エリートコースから外れていてよかったのかも

おはようございます。

今大阪から戻る新幹線の中です。車窓から赤や黄色の鮮やかな紅葉が見えます。春にはいろんな花が咲いて、世界が彩られますが、秋には紅葉が深みのある色彩を添えてくれています。どの季節もそれぞれに好きですが、秋もいいなあ、やっぱり。

さて、先日面白い記事を見つけました。それは生命科学の研究者のインタビュー記事で、筋肉の収縮のしくみについて書かれたものでした。人間の筋肉にはアクチンとミオシンという二つのたんぱく質分子があり、アクチン繊維の上をモーターの役割をするミオシンが動くと、筋肉の収縮が起こります。

この筋収縮が起こる際のアクチンとミオシンの動きは、ノーベル賞受賞者らが提唱した、ＡＴＰというエネルギー物質１個につき、四分音符のような形をしたミオシンが首を一回振り、ミオシンの頭が歯車のようにアクチン繊維の上を動くことで起こるというのが定説でした。

けれども、この学者さんは、人間の体がそんなに機械的なものなのだろうかと疑問を持ち、１０ナノ（１億分の１メートル）の大きさのたんぱく質分子を直接観察しようと思い立ったのだそうです。そうは言っても、それだけ微細なものを観察するということは、当時は無理だと言われ、困難を極めました。しかし、高感度カメラやレーザーなどを駆使し、とうとう直接観察に成功したのです。

すると面白いことが分かりました。アクチン繊維の上を、ミオシンは機械的にはきちっとは動いていなかったのです。ふらふらふしながら、なんとなくこっちかなあという方向に動いていくだけだったのです。

たとえば、脳が「コップをつかめ」という命令を出したら、「右にどれだけ進め」などという命令は出していないのです。それはミオシンが自分でふらふらふ動きながら、いろんな可能性の中で、いい方向を探して出して決めていました。

ということは脳がすべて命令しているのではなく、小さなミオシンという分子さえもが、自分でふらふらしながら最善を探しているということなのです。

人間の体はそんな風に分子レベルでも、模索しながら選び続けるようにできているということなのでしょう。つまり、誰かがこうしなさいと言ったことをただただやり続けるのが人間の本来の姿なのではなく、ふらふらしながらも、自分で進む道を見つけ出していくのが人間の本来の姿だといえるのかも知れません。

この学者さん自身も、当時花形産業だった電機メーカーの半導体開発の世界からドロップアウトし、謎が多くて新しい概念を作れそうな分野に挑みたいと大学に戻った「変わり者」だったそうです。

何が人間の可能性を最も引き出し、もっともダイナミックで、面白い人生にするのか、、、。

それは学校や、本では教えてくれない、ちょっと遠回りに見える「豊かな経験」なのかもしれませんね。

世の中で一流といういわれる企業で仕事をして、レールの上を走っているだけでは、私たち人間が持っている可能性は引き出されないのかもしれません。いろんなことを経験している一見ふらふらしている人間の方が、いい方法を発見できたりするのかもしれませんね。そういう人のほうが、ちょっとくらい困難があっても、自分で考えて、乗り越えていけますからね。