彼女は毎日帰りは遅いが、いつも彼のことを想い気遣っていた。
彼女の方が収入が多いことを、彼女は彼女なりに気にしてくれていたのだろう。
日に日に彼は、仕事での愚痴を彼女にぶつけることが増え、喧嘩の絶えない日々が続いた。
当時の彼はカッとなるとすぐ大声を上げてしまう癖があり、その度彼女は黙り込み、毎度の喧嘩はいつも防戦一方の状態だった。
今思えば、彼があまりにも攻撃的に彼女を責めるものだから、彼女は黙る以外の方法がなかったのだろう。
そんなことに気付くまで9年もかかるなんて、本当に彼は大馬鹿者だ。
そんな生活の中でも、夜の営みはしっかり育み、ふたりは確かに愛し合っていた。
記念日にはお揃いのリング、誕生日には二人で旅行。
プレゼントの金額は一定に決めていたのも、彼女の優しさだった。
お互いの休みはバラバラだったが、半年に1回は希望休をとり温泉旅行に行った。
彼女の選ぶ旅館は彼にとっては少々ランクが高かったが、彼は必死に頑張った。
彼女も彼の旅行貯金に協力してくれ、仕事の業界も収入もあまりにも違う二人だったが、
一緒に頑張ってると常に思えた生活だった。
そうして出かける場所は、どこだって最高に楽しく、金銭的になにかと制限のある旅行ばかりではあったが、今思えばそういった旅行が一番楽しく、思い出に残るものばかりだ。
ある休日、彼女は東京に出てきてからたまに連絡をとっていた彼女の親戚の叔父と買い物に出かけた。
夜8時過ぎ、『ただいまー!!』と大きな声が部屋に響く。
何事かと玄関に急ぐと、
大きな紙袋を何個も抱えた彼女がそこにいた。
どうしたのそれ!?
買ってもらったー!
どうやらその叔父はお金持ちらしい。
最近、洋服にはまりだしたようで、都内の洋服店を昼間から回っているのだとか。
彼が働いている店にもちょくちょく通っているようだった。
少し驚いたが、まぁ気にもせず翌日からもいつも通り仕事にむかい、業務に取り組んでいた時、
一台の高級車が店の前に止まった。
ん!?
出てきたのはいつもご来店いただく上顧客のちょっと強面のお客様だった。
いつものようにいらっしゃいませと声をかける彼。
『◯◯◯か!?』
彼は一瞬止まった。
まさか、、、
そう、この上顧客が、彼女の叔父だったのだ。
驚きを隠せない彼を横切り、店のマネージャーがお出迎え。
事情が説明され、あれやこれやと店の2階にある喫茶店に拉致られる。
勤務中だったが、マネージャが承諾。
このころからなんとも強引なお方だった。
自己紹介やら彼女との経緯やら、お父さんに会っている気分だった。
彼女の叔父と店の上顧客という関係の間で彼はこの上ない戸惑いを感じていたのは間違いないだろう。
そして、彼女と3人で食事をすることが決まった。
人気ブログランキングへ
いつも応援ありがとうございます。