全国制覇を目指しているとはいえ、行きたいところには行きたい。
高野山もそういう場所のひとつ。
高野山には高野七口と呼ばれる七つの入り口がある。
町石道はその中で最も有名でよく使われた参詣道だ。
今は全長25キロのハイキングコースになっている。
電車とケーブルカーを使えばなんばからおよそ2時間で到着できるところを
わざわざ町石道を歩こうと思ったのは
自分の好きな時代小説に出てきた場所だからということ以外はなく
きわめてミーハーな動機だ。
さて今回の旅程は
東京駅から夜行バスでなんばへ
なんばから南海電鉄で九度山へ
九度山から町石道を歩いて高野山へ
奥の院詣でから高野三山、女人道へつなげ
金剛峰寺と大伽藍を拝観
南海電鉄でなんばへ降りて
空港シャトルバスを使って伊丹へ
飛行機で羽田へ
という二泊三日。
今回利用した夜行バスは出発地に待合ラウンジがあり
テレビを見たり仮眠したりマッサージしたりと
待合時間もゆっくり過ごせることが売りのバス会社。
バスも3列独立でカーテンの仕切りがあったり
脚用枕があったり安いのに至極快適なバスだ。
数時間置きにSAに停まって外に出る毎に気温が低くなるのを感じながら
無事なんばに到着。
到着地にもラウンジがあってトイレを使ったり
電車が動き出すまでゆっくりしたりもできるが
私はそのまま地下鉄へ。何しろ1日目の工程は長いのだ。
なんば駅の中をうろうろ。何しろ平日の出勤時間帯。人が多い・・・。
とりあえず予定通りの電車に乗った。
快速急行というのに乗った。普通運賃で乗れるが
特急と30分程度の時間差で目的地に着く。
九度山駅は小さな駅。
もしもう一泊する余裕があれば
真田庵などの見所をしっかり見学してからここで民宿に泊まって
翌日早朝すぐに町石道を歩き始めることが出来るのだが。
朝8時半九度山駅をスタート。
順調に歩ければ18時ころには高野山に着ける計算だ。
しかし何しろ方向オンチ。しかも慣れない土地で道もわかりにくい。
どうやら同じ目的らしい人の後ろにくっついて歩いたり
たま~に行き会う地元の方に道を聞きながら
ようやく町石道の出発地点に立ったのは9時過ぎ。
地図を片手に町石を探しながらひたすら歩く、歩く、歩く。
町石道はまちいしみちと読む。
その名の通り、町石が並んでいる道だからそういう名前らしい。
町石というのはおよそ109メートル毎に道に建てられている石で
一町、二町、三町・・・・・という具合に全部で180基建てられている。
ただしスタート地点は高野山なので参詣道の始まりは百八十町ということになる。
石はただの長方形ではなく擬菩珠のような造形がされていて
一番上に梵字、その下に何番目の町石かということが彫られている。
最近再建されたのかと思われる新しくて綺麗なものから苔生して古色蒼然たるもの
明らかにそれとわかるように建っているものもあれば半分地中に埋まっているものと様々だ。
彫られた梵字は一つ一つ全て違っていて其々が○○菩薩を意味する字なのだとか。
嘗ては石に行き会うたびに拝んで歩いたそうだが
今でも信仰心の厚い方はそういうことをするのだろうか。
平日ということもあってか町石道を歩いている途中では誰にも会わなかったので
確認する術もなかった。
折りしも晩秋。紅葉が一通り終わって山道は落ち葉でふかふかだ。
標高が高いこともあってか空気は冷たいが動いている身には風が気持ちいい。
さてさて町石道。ハイキングコースになっているとはいえ
それほどわかりやすい道ではない。
高野山の修行僧なら3時間で往くという道でも
あちこち写真を撮ったり道に迷いながら進む道のりはなかなか捗らない。
およそ半分の六本杉峠に着いたのがちょうど正午。
地図によるとここから高野山までの標準所要時間は5時間以上。
私のペースだと遅れること1時間半程度だろうか。
山の中で日が落ちてしまってはにっちもさっちも行かなくなってしまう。
残念だがここは電車に譲ることにして寄り道してから下山することに。
寄り道先は丹生都比売神社。
ここで遅めの昼ごはん。
外国人を見た。実はこの外国人、同じ宿坊に泊まることになる。
よく晴れた11月の日。七五三のお参りをしてる人がいた。
会話を漏れ聞いたところ、高野山までお詣りに行くとのこと。
このあたりの人にとっては普通のことなのだろうか。
私にはなんだかとても特別なことのように思えた。
下山道。
ものすごい急な坂道。
しかも地元の方の生活用路のため
車で行き来が出来るようにコンクリートで舗装されている。
落ち葉でふかふかの山道とは打って変わって足への負担も大きい。
それでも何とか南海電鉄の乗り場に到着。
下古沢駅。
3時前に着いてゆっくり電車が来るのを待つ。
一日の本数が東京の朝のラッシュの1時間分程度の本数だ。
通過する列車を見送るのも駅員さんの仕事らしく私が待っている間に
も何度か駅舎から出てきて旗を振っていた。
小さな駅だが駅員さんは何人も居た。
私と話をしてくれた駅員さんは息子さんが東京で弁護士をしているとか。
東京は震災の影響はどうだったのかなんて話をしているうちに電車が到着。
陽のあるうちに宿坊に到着できた。
標高は900メートルちょっと。寒い。
宿坊。
初めての利用だ。
要はお寺に止めてもらうということ。
特別なことといえば食事が精進料理であることと朝の勤行があることくらいだろうか。
あとは不便な宿とそれほど変わらない。
ただ、宿坊も様々で高級旅館並みの設備やサービスを整えているところもあれば
木賃宿のようなところまで。
もう二度とあそこには泊まりたくないと言われてしまう宿坊もあるそうだ。
高野山内には50箇所を超える宿坊があるらしい。
山ということもあるだろうがやはりピークは夏。
紅葉のシーズンといっても大阪や和歌山からの日帰り客の方が多いらしく
泊り客は少ないのだとか。
大手の旅行代理店と組んで集客するところ
インターネットを活用して集客するところ
全国の縁のあるお寺からの斡旋で客を受け入れるところなど様々。
お庭自慢、温泉自慢、文化財自慢、精進料理自慢などなど売りもそれぞれ。
長い長い一日が終わる。
明日はいよいよ奥の院だ。








