あなたは誰ですか？

「あなたは誰ですか？」

もしも、そう質問されたら、何と答えますか？

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まず名前を言うかもしれませんね。

「うっかり八兵衛です」みたいに。

「あっ、でもこれは通称で、本名は山田八五郎です。

出身は、山形です。

うっかりモノなので、みんなにそう呼ばれています」

「佐川急便でセールスドライバーやってます」

「家族は妻と子供が一人です」

「年齢は２６歳です」

「将来は、佐川で稼いだお金を元手に、小さい居酒屋をやるのが夢です」

自己紹介するとしたら、こんな感じかもしれませんね。

でもここで言ったことが、あなたそのものかというと、もちろんそうではない。

あなたは名前ではない。

出身地でもない。

あだ名でもない。

職業でもない。

家族構成でもない。

年齢でもない。

夢でもない。

あなたはそのどれとも＝（イコール）ではない。

それはあなたにまつわることであって、あなたそのものではいない。

あなたは決してそんなものじゃない。

じゃあ、一体何なのか？

誰なんだ？

何者なんだ？

だいたいあなたは名前がつく前から存在していたはず。

本当はあなたって誰？

ここまでで、何だか怖くなってきたとしたら、いい兆候です。

エゴは、あなたを他者とは別個の何者かであるかのように思いたがります。

それをアイデンティティとか言ったりもします。

パスポートとか、免許証とか、身分証明書によって、私はこういうものであると証明されたような気になってきたかもしれませんが、実は、それすらも何も表してはいない。

単にあなたにまつわるデータとあなたの写真を一緒にした紙に過ぎない。

どんな表書きも、実は何も実体を表していないのだという真実に気づき始めると、「自分」というものが消えていくようで、怖くなるのです。

とても心許なく、頼りなく、不安になる。

まるで自分が誰だったか完全に忘れてしまった記憶喪失の人みたいに……。

一方で、不思議と自由を感じる人もいるかもしれません。

自分は名前でも、肩書きでも、出身地でも、学歴でも、経歴でもない。

賞罰でも、資格でも、職業でもない。

もちろん、人がこういう人と言っている「こういう人」でもない。

生まれてからいろいろなことを経験し、人にいろんなことを言われ続けて、ずっと自分はこういう人間だと思ってきたが、それは全部後付けであって、本当の自分を何も表していない。