インプロは、
演劇経験が浅い人でも舞台に立つことができる【ツール】ではある。
実際にインプロショーでは、
人生初舞台がインプロのショーである人も多い。
サンフランシスコでは
”Sunday Player"という、通常は舞台とはまったく無縁だが
日曜日にステージに立つプレイヤー達もいる。
それだけ、インプロが作る空間というものは、
観客にとっては魅力的である。
ただ、ここで大事なのは
”インプロさえすれば、観客が喜ぶ”という誤解の罠に
はまってしまう恐れがあるということである。
たしかに、インプロでつくられるシーンには
エネルギーや笑いや楽しみがある。
インプロのワークショップは
ほんとうに参加者のエネルギーに満たされているのが多い。
しかし、ショーとなると、”観客”の存在は不可欠である。
やはり、【舞台の上から立って、お客様に伝える】という部分を
演者がちゃんと意識していないと
インプロのショーとしては成立しない。
とはいっても、
【舞台の上から立って、お客様に伝える】といっても
そんなに特別な技術やスキルを得ないと
舞台の上に立つ資格がないというわけでもない。
ただ、これらの技術に少しでもケアすれば
さらに観客の方々と共に、魅力的な空間にいることができる
ということである。
では、ケアの仕方だが、
それこそ事細かく書くと、
演技論そのものになってしまう。
なので、簡単なモデルで考える。
簡単なモデルとは
「演技技術」を【入力】・【処理】・【出力】と分解してしまう。
空間や詩情を把握する感覚や、セリフや実体験を記憶する【入力】 。
キャラクターと状況を理解して、感情を励起する【処理】 。
そして【出力】にあたる部分が
「言葉」と「声」と「身体」の3要素である。
【舞台の上から立って、お客様に伝える】時に
これらのモデルがどのように機能していて、
どれがうまくいっていなかったか?
こう考えるだけでも、
次につながる気づきを得られる。
「見えない未来に向かい続ける」インプロでは、
どうしても、無意識のうちに安全である【自分の癖】に頼りたくなる。
しかし、【自分の癖】に頼りすぎると、
それは予定調和になっていく傾向がある。
なので、常に、稽古で、ショーで、
自分の癖に気づくべく、
これらのモデルで自分をケアしてみませんか?