まぁ今はそんなことはどうでもいい。


「やっとでたー!もうおっそいよー!」


頬を膨らませてそういう男は明らかに20超えているのでまったく可愛くない。むしろムカつく。殴っていいだろうかこれ。


「運び屋くんもそう思うでしょ?」


ねぇと弥唯さんが振り返るとそこには見知った白い拘束具かと思うほどベルトがついている服を着ている男が立っていた。白い服で口元まで隠し、その口元も小さいベルトのようなもので拘束されている。腕にもそのほかにももちろんついてるし、黒いズボンにも靴にもついてるっていう、どう見ても変態です本当にありがとうございました。

つかなんで二人共一緒にいんだよ。どっちか片方だけで満腹ですもういりません。どうせ、「一緒に連れてって!」とかいって無理矢理バイクの後ろに乗り込んだんだろう。運び屋よ、俺の知り合いがすまないザマァ。

声をかけられた運び屋は喋らない。喋れないとかいうわけじゃないらしいけど、いつも手帳に手早く文字を書いてそれを見せることで会話をする。けど、今は返事をする必要がないと思ってるんだろう、まったく動こうともしない。


「部屋入れてよー! あっついよー! 入っちゃうよー!」


返事を言う前に弥唯さんは俺を無理矢理押しよけ、乱暴に靴を脱ぎ捨てて中に入ってくる。それはいつものことだしいいんだけど、運び屋はどうするんだ。呆然としちゃってるし。

溜息を吐いて、運び屋に目線で入るように伝えて、冷蔵庫を開いて半分もないミネラルウォーターを取り出して飲み干す。ドアは殴って閉めた。

空になったペットボトルはシンクに投げ入れておいてあとで片付ければいいだろう。


「知ってるだろうけどー運び屋くんは料理もできるんだって! ってことで運び屋くんがよろぴくー!」


リビングにも、寝室にあるより大きい炬燵にもなるテーブルと同じ椅子が置いてある。弥唯さんが始めてきた時に置いていった座布団もあるけど、本人はさっさとそこに座り込み、呑気に鼻歌を歌っている。運び屋は最初から料理を作るつもりだったらしく、食材もほとんど入っていない冷蔵庫やらを開け閉めして、考え事をしてる。運び屋のくせに金を積まれれば料理も作るとか、もうそれ運び屋じゃない。それでいいのか運び屋よ!

仕方ないから、俺も椅子に座る。


「で、何しにきたんだよ」


「いつものに決まってんだろ?」


この人はただ俺の飯を作らせるために運び屋を使ったとは思えないから聞いたんだけど、いつものってことはあれか。

この世界には二次元か!っと胸を躍らせるような異能使いがいる。異能者と呼ぶんだけど、俺も弥唯さんもあと運び屋もその異能者だ。その異能者は色んな組織に分かれてるんだけど、まぁそこはめんどくさいから省くが、弥唯さんは異能者だらけの異能者のための研究課に勤めている。だからなのか、犯人がわからない異能者絡みの事件が起こるとこっそり凶器を持ってきて


「さぁさぁ、犯人は一体どんな人ー!」


と、ハイテンションで俺に異能を使うように言ってくる。許せぬ。

っていうか一般人の前にこっそり凶器持っていくなんてありえない。ほんとありえない。俺以外にも俺と同じ能力持ってる奴絶対いるだろ職場に。なんで俺なんだざけんな。

保護者になってもらった恩もあるし、やってと言われたらやらなければと思うけど、けど、見たあとが大変、なんだ。

サイコメトリーとかいう物に宿っている持ち主の記憶やら思いやらを読み取る能力が俺の異能。だから、それが人を殺めた凶器だとしたら、その時の光景、絶望、殺意をそのまま感じ取ってしまう。

少しの間ではあるけど、その人が感じた痛みも感じてしまって床にのたうち回ったこともある。トイレに駆け込んで腹の中全部吐き出して一日何もできずにガタガタ震えていたこともある。もしかしたら自分も殺されてしまうのではという恐怖で自殺しかけたこともある。

すごく気が進まない。

でもやらないわけにもいかないし、意を決してポイっとテーブルに投げ出された紙袋の中に手を突っ込み、凶器らしきものに触れる。

触れた指先からなにかが流れたような感覚がしたあと、光景が脳裏に浮かぶ。


 痛い、痛い、痛い、痛い苦しい……怖い。


ぐっと押し寄せてきた被害者の感情のせいでガタガタと体が震える。吐き気は無理矢理飲み込むことができたけど、口元を押さえていないと何度も何度も吐き気が押し寄せてくる。

それに、意識を飛ばせないでも酷い痛みまでどこも怪我をしてないのに押し寄せてくる。痛みはすぐに引いたが、とにかく怖い、苦しい。でも不思議なことに殺意がない。じりじりと心を削るように鋭い殺意がいつもあるはずなのに、まったくそれを感じない。俺が感じないんじゃなくて、これは被害者が感じていない。だから俺も感じることができない。

人を殺したくせに、殺意がないなんておかしい。殺意もなく人を殺すなんておかしい。

顔を上に向けることで吐き気を必死に押さえ込み、目を強く閉じてまだ続く光景に集中する。

犯人の姿はしっかりと記憶に刻み込まれていたのかよく見える。残念ながらハットを深く被っているせいで目は見えないけれど、とにかく傷が多い。なにか鋭い回転するドリルのようなもので皮をむしり取られたようなとにかく酷い傷だ。あとは夏だっていうのに黒い多分半袖の変な白い模様がついてるTシャツの上に白いシャを羽織ってる。薄そうだけど、春とかに着るはずのものだと思うから違和感しかない。被害者もそれを思っていたのか腕を見ているようだ。痛いはずなのに男の特徴を少しでも覚えようとしているのはあとで警察に連絡するつもりだからと、被害者が。

ベラベラと関係ないことを喋っているようだが、被害者はそれを聞き流していたみたいでよく聞こえない。大雑把に両手を広げて何か嬉しそうに話している男の手は、顔同様傷だらけだ。見ているこっちが痛くなる。チラチラと見える舌も切り傷で傷だらけだ。よくよく見てみれば首には一つの剥いだ傷、肩から鎖骨にかけて切り傷、もう片方の鎖骨は剥いだ傷がある。全身そんな傷を負っているのかと男に恐怖する。

おぇ、と口から小さく嗚咽が漏れる。

何を思ったのか運び屋と弥唯さんが一斉に俺の口を押さえ込んできた。こちとら痛みのせいで呼吸がしづらいっつーのにそんなに強く塞がられたら息できねーよくそ苦しい。やめろと振り払いたいところだかその拍子に吐きそうだから我慢して鼻呼吸を必死にする。苦しくて涙が溜まってきた。

犯人の言葉に被害者が必死に頭を回して返答する。黒髪の女性がチラついたが残念ながら顔はよく見えない。わかるのは黒い髪、青い瞳、狂ってそうな名前じゃないってことだけ。それを言い終えると犯人はなにか呟いて被害者を解放した。突然の解放に唖然としながらもこれで終わったのだと安心する。

だけど――。

さようならの声のあとに絶望する暇もなく意識は途切れた。


「っ……ぅ……!」


手を振って、手を口から退けろと必死に伝えると分かってくれたのかゆっくりと手が退けられた。急いでトイレに駆け込み、気が済むまで吐き出す。引きつるようなジリジリとした痛さで喉が気持ち悪い。全部吐き出したはずなのにまだ何かを出そうとえずく。それのせいで息ができなくて苦しい。

何度も味わっているはずなのにまったく慣れない。人が死ぬのを見ていることも、この胸の痛みも苦しさも。

ボロボロと流れる涙をトイレットペーパーでゴシゴシと拭い、フラフラと立ち上がって、トイレを流し洗面台に早足で入ってドアを乱暴に締める。とにかく口を濯いで、気持ち悪いジリジリする喉をどうにかするためにうがいをする。3回もしてやっと痛みが引いてきた。洗面台の端に手をついて溜息を吐くと震える足が止まりそのままその場に座り込んでしまった。止まったと思っていたのにまた体が震えだして、抑えるために腕を強く握り締めて体育座りする。ジャージャーと水が流れっぱなしだけどそれを止められるほど俺のメンタルは強くない。顔を埋めてじっとしていると、がらっとドアが乱暴に開かれた。流れていた水を止めてくれたみたいだ。けど顔を上げる気にもなれずそのまま座っていると強くドアを叩く音が聞こえ、ゆっくりと顔を上げる。

立っているのはいつも通りの仏頂面の運び屋だった。


『これでも飲め』


差し出されたのは運び屋がよく使っている手帳と弥唯さんが勝手に買ってきて勝手に置いていったティーカップに入った紅茶だった。興味本位で買った高い紅茶の茶葉を使ったんだろう、すごくいい匂いがする。夏に熱い紅茶かよとは思ったけど、匂いを嗅いでいるだけでだんだん落ち着いていく。カップを手に持ったままじっと紅茶を見ていると手帳を取り上げられ、顔にぶつけられた。早く飲めってことか。

息を吹きかけて少し冷やしてから恐る恐る一口飲んでみる。熱くてでもじわっとする心地よい暖かさが体全体に広がり、今まで飲んだインスタントの紅茶に比べ物にならないほどうまい。これうまい、ミルクティーで飲みたい。


『落ち着いたら戻ってこい』


頭に叩くように乗せられた手帳を取るとそう書いてあった。運び屋はそれを取り上げるとさっさとリビングに戻っていった。人のこと叩きやがってあんにゃろう、あとでぜってぇ殴る。

叩かれたことにはイラつくけど、運び屋の優しさが面白くなってきた。仏頂面してるくせにあいつはなんだかんだで面倒見がいい。少し前ぐらいに凶器を荷物として運んできたときも、なんだかんだと言いながら料理を作ってくれたし、俺の家に置いてあった残り物だから金はいらないとかいってそのまま帰っていったことがあった。優しいけど、その優しさで損してそうなタイプだ。
紅茶を飲み干し、洗面台に手を置いてそれを支えに立ち上がる。

吐き気はまだあるが、昨日の夜に食べたものを全部出してしまったせいで腹が空腹で痛い。また吐き出してしまったら食べた意味がないけど、食べないよりは増しだと思う。お腹を抑えながら、リビングに戻ると運び屋が俺が座っていた席にパスタを置いたところだった。

皿に綺麗に盛られたパスタは、多分残り物で作られてる。

パスタは、きのことベーコンと玉ねぎを使ったクリームパスタ。うまそうな匂いが漂ってる。

ぎゅぅと腹が鳴ったと同時にここ最近パスタが食べたすぎて麺をいっぱい買ったのを思い出した。めんどくさいから簡単に作れるペペロンチーノとかばっかり食べてたからベーコンが残っていたのはわかるけど、キノコを買った覚えはない。

まぁいいかと、フォークを手にとって汁が飛ばないように気をつけながらも頬張る。残り物で作ったとは思えないほどうまい。モゴモゴと無言で頬張り続けていると弥唯さんが爆笑しながら写メを取り出した。めんどくさいからツッコミは入れない。入れたらこいつ絶対喜ぶし。


「ぶぶっ、ねぇきのこどこから出てきたの」


誰か草刈り機持ってきてー!

ってぐらいに笑ってるけど俺は断固無視する。運び屋は無視すればいいのに字を殴り書きそた手帳をテーブルに乗せる。

『野菜運ぶの手伝ったらくれた』


「ひゃーっマジで? やっべめっちゃウケんだけど!」


弥唯さんはいつから笑い袋になったんだ。草生えまくってるじゃないっすかやーだー。え、wがあるように見えない? 心の目で見るんだよバカ野郎。


「アハハハハッマジ腹痛! 金の代わりにきのこってかウケるぅー」


何がそんなにウケるんだバカじゃねーの。

ちなみにこの人、めんどくさいから説明省くが、多重人格者じゃないだたの変人です。

狂ったように笑い続ける弥唯さんに腹が立ったのか、運び屋が頭を強く殴った。グーで。後ろに回り込んだと思ったらギリギリと絞め技を繰り出し、弥唯さんがギブギブと机をバシバシ叩いているのに気にせず締め続けてる。


「もうやめて、弥唯さんのライフは0よ! いいぞもっとやれー!」


あともう少しで落ちるというところで運び屋は腕を話してしまった。いいぞもっとやれって言ったのに。

弥唯さんは落ちかけだったけどすぐに咳込み、たまに嗚咽してる。


「てっめ、メイ! いいぞもっとやれじゃねーんだよ!」


「運び屋おかわりー」


「無視してんじゃねー!」


「うっさいな。こちとらどっかの誰かさんに無理強いられたせいで全部吐いちまったんだよ死ね!」


「酷いですわ!」


「唸れ、俺の左手!」


いい加減うざくなってきたから、左手でぶん殴ってやった。もちろんグーで。運ばれてきたおかわりのパスタをもっきゅもっきゅしながら、さっきの光景をどう説明すればいいのか考える。本当なら字にして書きたいところだけど、右手埋まってるから無理だ、鉛筆持てん。

冷やすわけにはいかないと急いで食べたからか、いっぱい盛られていたはずのパスタが10分ぐらいで無くなった。クリームソースの中に隠れてかき混ぜてから気がついたけど、一枚だけベーコンが残っていた。一人だったらめんどくさいから手で取るけどさすがにできないからフォークをぶっさす。なのに、最後のベーコンが滑ってうまく取れない。フォークは刺さってるのになぜ持ち上がらないコノヤロー。イラついてガスガスとフォークを刺し続けたらやっと取れた。

コップに移されたミネラルウォーターを一気に飲み干し、息を吐く。


「ごちそうさまでした」


洗い物をしている運び屋の横から皿をシルクに置いて、椅子に座る。俺の全力の拳なんてほとんど痛くないはずだけど、弥唯さんは拗ねてるのか床に倒れている。


「邪魔」


つい癖で舌打ちをすると、弥唯さんがわっと嘘泣きし始めた。ウザイのでスルーして、スマホの電話帳を開く。いつもなら、仕事が終わってから家に乗り込んできて、凶器を持って帰って次の日にとある場所に行って俺が見たものを『夢』にしてもらうんだが、運び屋と一緒に来たってことはこのままそこへ行くつもりなんだろう。でもバイクの3人乗りだめ、絶対。あ、俺だけ運び屋に連れっててもらって弥唯さんは歩けばいいのかなるほど。

登録している番号は10個にも満たない。その中から『夢見店』を選択し、電話をかける。ちなみに読み方は、ゆめみみせ、ではなく、ゆめみせ。一発で読めたらすごいわ。

数コールすると相手が電話に出た。


『はい、夢見店ですが、ご要件は?』


電話に出た相手の声は、10代であろう男の子の声。本当の性別は知らないが、俺は声からして男かなと思っている。いや知らんけど。ちょい低い女の子の声にも聞こえなくはないけど。


「ルイだ。今日中に頼みたいんだが」


『おや、一ヶ月ぶりだね。今日中だと……3時以降は空いてるよ。それでいいかい』


時計は2時を指してる。今から出かけて歩いて夢見店に行くんだとしたら一時間かかるし、丁度いいだろう。一様弥唯さんに確認する。


「弥唯さん、3時以降だとよ」


グスグスとまだ泣いていた弥唯さんはちょっとこっちを見ると頷いた。あの顔は、構ってくれないことに悲しんでた感じだな。これもスルーするけど。


「OKみたいだ。んじゃ一時間後に」


『お待ちしているよ』


電話を切って、ポケットにしまい込む。正直暑い外に出るのは嫌で仕方がないけど、あの光景をうまく伝えるのには夢見店に手伝ってもらったほうが楽なのだ。死ぬその瞬間と、死にさらされている瞬間をうまく伝えるなんて俺には不可能だ。

弥唯さんは不満そうな顔をしつつも、起き上がりさっさと靴を履いて玄関で待っている。そのままでいたら置いていかれるのがわかってんだろうな。やったことあるし。


「運び屋はどうするんだ」


洗い物を終えタイルで手を拭いていた運び屋に尋ねると、テーブルの上に置きっぱなしになっていた手帳にギリギリ読める字を書いてこっちによこしてきた。


『今日の依頼は護衛。ついていく』


「今日の運び屋さんのお仕事は護衛ですから。私が家に帰れるまで付いてきてもらう予定ですわ」


弥唯さん絶対俺が読むタイミングと合わせてきたな。玄関を見ると弥唯さんはにっこりと微笑んでいた。女性バージョンだから、なんだろうけど。あ、仮面つけてるから目はもちろん見えてない。口元で判断した。




■ ■




もごもごと偶々見つけた焼き鳥屋で購入したねぎまを頬張りながら、たまにスキップしながら赤紫の髪をした少年、リョウは道を歩く。もちろん、リョウというのは本名ではないのだが彼はこの名以外を他人に教えるつもりは一切ないし、その名を使うことも今後一切しないと数年前、彼の両親が死んだ日以来決めている。最後の一本のねぎまを紙袋から取り出し、腹に収めていく。

ねぎまが好きなわけでもないが、食べれないわけでもないし、匂いが美味しそうだったからという理由で購入したが、上機嫌になるほどおいしい。確実においしく、お腹もいっぱいになるしかも安いつくねばかり食べていたリョウだが、今度からはつくねとこれにしようかなと今にも鼻歌を歌い出しそうなほど上機嫌でスキップをする。

もう少し食べたかったなと思ったが今食べていたねぎまが最後の一本だったので仕方なく紙袋に串をいれて同じように紙袋に入っている串を中心にしてぐるぐると巻いていく。

ポーンと少し前だったらその紙袋を道の端の方に投げ捨てていたところだが、以前生死の境を彷徨っていた際に助けてくれて、その上、寝床を提供してくれた二人組にそれはだめだと言われて以来、リョウは捨てたくなる心を押さえつけて、手に持ったままゴミ箱があるところに走るようにしているのだが、今回の場合は、リョウが時々訪れてはしばらくの間、居候している二人組の家に向かっているところなのでその家のゴミ箱にそのまま捨ててしまえばいい。

早く帰って捨てようと少し走って車が横で二台走っていても歩けるほどの広さがある路地を曲がれば、同じ広さの路地があり、家はその路地をさらに曲がって車が一台なら通れるぐらいの広さしかない路地にある。その路地はすぐ行き止まりで、あるのは三階建ての家だけ。家と言ってもこのあたりの路地にある建物を家として使用しているのはここだけで、他はみな潰れてしまった小さな会社や、裏稼業を営む関わりたくない危ない人達が表向きには会社として使用している。だから、見た目はまんま事務所として使うであろう建物。到底家とは思えないような建物だ。

最初ここに連れてこられたときはリョウも目を丸くした。こんなコンクリートでできた建物を家にしてるなんてお金ないのかなと少し心配をしてしまったりもした。だが、ドアを開いて二階に上がればそこは外見からは想像のできないほど明るく、綺麗なちゃんとした家だった。最初に目に入ったのは横に置かれた緑の植物達。足を踏み入れればキッチンが横にあり、その前に10人は座れるであろう大きなテーブル。そのテーブルの横には白いふかふかとしていそうな大きなソファとそれと同じ種類だが少し小さめのソファが一つずつあり、その二つの前に小さいテーブル。その奥に大きなテレビがどんと置いてあった。外の見た目とのギャップが酷すぎる。慣れてしまえばそんなこともないけれど、慣れなかったときは少し居心地が悪かった。それに関しては二人組も同じだったらしく、もう少し普通の外見の建物を購入するんだったと反省したが、今後のことを考えると家が上にあると気がつかれると今後厄介になるということを最初からわかっていたから後悔は一切しなかったと苦笑しながら教えてくれた。

よく見れば2階の窓から家具らしきものが見えるのだが、そこまで警戒して上を見る人なんてそうそういないので気がつく人も滅多にいない。

路地を曲がると、家の目の前に3人組が立っていた。一人は拘束具に見立てたような服をきた外国人っぽいリョウよりも年上だろうけど、まだ成人はしていないであろう少年。二人目は青いジャージを着ている男女どっちにも取れる顔立ちをした人。3人目は仮面で目元までを隠した白衣をきた男性だ。


「んーっと、お客さん?」


リョウに寝床を提供してくれた二人組は15のリョウよりも年上でまだ学生だが、その傍ら特殊な職業をしていた。見た目からしてその客だろうかと、首を傾げながらも尋ねると、一人目と二人目が三人目である仮面をした変な男性に下から見上げる。すると、仮面の男性はにっこりと微笑んで頷いた。


「でも、開かないんだよねー」


ドアノブを引いてみてもチリンチリンとドアに付けられたベルの音が鳴るだけで、開かない。リョウも首を傾げながらドアノブに手をかけて同じように引いてみても開かない。

いつもよりも早めにきたが、もう学校は終わっているはずだからいないのはおかしい。力いっぱい引いてみてもドアはびくともしない。ベルは外にも中にもつけられていているのでそこそこ大きな音がするのだが、中にいるんだとしたらローブの二人組は気がつくはずだ。なのに出てくる気配は全然ない。ドアに耳を当てて中の音を聞いてみようとするが、音は一切聞こえてこない。

首を傾げて、3人の顔を見てみると3人とも参っているといった顔をしているのでリョウが来る前から今のリョウと同じくもやもやとした気持ちでこの場にいたのだろう。


「お客さんは約束してた?」


「あぁ。3時以降にって約束してたぜ。いつもなら約束破ることなんてねーのにな……」


顎に手を当てて首をかしげるジャージの人の言葉に頷く。いきなり来たならまだしも、二人組の性格を考えると約束をしていたのにそれをすっぽかすなんてことは考えられない。3人組の方は二人組の本来の性格はしらないが、リョウはちゃんと知っている。他人に嘘をつかれたり、約束を破られたりすることには一切怒らないのに、自分がする立場になると自ら自分を殴りつけたりするような二人組だ。一度、数分だけだか待ちぼうけを食らったことがあるのだが、走って現れたと思うと息を整えることよりも先に二人は自分の頬に平手打ち
し、唇を強く噛み締め、その場に土下座しそうになったときは本当に焦った。もう二度と見たくない光景だなと思い出しながら、心の中で苦笑する。

自分を平手打ちするような人が約束した時間なのにいないというのはおかしい。どうしたのもかと悩んでいるとズルズルと何かを引きずって歩いている音が近づいてきた。なにかと角から顔を覗かせると、ローブの二人組が成人男性をズルズルと引きずって歩いていた。


「え、ちょ、えー!?」


驚きながらも慌てて駆け寄ると、狐の仮面をつけたほうが大げさに溜息を吐いた。


「ふぅ、リョウくんちょっと手伝ってもらってもいい? この人重くって」


二人組に手を離され、地に落ちた男は白目を向いて失神していた。




■ ■




『逃げられちゃったー。っていうかさぁ、僕達ばっかにやらせないで自分で動いたほうがいいんじゃない? どーせどこらへんにいるとかわかってんでしょ』


息子から送られてきた大半が愚痴のメールを鼻で笑い、追いかけている甥がどこにいるのかの予想をし、印をつけた地図を貼って送り返す。言葉で返信は返さないが、どうせあいつのことだ自分の親が考えることぐらいわかっているだろう。

スマホをしまったところで、後ろから足音が聞こえ振り返る。


「おや、これはこれは。珍しいこともあるのですね、あなたが人前にいるだなんて」


振り返った先にはラフな格好をした長髪の男、弧原擂琉賀が立っていた。自然と顔を顰めるている自分がいる。異捜の上部のものに呼び出され、暑い中歩いて警視庁まできたが後回しにすればよかったと後悔してしまう。返事をしなくてもいいのだが、顔を顰めたまま言葉を返した。


「人のことをなんだと思っているんだ」


「人でなしだと思っています」


笑顔で帰ってきた言葉は酷いものだが、間違っているわけではないので黙る。こいつは自分が思うままに他人のことなど気にせず生きている人間のことを素晴らしいなんだといい、俺のことまでも素晴らしいなどどいうくせに、いつもこの調子だ。それに関しては特になにも思っちゃいないが、こいつは俺よりも悪人だ。周りからは同属嫌悪だろうと言われるが、実際のところ、自分に憎しみを向けさせる俺より、ただ遠くから眺めてニヤつくコイツの方がタチが悪い。俺なんてまだいい方だ。

利用価値は高いが、敵には回したくない相手だろう。


「ですが、あなたの目的に対する姿勢は美しい。尊敬していますよ」


男に言われても気持ち悪いだけだが、言い返すとめんどくさいことになるのはわかっているので軽く横目で見るだけで言い返しはしない。

そいつももう話すことがないのか、俺が見えている見えてない関係なく頭を下げ去っていく。


「あぁ、そうでした。先ほどたまたま見かけたのですが」


わざとらしく言われた言葉に顔を向けると、弧原はいつもの薄気味悪くも感じる爽やかにも両方感じる笑みを浮かべていた。


「莵柚さんが、甥さんの居場所を教えているのを目撃しましたよ。彼にもなにかしたんですか?」


名を言われたが、一瞬思い出せず動きを止めた。

異捜にそんな名のものがいたような気がするが、顔には覚えがない。腕を組み、面白いことを起こすために読み漁った警視庁に務める異能者たちの書類を思い出してみる。


「あぁ、そういえばそんなものがいたな。確か、孤児だったか」


「覚えていらっしゃらないのですか? おかしいですね、あなたがあなたを恨むものを忘れるとは」


「違うな。俺が覚えているのは直接手を下し、恨むように仕組んだやつだけだ」


「それはどういう……」


「それ以外は覚える必要がないだろう」


首をかしげる弧原を鼻で笑い、答えてやる。

俺にとって価値がないものをわざわざ覚えておいてやる必要はない。そんな価値がないもののために脳の容量を分けてやるほど俺の脳の容量は多くないのだ。例えあったとしても使ってやるつもりはないがな。


「やはり、あなたは人でなしですね」


溜息を吐きながら言われた言葉にお前もなという言葉を返そうと思ったが飲み込み、なにも言い返さずにその場を去った。やつにこれ以上時間を割いているほど暇はない。やつもそれがわかったのだろう特になにも言わず、廊下をわざとらしくゆっくりと歩き出した音が聞こえた。