過去のメモを掘り返していたら、
以前、大学の後輩の芝居観に行った時のメモがでてきた。


新人公演の初通しを観に行った時のメモ。

そう、新人である。
大学に入って、初めて演劇をはじめた人達のお芝居。

しかも初通し。

いろいろな事が演者の中で起こるのがみえた。


それはつまり、
演劇を知らないインプロバイザーがよくやりがちな事でもある。

舞台を観ながら、彼らからいろんな事を学んだ。

「何が私たちを不自然にしていくか」


なまじかキャリアを積むと、
変な技や癖で誤魔化すことをおぼえてしまうだけに、
この点を教えてくれる彼らこそ、本当の意味で先生である。


間違っても
「何故できない!」とか「下手くそ」と非難してはいけない。
できないのは初心者にとっては当たり前。誰だって初心者を経験している。
また、彼らは初心者を恐ろしく上手にやっている。
下手くそなんかでは決してない。
これは誉め殺しや当てこすりではなく、
真剣にそう思っているし、感謝している。


・セリフ、行動の後に感情がついてくる。
 実際は感情があるから、セリフ、行動が出てくる。
 そして、その感情を励起するものが何かを感じる必要がある。
 インプロでいえば、アイデアの後に感情がついてくるようなもの。
 実際は感情とかに押されて、目の前にあるものに反応して、
 アイデアが出てくるのが、spontaneous(自発的)なインプロである。


・「殴る」「蹴る」などのアクションは、
 「殴る側」よりも「殴られる側」がリアクションすることで見せる。
 なので、殴る方は相手がリアクションしやすいように
 大きくタイミングをとりやすいように見せる必要がある。


・2人が舞台の上で会話しているシーンになると、
 舞台下手(観客から観て左側のエリア)に立つプレイヤーは、
 つい右足を出してしまい、観客に背中を向けてしまっている。
 そうすると、顔が客席側から見えづらくなり、表情まで見えなくなる。
 プレイヤーにとっては不自然でも、
 できれば身体を前に開いて観客に見せた方がいいし、
 いい演技をしていても伝わらないのではもったいない。


・シーンとシーンのつなぎめの処理を丁寧にしないと、
 いきなり「ブツッ」と観客の緊張が切れてしまい、
 それまでに高まっていた舞台への集中や高揚が
 また振り出しに戻ってしまう。


・手にしている小道具が、その人にとってどのようなものかによって、
 その扱い方(距離、力、バランス、速さなど)をいい加減にすると、
 観客はすぐに役者の嘘と見破ってしまう。


たしかに、インプロには正解はない。
正解とは、
「あるべき姿」と「いまある姿」が合致したものである。

しかし、インプロには「あるべき姿」はない。
「その場、その瞬間」で、「在る」ものは変化し続ける。

だから、インプロには正解はない。


しかし、「あるべき事」は変動しても、「やるべき事」はある。

それは、観客とともに在ること。

そのためにも、観客の想像力をスムーズに働かせるための仕事は

舞台の上の演者であるインプロヴァイザーは心がけるべきだと思う。


だからこそ、自分の力に慢心せず、

初心者からも大いに学ぶことが必要がある。


だって、はじめてインプロを観る観客は、

まぎれもなく最強の初心者なのだから。