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夢物語置き場

自分で作った夢物語を適当に載せていくブログ
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何もない、これといったイベントもないある日、私にプレゼントが贈られてきた。


「Hello!僕の愛おしい人!君にこの箱の中身を全て捧げよう!ぜひ受け取っておくれ!」


私の背丈の半分はあるであろう、綺麗に包装され、リボンをかけられている大きな箱と一緒に送られてきた手紙にはそう書かれていた。
送り主は不明。こんな気障っぽいことをするような人は知り合いに心当たりがないし、そもそも私を愛おしく思ってくれている人なんて存在しない。なのに宛名にはしっかり私の名前が書かれている。
明らかに不審物、私を嫌っている誰かが嫌がらせに送ってきた可能性があるし、中には何が入っているのか見当もつかない。
もしかしたら爆弾が入っていて、開けた瞬間に爆発してしまうかもしれない。いいや、この大きさだ。中に人が入っていて私が開けるのをナイフを持って今か今かと待ち構えているのかもしれない。
そんなことをひとしきり考えた後、私は首を横に振った。そんなことはありえない。私は殺されるほど誰かに恨みを買った覚えはない。
本当に普通のプレゼントだとして、誰が、何の為に、なぜ送ってきたのだろうか。
ひたすらにそんなことを考えていると1つの好奇心がむくむくと湧き上がってくる。


好奇心の中身はもちろん、「この箱の中身を見てみたい」だ。


この気障っぽい文章を書いた人が贈ってきたプレゼント、中身が何であれ私は驚く自信がある気がしてきた。
好奇心を抑えきれなくなった私は箱のリボンに手をかけ、少しの恐怖に一瞬ためらったが、そのままリボンを解いた。
するり、と小さな音をたてながらリボンが落下していく。それを見届けた後、一度深呼吸をし、包装を破り捨てた。
バラバラと部屋の中を綺麗な包装紙の破片が舞う。破れた包装紙の間から真っ白な箱が姿を現した。
私は包装紙を破り捨てた後、間髪入れずに箱を開けた。
中にはひと回り小さい同じような白い箱と、その上に数枚の紙が置かれていた。
箱の中に箱、マトリョーシカオチかと驚く自信があったにもかかわらずあまりの典型的なオチに落胆してしまった私は数枚の紙に手を伸ばした。
紙は数枚の写真と1枚の手紙だった。


「プレゼントには驚いてもらえたかな?喜んでくれてたら、嬉しいな!」


手紙を読み、写真を見る。写真にはどれも小さな男の子が写っていた。
この男の子はいったい誰なのだろうか、もしかするとこのプレゼントを贈ってきた人なのかもしれない。
小さな男の子はどの写真でも満面の笑みをこちらに向けていた。その笑顔は見てるこちらも和んでしまうくらい幸せそうだった。
すべての写真を見終え、箱の中に入っていた箱に手を伸ばす。まだ、他にも何か入っているのかもしれない。
箱を開けると中には先ほどと同じように真っ白な箱の上に数枚の写真と、1枚の手紙が置かれていた。


「写真に写っているのは僕だよ、気に入ってくれるといいなぁ、なんてね!」


写真には2、3歳ほど成長した男の子が友達と遊んでいるところが写っていた。
やはりこの男の子は送り主なのか、自分の考えが当たり上機嫌になりながら私は写真を見た。
男の子は楽しそうに友達とサッカーをしている、その表情はとても幸せそうだった。
写真を床の上に置き、次の箱を開ける。
私はどんどん箱を開け、手紙と写真を見ていった。
写真の中ですくすくと成長していく男の子、大きくなっていくごとに表情もころころと変わっていき、私の心を躍らせた。


「このときの僕は自転車に補助輪なしで乗れるようになりたくてね、必死に練習してたんだ」


「このときに僕は近所のおねぇさんに初恋をしてね、まぁあっさり玉砕したけど!」


「僕は体を動かすの好きだったから、いろんなスポーツしてたんだ」


手紙の内容も写真の成長に合わせて多くなっていき、私は彼についてどんどん知ることができた。
家族はお母さんとお兄ちゃんとの三人暮らし、お父さんは他界。誕生日は8月24日で血液型はA型。
運動が好きで読書は少し苦手で、初恋のお姉さんに振り向いてもらうために読書をはじめてみたけれど、結果は失敗。
中には暗い内容やそのときにあったどうしようもない悩みなども記されていて、彼の心の内側まで知っていった。
彼を知るたびに小さくなっていく箱とは反対に、彼に対する想いは強くなっていった。
彼をもっと知りたい、彼と会ってみたい、彼と話してみたい。
その想いは好奇心を越え、知識欲を越え、愛情に変わっていた。
私は、見ず知らずの、一度も会ったことのない人に、恋してしまっていた。


箱を開け、彼を見て、彼を知る。それを何度も繰り返し、ついに箱の大きさは写真と手紙が入らなくなる寸前の大きさになってしまった。
写真の中の彼は成長し、私より少し上の歳になった。
箱を開けて中を覗く、小さな箱と、今まで入っていた数倍の量の写真と手紙が入っていた。
私は手紙を後回しにし、写真を見た。
前の写真の中に成人式のときの写真が入っていたので、おそらくそれの2、3年経った彼なのだろう、大人びた彼がカメラに向かって微笑んでいる写真があった。
そんな彼を見てときめきながら他の写真を見ていく。そして1枚の写真を目にし、驚愕した。
彼が大学の卒業式に撮ったであろう集合写真、そこには私の姿が写っていたのだ。
彼と少し離れてはいるが確かに自分が彼の世界に、写真の中にいる。
冷静になるために一度深呼吸をして写真の風景に見覚えがないか考える。
……あった、あの時だ
その日の私は高校のときに仲の良かった先輩からの頼みで大学の卒業式に顔を覗かせていた。
そこで卒業したての先輩に会い、話しているときに集合写真を撮るといわれ、私は半ば巻き込まれ、写真に写ったのだ。
その時に、彼もあの場にいたのだ。
呆然としていた私は我に返り、手紙を読んだ。


「このときの僕は大学を卒業したんだ、先に写真を見ちゃったのなら気づいてるかもしれないけれど、僕はあのとき君に出会った。
そこでね、一目惚れしちゃったんだ、でも君は同じ大学ではなかったようだし、あの集合写真もたまたま居合わせただけのようだったから叶わないかなって諦めていたんだ。
でもね、ある日僕が外を歩いていたらなんと君に出会えたんだ!僕嬉しくて話しかけようとしたけど途中で怖気づいちゃって、しょうがないから家までついて行ったんだ!
家がわかればまた会えると思ったからね!家がわかってからは毎日君の家の前に通い続けたよ、君に会えるのが毎日の楽しみでさ、君は気づいていなかったようだけど、僕はそれでよかったんだ。
良かったはずだったんだけどね、僕、君に知ってもらいたくなっちゃったんだ、どうしても。僕はここにいるよって、君をずっと見ているよって伝えたくなったんだ。馬鹿だよね、気持ち悪いよね。
だけど僕、どうしても君に僕のことを知ってほしくて、このプレゼントを考えたんだ。さぁ、次で最後だよ、喜んでくれると嬉しいな、僕はずっと、君を見守ってるよ。愛してる」


唖然としたまま私は動けなくなった。
この人は、ずっと私の近くにいたのだ、いてくれていたのだ。
私が気づいていなかっただけで、なんて馬鹿なんだ私は。
彼は私をずっと愛してくれていたのだ、あの日、あの時、私を一目見たときから。
私はそれに気づかなかった、気づこうともしなかったのだ。
急いで部屋の窓を開けて外を見た、必死に探したが彼らしい人影はどこにもない。
ふと、私は手に握っていた箱を見た、手紙の彼は言った、「これで最後だ」と。
箱を開けた、中には今までの箱とは違う形状の箱が出てきた。
その箱を取り出し、開ける。
中には小さな手紙と真っ白な指輪が入っていた。
手紙を読み、驚き、少し微笑む。
そして私は指輪を左手の薬指にはめ、窓から外に向かって手を振った。


「その指輪は僕の左手の薬指の骨で作った指輪なんだ、僕と結婚してください。」