「闘争・逃走反応」とは、
そもそも動物が危険を感じたときに自動的に戦うか逃げるかを選ぶ反応。
これは、弱肉競争の世界では生き残るにはなくてはならない脳の仕組みです。
人間にも同じ仕組みが備わっています。
車がぶつかりそうになったり、人に怒鳴られたり、人前で緊張したりすると、
心臓がドキドキしたり、体がこわばるのは、私たちの体が「今、危険かもしれない」と感じて、
戦うか逃げるかの準備をしているからです。
このとき、脳の中では「扁桃体(へんとうたい)」という部分が危険を察知して、
体に「準備しなさい!」という信号を送ります。
すると自律神経のうちの「交感神経(こうかんしんけい)」が活発になり、
心拍数が上がったり、呼吸が速くなるなどの様々な変化が起こります。
これはすべて、命を守るための不可欠な反応なのですが、
問題は、その反応の最中、私たちの体の一部の機能が低下することがわかっています。
例えば、「闘争・逃走反応」が夫婦喧嘩の最中に起こると、
相手の言ったことが明確に聞こえなくなったり、
相手の表情を覚えていなかったり、記憶の詳細がおぼろになったりするのです。
よくクライアントに説明する際に使う例は、サバンナでシマウマがライオンの攻撃を察する時、
シマウマの体では不思議なことが起きます。
その瞬間、生き残るにはいかに早く走るかだけが大切な為、一部の臓器が一時的に機能低下。
全てのエネルギーが、走る為の能力に集中するそうです。
だから喧嘩ってなかなか解決できないことが多いんですよね。
いくら伝えてもわかってもらえない。
夫婦間だと、問題が解決しないまま諦めてしまうことが多いかもしれません。
そして未解決な問題が関係の亀裂となり、段々と関係が冷え込んでいく・・・。
カップルカウンセリングでは、二人が「闘争と逃走」のどちらを選ぶか、自分で理解することから始まります。
そして、その瞬間、自分の体にどんな変化が起こっているか察知し、
深呼吸やリラクゼーションなどを活用して脳の働きを落ち着かせる術を学ぶことが鍵です。
この第一ステップを乗り越えると、驚くほど関係は改善の傾向となります。
今月カウンセリングを始めた40代のカップル。
2回目のセッションでは、二人とも「闘争・逃走反応」が始まり、喧嘩に熱が入って時間終了。
でもそれが応えたのか、二人とも真剣に自分の反応に取り組み始め、
3回目のセッションは二人とも別人のように穏やかで、抱き合ってお互いを慰めるような仕草まで見せ、
あまりの変化に私自身も唖然としました。
これまで何百ものセッションをカップルとしてきましたが、
あまり例がないほどの彼らの真剣さに、頭が下がる思いでした。
一方で、この大事な第一ステップをいつまで経ってもマスターできないカップルも残念ながらいます。
その場合、大体相手を責めて、相手が全ての問題のように語り、終いには私に矛先を向けるようになり、
全く成長なくやめてしまう人もいます。
カップルカウンセリングは、相手を変える場所ではなく、
関係の難しさに直面することで自分の弱さが見える良い機会。
自分の弱さに向き合って、取り組む勇気や謙虚さを持つクライアントさんは、
関係だけでなく、個人的にも成長を遂げていきます。
でも変わることって決して簡単なことではないですよね。
私自身もそんなクライアントさんから学び、成長し続けていきたい、と日頃思ったりします。