宇宙は呼吸している.移り変わる。相手が変わると同時に自分も変わる。その変化の一瞬を行動でつかみ取る。これが知恵、つまり般若波羅蜜多なのである。人間は元から仏なのである。

男女の愛欲はもとから清らかなのである。

とすれば、愛欲を汚れた罪悪として捨てようとすることほど、大きな罪はないといえるだろう。

理趣経はこのように説いて、密教のテーマは男女二根が交合し、身体の全欲望が満足して、初めて仏というものが成り立つとする考え方であることを明確にするのである。言い換えれば、密教は人間肯定、人間讃歌の宗教である、ということができる。そしてこの宇宙観は視覚的には曼荼羅に表現されている。

すべてが変化する中で、一点に切り結んだ人生を何よりも大事なものとして、日々の行動こそ光り輝いているのだと確信し、菩薩の境地を体感していきたいものである。


                          ー空海の人間学ー