インプロバイザーにとっては
とんでもなく刺激的なタイトルですね。


インプロ(即興演劇)の黄金律の中に
「Yes,and」という言葉があります。


これは

相手のアイデアに対しては
拒絶や否定はしないでまず受け入れて(Yes)、
そして、自分もそのアイデアに対して
自分のアイデアを重ねる(and)

というものです。


いや、これ自体は全然否定はしませんし、
むしろインプロにおいては大事なことです。
この「Yes,and」の「精神」はね。。。。。


でも、この「Yes,and」を言葉で捉えてしまうと
とんでもない誤解が発生することがあるのです。


インプロ始めて1~2年くらいの人から
「のんべさん、相手のアイデアに絶対「はい」という必要ないですよね」
という質問を、よく受けます。他にも、

「Yes,and」は服従じゃないですよね?
「Yes,and」は妥協じゃないですよね?
「Yes,and」は相手からコントロールされてませんか?


こういう時は私の答えは
「別に「はい」っていう必要はないよ。
 『おまえが犯人だ』と言われて、『はい』って返す?」


この「Yes,and」の解釈には少し補足が必要です。


相手のアイデアに対して、
それを受け入れた事によって予測不能な事が起きそうだったり、
自分のアイデアが何もない事の不安だったりすると、
人間の生理として拒絶や否定しがちだけど、そこは

拒絶や否定をしないでまず受け入れて(Yes)、
そして、自分もそのアイデアに対して
自分のアイデアを重ねる(and)


なので、闇雲に「はい」という必要もないし、
相手のアイデアによって、
自分が拒絶や否定のアイデアや
演じているキャラクターとしての衝動があるなら、
無理矢理「はい」と答えなければならないことはないのです。


そして「Yes,and」は確かにインプロの黄金律(倫理学的言明)ですが
鉄則(変えることのできない規則や法則)ではないです。
もし、鉄則というなら、それは既に予定調和ですよね。


道を歩くときは右左交互に足を出す。


そんな程度です。

だから、たまにツーステップで歩くのもあるでしょう。
でも、そうすると周りがびっくりする事もあるし、
場合によっては蹴躓くこともある。
そういう事はちゃんと知っておいた方がいいでしょう。



【おまけ】

アビリーンの逆説"Abilene Paradox"というのがありまして、
人間は他人との衝突(Conflict)を避けるように行動してしまう。
その結果組織として最悪の方向に行ってしまう。
というものです。


これはとある寓話から生まれた逆説です。


テキサスの暑い日の出来事、
Jerryは奥さんと義理の父、義理の母と家のソファーでくつろいでいました。
義理のお父さんのあの一言がでるまでは。。


義理の父:「車でAbileneまで言って、カフェテリアでディナーでも食べないか?」


(Jerryの心):なにーーー。この暑い中、53マイルも先のあの場所へ、
エアコンもついていないあのBuickで行くの。。
なに言ってるんだこの人。。。


奥さん:「いいアイディアね。Jerryどう?」


(Jerryの心):行きたいわけないだろう。断れよう。。。

Jerry:「いいねえ。お母さんも行きたいんじゃないかなあ。」


義理の母:「私も長らくAbileneには行っていないからねえ。」


ということで、みんなでAbileneまで行って、
むちゃくちゃ暑い中くたくたになってみんなで帰ってきました。
そして扇風機の前でぐったりしていたところ。。


義理の母:「あんまり良くなかったはね。。。。
正直、行きたくなかったのよ。
みんながすごく行きたそうだったから、みんなが私にプレッシャーをあたえるから。。」


Jerry切れる:「どういう意味?みんなって。。一緒にしないでくれ。
私はただみんなを満足させるために一緒にいったんだよ。
最初からぜんぜん行きたくなかった。」


奥さん:「私もよ。みんなが行きたそうだったから。
喜ばせるために行っただけよ。
さもなければこんな暑い中だれが行くもんですか。。。」


義理の父:「くそっ!!こんなことなら行くんじゃなかった。
俺はただみんなが退屈してるんじゃないかと思って誘ったんだ。
私はAlibeneなんてもう行きたくなかったのに。
家でドミノ遊びしてアイスを食べてくつろいでいたかったよ。。」


とまあみんながお互いに衝突を避けるためにNOと言えずに、
同意した結果組織全員がハッピーになれず
矛盾(Paradox)した結果になってしまったわけです。