「作る」と「創る」の違いはご存じの通り、
「作る」は様々なものをこしらえること、
「創る」は、新しいものをこしらえること である。
さて、
インプロで「つくる」のは、やはり「創る」の方が望ましい。
「作る」だと、
つまりは既存のものをこしらえる作業であり、
そこには予定調和が発生しがちであり、
また、ステロタイプな材料も用意されがちである。
それは、
「今、ここにあるもの」を見ずに、
頭の中にあるものとか、外から持ってきたものとかを
持ってきがちである。
大事なのは「今、ここにあるもの」を使うことである。
しかし、「先を予見しない」のがインプロである。
予定調和もステロタイプも要らない。
「今、ここにあるもの」を使って、
先を考えずに紡いでいけば、
自ずと新しいものになっていく。
そこに、「新しいものをこしらえよう」とする
意図が入ってくると、
「今、ここにあるもの」を見落としやすくなる。
そして、「今、ここにあるもの」とは
インプロバイザーだけでなく、観客の目の前にあるものである。
だから、「新しいものをこしらえよう」という意図は
観客にとっては不要なもので
「今、ここにあるもの」がどのようになっていくのか が
観客にとって期待しているものであり、
その期待に応えることがインプロヴァイザーに必要な事である。
では、観客が何を期待しているのか?
それは、簡単なことである。
インプロヴァイザーは、すでにプロの観客である。
だから、
「観客が何を求めているか?」とは
「自分が観客だったらが何を求めているか?」 ということである。
「新しいものをこしらえよう」という意図よりは、
先の見えないシーンに対して、
「たくさんのリスクを乗り越えていくプレイヤー」が観たい。
先の見えないシーンにおいて、
「この人に感情移入できるキャラクター」が観たい。
先の見えないシーンにおいて
「心揺らされるストーリー」が観たい。
決して、その場しのぎの仕掛けや、ギャグが観たいわけではない。
プレイヤーとともに
「今、ここにあるもの」から先の見えない世界に
共に旅をして、ドキドキはらはらしたいのである。
シアトルのインプロカンパニー
"Unexpected Productions"主宰ランディいわく
「インプロとは、崖から飛び降りて、落ちている最中に飛行機を組み立てるようなもの」
飛び降りる前から飛行機を作ってしまっては
リスクがないから、観客もがっかりしてしまう。
飛び込んだ時に、地面に落ちながらも、
まわりをみて、その瞬間に何があるか見て
そこにあるものを見て、何が使えるか考えて、それを使う。
ただ、それだけである。
そして、ただ落ちるのでなく、少しでも飛んだ瞬間、
それは観客にとってそれは魔法のように見える。
それが、インプロの醍醐味でもある。
確かにリスクは怖い。
でも、実はこのリスクがインプロを面白くする。
インプロが美しいのは
「見えない未来に向かう姿が美しい」からだと思う。
だから、インプロは「創る」ものでありたい。