大阪弁は調べながらやってはいるんですが、ちゃんと理解してないのでエセです。すいません。
それと、あなたたちどうした!? 黎にいいねが7人もの方がしてくれたんですけど、どうした!?黎なんてただのドS野郎だよ、変人だよ今すぐ逃げよ!!!ありがとうございますっ!
ぜぇぜぇと、肩で息をしながら和々音はあたりを見渡した。人通りがないわけではないが、少しの人しかいない路地を走りに走り、なんとかあの場から逃げたはいいが、適当に目に付いた場所を走っていたせいで、今自分がいる場所がどこなのか、どうやって家に帰ればいいのかまったくわからない。和々音の手を引き走っていたアズミはと言えば、走っている途中に体力の限界を迎え和々音に引っ張られる形で走っていたせいか、手を掴んだまま後ろで和々音よりも荒く呼吸をしている。
なんとか呼吸を落ち着かせ、アズミの様子を後目で見てみるが疲れているだけで何かしらのダメージを受けたりしているようなわけではない。それに一安心しつつ、手を離して後ろを振り返る。
「あの、大丈夫ですか?」
声をかけたはいいが、アズミの呼吸はまだ落ち着いておらず、手を軽くあげることでの返事が帰ってくるだけだった。
「私、お水買ってきますね!」
体力の無さに苦笑を浮かべつつ、喉が乾いていたことに気がつき、走っている最中に見つけた自販機に走る。アズミの返事を聞かずに行ってしまったが、返事が返す余裕もなさそうだったのでいいだろう。280mlの水を二つ腕に抱き、アズミがまだ呼吸を落ち着かせるために必死に深呼吸をしているであろう場所に戻ろうとすると、遠くの方から女性が怒っているような声が響いてきた。丁度アズミがいる方から聞こえてきたため、慌てて戻ると誰かに首元を絞められ苦しそうにもがいているアズミの後ろ姿が目に入った。
「つ、月島さん!?」
後ろから声をかけると、ヒョイっとアズミの首を絞めていた人物が顔を覗かせてきた。少し釣り目気味で、深緑の髪と赤い瞳をした少し気が強そうな女性だ。さきほど響いていた声はこの女性のだろう。和々音をしっかりと見ると、女性は笑顔を浮かべた。
「おーい、アズミさんよぉ。なぁにこの女の子ねぇ、人の連絡には出ずにデートですかいいご身分ですね、1回死んどく?」
「ちゃ、ちゃう!」
「あはは、私関西弁よくわかんないやー標準語で言えや」
「すいませんすいません! けど、ちゃうね、じゃなかった、違うんだ! 追われててこの子の家族が助けてくれてなんかよーわからんうちにこの子ついてきとったんや!」
「途中から標準語じゃなくなってんだよクソ野郎! 大体よくわからねぇとかなんなんだよ、このクズ! 心配させやがって!」
「お前が……心配? こ、この世の終わりや!」
「やっぱりてめぇ1回死ねぇえ!!」
和々音の存在は認識しながらもまったく声をかけたりせず会話を続けていた二人は追いかけっ子を始めてしまい、腕にペットボトルを抱きながら、オロオロとその様子を見ていると後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。ただの通行人だろうと大して気にとめず、この二人とどうやって止めるか考えていると足音が隣で止まった。
「もー、置いてくなんてひどいよって……二人共なにやってんのこの子は?」
声からして男性だろう。
明らかに和々音のことであろうあの子、と言われたのでこの二人の知り合い。
そういえば、逃げる前にあの影の人が名前を言っていたっけ、と思い出す。二人はそのうちのどちらかなんだろうか、と思いつつ、顔を見るために横を向くと、ほぼ同時に同じように横を向いていた男性の顔には見覚えがあった。
先日、異能に目覚め驚きのあまり気分を害していた和々音に親切にしてくれた人の弟であり、和々音が傷つけてしまった人物、竹だ。
目を見開き、竹の顔を見入っていた和々音はハッと気がつき、一歩下がり、バッと頭を下げた。
「すみませんでした!」
「ごめんなさい!」
あれ、と頭を下げたまま思わず声を漏らす。
和々音がごめんなさいと、言う前に誰かに謝られた。こっそり上目で見てみると、竹が同じように頭を下げ、和々音を見ていた。
「こ、こちらこそすみませんでした!」
「い、いやいや俺の方こそごめんなさい!」
ごめんなさい、すみません、という言葉を繰り返し、何度も何度も二人して頭を下げていると小さくガシャっと鉄のような音が聞こえた。顔を上げるといつの間にかアズミを捕まえ首元を掴みズルズルと引きずってきた女性が立っていた。
「なにやってんだお前ら」
「初対面の子をお前とか言わない!」
「もう立派なオカンやな!」
「もし次言ったら本気のアッパーするから気をつけろよ月島」
「お前ら俺に冷たない!? 酷い、俺泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「兄以上にうざいわー」
二人の時もそうだったが、和々音が入る隙間もないような会話のスピードだ。
しかし、さすがにアズミに冷たいような気がする。
「和々音ちゃんもそう思うやろ!? こいつらホンマ冷たいねん!」
「えっ、そ、そうですね」
思っていたところで声をかけられ、びくりと肩を震わせたがそれでも答えるとアズミが嬉しそうな顔をした。女性と竹はと言えば、そのアズミを呆れた目線をぶつけていた。
「だってこいつ嘘つきだし」
「うざいし」
「泣き虫だし」
「弱虫だし」
「人の失敗を爆笑するようなクズだし」
「世話しないといけない立場でありながらむしろ従弟に世話させるようなやつだし」
「優しくしてやる価値がねぇな」
「そうだね。むしろキツめに当たってやるのが月島のためだと思うよ」
「自分をいらないとか思ってやる奴が優しくしてもらえると思うなよクズ野郎」
弱虫、あたりで月島が地に倒れたがそれでも二人は止まらず、最後には冷たい瞳で見下ろし、チッと舌打ちまでおまけでするという連打を叩き込んだ。顔に手を当て丸くなってしまった。よほど心のダメージを受けたんだろう。その様子を気にするでもなく、二人は和々音に笑顔を向ける。
「うちのが迷惑かけたな。家まで送るけど、道わかるか? 竹ぇ、そいつ転がして連れてこい」
「えー、やだよ。ほら、起きて。自分で歩けるだろ?」
「アカン……ダメージが多すぎた」
「あそ、じゃ置いてく」
「嘘やから、置いてかないでーーー!」
きっとこの三人はいつもこんな感じなのだろう。
アズミを二人が冷たくあしらい、うざいと思ったら一言多めに言葉に出す。そしてアズミが精神にダメージを受ける。アズミにしかダメージがないやりとりだが、すぐにケロッと普通の顔を仕出すアズミなので問題ないのだろう。今も泣き出しそうだったはずの顔が、歩き始めた途端ずっとしていた嘘くさい微笑みに変わっている。変わるまでの間は一分もないはずだ。
打たれ強いのかそれとも本気じゃないと思っているのか、和々音には判断しかねるが、それが普通なのか二人もツッコミを入れたりしない。あえて無視しているようにも思えなくはないが。
「んー、こっからだと……どっちだ?」
「地図だと……だめだ土地勘ないからイマイチよくわかんないや」
「役ただず!」
「その言葉そのまま返す!」
「地図も読めないんか自分ら。理解できひんわ~。これ明らかに左やで」
「はぁ!? いや、は?」
「逆や逆。ほら、左やん」
「うわ、ださっ」
「黙れ死ね」
どうやら地図を逆にしてみていたらしい二人を後ろからアズミが指摘するといいコンビネーションでアズミを沈ませた二人が喧嘩を始めてしまった。それもいつものことなのかアズミは気にせず二人からいつの間にか奪った地図を口笛を吹きながら見ている。
和々音が最初にみたときの竹と、今女性と口喧嘩をしている竹は随分と印象が違う。罵詈雑言を二人の間で飛び交い、キレた女性が竹の首に飛びつき締め付け、竹がギブしたことで終わりはしたが、今度は睨み合いが始まってしまい一向に帰れそうにない。仲がいいのか悪いのか、わからなくなってきた。
もう疲れたなぁ、と深い溜息を吐いてしまった和々音は一切悪くない。
■ ■
やっと家の前についた。
と心の中でこっそり溜息を吐いた和々音はなぜか横一列で前に立っている三人組を盗み見た。
あの場から動き出せたのはあれから10分後だった。竹が和々音が退屈そうに待っていたのに気がつき意味のない言い合いを続けていた二人を止め、謝りながら三人で和々音を家まで送ってくれた。送ってくれたはいいが、その途中でもずっと言い合いを続けていたのだ。
途中で女性が気がつき自己紹介してくれたり、和々音に話しかけてくれたりしていたので退屈することはなかったが、人の目を全く気にせず言い合いをしている三人にはずっとヒヤヒヤしていた。
謝りに行けと女性、もとい傘松秋奈と自己紹介していた人に軽く背中を蹴られ、痛そうに背を摩っていたアズミに続いてドアを潜る。
「た、ただいまー……」
天然な上にお人好しの両親なら人助けをしたのだから怒らないだろうが、携帯を置きっぱなしにしてしまったせいで連絡できなかったという罪悪感から体を小さくさせつつ声を出して足音をなるべく消しながらリビングのドアの前に立つ。
三人はといえば、お邪魔しますと和々音と同じように小さな声でいいつつ和々音の後ろに立っている。先に入ったはずの月島がなぜ後ろにいるのかはとりあえず横に置き、恐る恐るドアを開く。
「お、お母さん、お父さんただいま……」
顔をのぞかせ、リビングにいるであろう両親に声をかける。
和々音から見て奥側に座っていた両親は目を少し見開くといつも通りのおっとりとした笑顔になった。どうやら怒ってはいないらしい。それにほっとしてみてから気がついた。両親の前に男女が座っていた。
ゆっくりと振り返ったその男女のツナギの上から着物を羽織っている少女には見覚えがある。先日、異能について教えてくれた同級生の布居刀麻だ。
なぜいるのか、と目を見開くと刀麻の方も目を見開いた。
「と、刀麻!? なんでお前が!」
和々音を見ていた訳ではないことには和々音本人も気がついていたが、丁度後ろに立っていた傘松が声をあげたことで驚いた。どうやら顔見知りらしい。後ろをチラッと見るとかなり驚いたという顔をしている笠松が見える。
その顔もしっかりと見ていた刀麻が大きく溜息を吐いた。
「それはこちらのセリフです! まさかまさかと思っていたらホントに月島さんだっただなんて、どうなってるんですか先輩! 躾ちゃんとしろよ!」
最初は傘松に対して言っているのだが、途中から隣で羊羹を咀嚼していた青年に向けて怒鳴り出した。怒鳴ったと言っても和々音が知っている刀麻はとても物静かで礼儀正しいというイメージのある大人しい少女だ。そのせいか怒鳴っているという印象が強くなってしまっているだけで、少し声を大きくした程度である。それでもうるさいことにはかわり無いのだが。
怒鳴られている青年といえば、呑気にお茶を啜った。
灰色の髪、黄色の瞳、どことなくアズミに似ているような気もしないではない。遠い親戚かただ似ているというだけか、混乱してしまっている和々音はそんなことも気がつかない。
「俺はあの人の飼い主じゃねーから無理だな」
「呑気に羊羹食べないでください!」
楊枝を持っていた方の手を叩きつけ続けて怒鳴られたが青年はと言えばどこ吹く風。
まだひと切れ残っていた羊羹を口に頬り込み、数回噛んだだけで飲み込むと立ち上がった。刀麻を通り過ぎ、まだドアの前に立っていた和々音達の前に立つ。
「二年の鎖宙雪だ。うちの従兄が迷惑かけたな」
それだけいうと、そのまま横を通り過ぎ、壁にベタッと背を付け水でも浴びたかのように冷や汗でびっしょりと濡れてしまっているアズミの目の前に立った。
「え、従兄……?」
そう言われてみれば似ているような、とやっと気がついた。
竹の言っていた逆に世話してもらっている従弟というのは雪と名乗ったこの青年のことだったらしい。
「また怪我したのかよ。あのさぁ、危なくなったらうちに帰ってこいっつってんだろ。どうせ自業自得なんだろうからアンタが怪我すんのはどうでもいい。けど、他人に迷惑かけんなっつってんだろアンタは鶏か。いや、違うな。鶏の方が賢いな、うまいし、そうだ今日は唐揚げにしよう」
「いや、そのな、別に巻き込もうなんて思っとらんかったし」
「思ってねーなら巻き込むなダメ人間!」
バチッと音が弾けるとほぼ同時に青い光が弾けた。一瞬だったせいかよく見えなかったが、雷のように細い光だった。
「はぁ……何度もいってっけど、アンタマジでそのうち刺されるぞ」
「すでに刺されとる! あだだだだ、割れる、頭が割れるーーー!」
「割れろ、そして死ね!」
頭を鷲掴み、ミシミシと音がし出した。
アズミが悲鳴をあげるのも無理はないだろうという、聞いているだけで痛そうな音だ。
「ユキ先輩それぐらいにしましょう。これ以上お邪魔するのも迷惑でしょうし。あ、秋奈さん、しっかりこの人謝らせておいてくださいよ、いくらうちの学校の生徒といえど彼女はまだ目覚めたばかり。混乱もしているでしょうから説明をしっかりするように!」
いつの間にか横に立っていた刀麻が雪を呼び止め、和々音の横にいた秋奈に言いつけると和々音の目の前に立ち、腕を掴んできた。
「これ、先日は私も疲労していたせいでまったく気がつかなかったので今日持ってきました。色々と書いておきましたから疑問があったらこの三人に聞いてください。では、私達はこれで。羊羹御馳走様でした。ほら、先輩帰りますよ」
「あー、はいはい。邪魔したな」
ポイッとアズミから投げるように手を離すとすでに玄関にいた刀麻の後を続く。
「あらあら、帰っちゃうの?」
リビングから顔を出した母親が尋ねるとにっこりとした笑顔で刀麻が振り返った。
「はい、要件も済みましたし、長時間お邪魔いたしました」
「羊羹うまかったです、お邪魔しました」
丁寧にお辞儀をした刀麻と、笑顔で軽く頭を下げた雪は家から出て行った。
渡された紙が数枚入っているファイルに顔を写す。綺麗な字で綺麗に纏められている。
「まさか……刀麻と和々音が同級生だったとは。しかもあいつがここまで優しくするとか、明日は槍でも降ってきそうだな」
「そんなことより、先に謝罪!」
■ ■
あのあと、雪に頭を鷲掴みにされ痛みに悶えていた月島が両親と和々音に謝罪した。もちろん自ら巻き込まれにいったようなものなので、すぐに頭を上げさせたのだが一緒にいた秋奈がそれじゃ示しがつかないとその後、和々音の質問に答えてもらった。
秋奈と刀麻は両親が仲がよかったこともあり、子供の頃から仲良くしている仲らしく、今でも週一であっているとのこと。そして、雪という先輩はアズミの従弟でもあるが、いつの間にか刀麻と知り合い、今ではほぼ毎日一緒にいる上に刀麻の家の家事までしているらしい。三人が知っているのはそこまででどうしてそんなことになったのかは知らないとのことだった。
刀麻から渡された異能のことについても実際にどんな風だったのかということも教えてもらい、ついでに先ほどの青い光が雪の電気の異能が起こしたもので、感情の揺れによってそういうことをしてしまうことがあるらしい。
質問が終わったあと、三人はまだ仕事があると再度謝りながらも帰っていった。三人の助けもあり、異能については理解した。そして異能者にも色々いることも。
三人のように色々ありながらも優しい人もいれば、怖いことをするような人もいる。異能者であれ、同じところはあれど全てが同じではないのだ。巻き込まれたくないのなら異能者であることは秘密にすべき、撃退できるほどの腕の自信があるなら秘密にしなくてもいい、とのことだったが和々音にはそんな自信がない。素直に隠しておくべきだろう。
そういえば、と思い出す。
小さい頃、姉が人を違うことを思い悩んでいたことがあった。どんな理由で思い悩んでいたかは忘れてしまったが、竹はあの頃の姉と同じ気持ちで今もいるのだろう。
ひどいことをしたな、と反省する。
「もう、今日は寝よう……」
走り回ったり、驚いたり、色々したせいで心身共に疲れが溜まっているのか、横になった途端に視界が暗くなった。
そのまま、深い眠りへと落ちていく。
また同じ目に遭うのではなんて、微塵も考えずに。