100年ほど前に活躍した神秘思想家のルドルフ・シュタイナーは人間の身体には五感を越えた高次の七つの感覚があり潜在的なそれらを引き出すことで、人は霊的に成長できると提唱しました。
五感と七つの感覚で、合わせて12感覚。
これは12星座と対応していて、12の感覚を磨くことは、12星座意識をひらくことにつながります
この12感覚について、個人的に、占星術的な視点から考えたいと思います。
ひとつめは低次の、わたしたちがもっとも最初に獲得する感覚である【触覚】で、これは『天秤座』と関係しています
『触覚が信頼を育てる』
触覚はわたしたちの全身の表面の至るところに存在しています。
口や鼻や耳や喉や性器や肛門等、一部は身体の内でも感じます。
わたしたちが胎児で母体にいた頃に触覚はありませんでした。
羊水のなかでわたしたちは母とどこまでもひとつであり、境界のない母子一体とした世界のなかで命が育まれていたのです
いまでも、お風呂やプールや海などに全身を沈めると、だんだん自分と水との境界がなくなっていき、当時のワンネスワールドを再体験できるかも知れません。
わたしたちの初めての触覚体験は産道です
産まれ出ずる道程でわたしたちは初めて、全身で母の身体を感じます。それは初めて触れる『自分以外』の世界
もし、いま、わたしたちがなにかに触れてみると。
触れた『もの』を感じると同時に、触れている『指先』を感じるでしょう。
手のひらをそっと壁に押し当てると、壁を感じ、手のひらを感じ、壁と手のひらのあいだにある境目を感じるかも知れません。
しかし、そのまま壁に触れ続けていると、だんだん壁と手のひらとが、ひとつに溶け合うように、壁と手のひらと境目を感じなくなるでしょう。
安楽椅子やソファの背もたれ、ぬくぬくの布団や、温かなお風呂など、そういったものに一定時間接触していると、自分とそれのあいだに、一体化した世界が生じます。
触覚は触れることで『あなた』を感じさせ、ついで『わたし』を自覚させ、さらにそのあいだに横たわる境界を感じさせるもの。
そしてまた、短い逢瀬のなかに、一体感を与えてくれるもの。
わかれていて、くっつくもの。
その両極をつなぐものが触覚であり、天秤座なのでしょう
ずっと、ひとつでありたい。
つながっていること…それは深い安心を呼び醒ます。
だけど、ずっとつながっていることはできない。
わたしたちはおたがいが個として、独立している存在だから。
個でありたい。
だけど同時に、世界とひとつでありたいと願うパラドックス。
天秤座はその両極のはざまで絶えずゆらゆらと揺れ続け、不安と安心のあいだを行きつ戻りつしながら、自分と世界とのあいだに信頼の橋をかけるサインなのでしょう。
わたしたちが世界を信頼し、安心して他者とつながるために。
人間関係が苦手だったり。
パワーゲームに陥りやすかったり。
恋人に振りまわされたり。
そんなときは触覚を鍛えることが近道なのかも知れません。
『触覚が信頼を育てる』