「インプロ」というのは、定まった形をもっていないので、
それについて語るというのは、かなり難しい事です。
なので、まずはいろいろ「イメージ」で語ってみることにします。


私の中で「インプロ」を行っている時には
2種類のイメージがあります。

それが
「建築的インプロ」「医療的インプロ」 です。


「建築的インプロ」ってのは
スタートとなるイメージ、言葉をもとに
さまざまな部品をまず生成していき、
そしてそれをくみ上げていき、最後に完成させるというもの。

シーンを進めていく中で、最終的なゴールのイメージを
プレイヤー間で共有して創り上げていく。
もちろんプレイヤー間のゴールイメージは必ずしも一致しないから
どこかでひずみが生じたり、リカバリが機能したり、
もしくは無理矢理な欠陥工事も発生する。


また、あるインプロヴァイザーがいい例えをくれたが、
この建設中の建物が崩壊していく様も、観客は笑いとしてとらえるので、
時々意図的もしくは崩壊の快感を求めて破壊活動にいくプレイヤーもいる。

私がインプロを始めた頃も、この「建築的インプロ」のイメージでした。


これは、台本芝居の演劇経験もあって、
演劇的な作品をつくりあげる場合、往々に建設的にしてくみ上げていくので
その方法を無意識のうちに選択したり、安心を得たりしていたせいもあるでしょう。


でも、最近この「建築的インプロ」がつまらなくなってきました。
(あ、あくまで私が演じている中でですよ。
 他の方の演じているインプロを指してはいません )


なぜかというと、
「この建物をつくるために、この部品を(用意)する。
 この組み立て方をしたら、次はこの組み立てをする」と
インプロをやっていながら、どこかで予測をして、
その予測を実現することをインプロの表現と勘違いしていないかということです。
ある程度経験をつんでいくと、この作業はリスクが減っていきます。
または、5秒先とか3分先の展開のために演じているので、
その間はインプロではなく、予定調和になっていないか ということです。


これは
インプロの美しさは、「見えない未来に挑む姿」だと思うようになってから
特に実感するようになりました。
お客様を驚かそうとか、特別なことを与えようとか、
自分はこんなことができますよという自慢やエゴじゃなくてね。


さて、今回提案する「医療的インプロ」


スタートとなるイメージ、言葉を「患者さん」と考える。

まずはこの患者さんについていろいろ観察、診察する。
「どこが悪いの? 症状は? いつから?」
患者さんに対して、直線的、曲線的、具体的、婉曲的、抽象的 など
さまざまな接近方法でその状態を把握する。

そして、そこで得たことから治療をはじめる。


これだって様々な方法がある。
ここで、「建築的インプロ」とあきらかに違う点は
ここからのプロセスはゴールの具体的なイメージはない。
目的としては「患者さんが健康になる」ことではあるが
それが必ずしも患部の治療だけとは限らない。
頭痛がするから頭痛薬という対処療法ではなく、もっと根幹的な治療かもしれない。
もしくは肉体的な問題ではなく、精神的なものや生活面からかもしれない。

「建築的インプロ」でありがちなケースは
どんな患者さんが来ても、サイボーグボディを用意して、
「これであなたは健康です」としてしまうケース。
確かに問題解決に見えるかもしれないが、
だったら最初のイメージや言葉はなんだったんだろう? になってしまう。
いかにプレイヤーと観客の間で「健全なやりとり」ができるか?
ゴールイメージのためにプレイヤーが無理をして
患者さん(観客)の身体にダメージを与えたり、不安にさせては
あまり健全な状態とはいえない。


ひとり即興でいろんなイベントを回っていると
お客様から「お題」をもらうという行為が
「お客様の人生の一部を紹介してもらう」という行為に思えてきた。
だから、やはりその人生をないがしろにしてはいけないので
真摯に向かい合いたいし、お客様と健全な時間を過ごしたい。


で、この「医療的インプロ」ってことを目標にした瞬間、
私にはますます多くの課題がでてきた。


「人間を知る」ということ


「医療的インプロ」の診察・治療のプロセスは
つまりは人間の営みを身体的、精神的、社会的により多く理解した上で、
その場、その瞬間で最適な方法を選択しなければならない。
しかも、その方法の結果は必ず約束されているものでもない。
まさに「人生の生き方」そのものになってくる。


なんか大変なイメージを持ってしまったもんだ。

最初に言ったとおり、これはあくまで私のイメージであって、
もしかしたらものすごくとんちんかんな事を言っているのかもしれない。

でも、いまのところ、これが一番 自分の中でしっくりきている。
しばらくはこういう感じで、インプロ道を進むと思います。


目指せ! インプロ界のブラック・ジャック!!


ん? そんな高いギャラ払えるほどの腕じゃないわね。

あ、「インプロ界の赤ひげ」でいいです。
もしくは「インプロ界のドクトル・ノンベ」(まんなやな。。。)