クライアントKとの恋愛についてのセッション。

K「本当は、深く近い関係を築きたかったのに、一回寝て、関係を切ったの。相手が興味を持つと、気持ちが冷めちゃうのよね。」

私「それは本当に気持ちが冷めたの?それとも、関係が近くなってきて、傷つくのが怖くて切ったのかな?」

沈黙。

K「多分、振られる前に振ったんだと思う。」

K「そんな自分が本当に嫌。なんでそんな関係しか築けないのか、そんな自分にうんざり。なぜだかわからない」


産まれて間も無く、孤児院から里親の下に養女として迎えられた彼女。
しかし里親とはうまくいかず、大人になってから縁が切れてしまったという。
なぜか、子供時代の記憶がほとんどない。

彼女とは、過去に孤児院で撮影されたと言う写真を前に、トラウマ治療をした。

当然、記憶はない。ただ記憶はなくても、彼女の脳は覚えている。

必ず脳のどこかに、赤ちゃんの時の出来事が記憶されている。

写真を見ながら、実のお母さんが自分を病院に置いたまま消息をたったことを想像すると、強い孤独感と悲しみが出てきた。

もう二度と会うことのない母との記憶が、感情として残っていた。

トラウマ治療を始めた当時、感情をできる限り避けていた彼女。

「どんな気持ち?」と聞くと、「わからない。」と言うことが多かった。
トラウマ治療を続ける中、硬い表情だった彼女が笑うようになってきた。

明るくなって、笑みが増えただけでなく、涙を流すようにもなってきた。

それでも、生みの母親に捨てられた、と言う事実は、彼女の心に計り知れない深い傷を残していた。

だから、関係が近くなると逃げる。傷つく前に傷つける。

本当は親密な関係を築きたいのに、傷つくなら逃げた方がマシ、と。


私「あなたも知っていることだけど、、、お母さんに捨てられたからじゃないかな」

沈黙。

私「そんな辛い悲しい思いを二度と、したくない。そんなの耐えられない、って思うのは当然だと思うけど。」

ちょっときつかったかな、と思いながらも、彼女との信頼関係があるから受け止められる、と思って言ってみた。

案の定、彼女の中でも納得がいったようだった。

K「その通り。私は里親にも捨てられたからね」

その日、現在関係を築いている男性に対する恐怖にフォーカスして、トラウマ治療を続けた。

結果、自分の恐れ、肉体関係に走らずじっくり時間をかけて関係を築きたい、という正直な気持ちを伝える決心をした。

そんな彼女の表情は晴々していた。

深い深い傷を抱えながらも、真剣に自分に向き合いながら、

一歩一歩前に向かおうとする彼女の姿が誇らしくてならなかった。