収納について

 

お客様と打合せ時によく言われるのは、収納はたっぷり欲しいんですというお言葉。

 

わかります!

しかし、家は収納だけじゃないので。。。

 

最初はなんとなく聞き流して、プラン優先(贅沢じゃない)で話を進めます。おおかた方針が決まってくると、収納が足りないと言うコメントがほぼ必ず出てきます。

全く収納がないわけでも、特別収納が少ないわけでもなく、今までの経験がありますのである程度の量はあるはずなんですが。。。

 

どんなものを、どのくらい、どこに収納したいですか?という問いには、曖昧な答え。。。

最後には、なんでもそこに仕舞えるような量が欲しいと言われます。

 

それって、家全体が収納ってことですか?なんて嫌味の一つも言いたくなる気持ち、

わかります?

 

その上設計が下手だとか、主婦目線に立ってないとか、ハウスメーカーのカタログの

こんな感じのものが欲しいとか。。。

 

頭の中の血管がプチプチと音を立てているのを隠しながら、笑顔で対応ます。

 

使いやすい収納があれば、気持ちのいい住まいになる可能性が高いのは確かです。

しかしそれは設計者だけでは解決できません

 

奥様!あなたのために頑張りますので、ぜひご協力をお願いします。

 

それではそんな使いやすい収納ってどんなものでしょうか?

 

「適切な場所に適切な量」

 

シンプルすぎます?

でもこれができたら結構、気持ちのいい住まいになると思います。

あとは、ご主人とお子さんの躾ですかね。笑

 

では「適切な場所に適切な量」とはどいうことでしょうか?

 

それを説明する前に、主婦の皆さん!出番です。

まず、収納の量を把握しましょう。

めんどくさいですよね、わかります。

でも設計者にはできません。

 

細かくする必要はありません。

家族一人一人について(将来も含めて)

・服がハンガーパイプにかかっているクローゼットの横幅

・下着など引出しに入っているものは、その引出し寸法(縦×横×高)と個数

・大物が入っている納戸の面積

・家族共用のリネンとか、トイレットペーパー、ティッシュ、各種洗剤など

・キャンプ用品、ゴルフバッグ、スキー、スノーボード、ベビーカー、自転車、等の大物

このくらいでも教えていただけると、大変助かります。

ご自身もなんとなく収納量の全体像が見えてきて、安心されるのでは?

 

設計者も一般的な量など経験上知っていることもありますので、

図面に当てはめてみれば極端に足らないということはないはずです。

 

そして、新しい家で、これらをどう収納するのか?

どういった動線になるのかを元に考えます。

 

具体的に何をするのか

さて、ここからちょっと具体的に考えていきます。

以下の問いに対し、ご家族一人ずつ考えていきます。

0.誰が?

1.いつ?

2.何を?

3.どこに?

使い方をより具体的にイメージします。

 

例えば、

0.ご主人。

1.朝出勤前

2.コート

3.どこ?寝室のクローゼットですか?玄関にあるクローゼットですか?帰った時にどこに?

 細かくいえば、バッグ、定期券、ハンカチ、鍵、財布、などなども考えて。

 寝室なのか、書斎なのか、玄関なのか、幾つも考えられますよね。どこにしますか?

 

これをご家族全員に対して行います。

いろいろなシチュエーションで考えてみてください。

 

 

収納は動線上に作る

人の動きに合わせて配置した収納は、動線上にあるので面倒とかわざわざとか言った

感情を持たずにすみます。

家族みんなが自然に片付けられて、部屋が散らかることが少なくなるはずです。

 

玄関

冬の朝、玄関でコートを着て出かけられれば、コートを持って寝室から出てくるよりも楽だし、帰宅時に玄関でコートを脱いでしまえればリビングが散らかることもありません。必ず持って出る鍵や定期券なども玄関に置いておく習慣があれば、たとえ着替えていたとしても朝探さなくてすみます。

 

宅急便などの受取りのために印鑑なども玄関においておけるスペースがあるといいですね。

最近は通り抜けのできる玄関収納が大流行り。

モデルルームは通り抜けができる玄関収納のオンパレード。

 

しかし、家族が玄関収納を抜けて出入りするとなると、今までの玄関は綺麗なままかもしれませんが、ほとんど使わない空間になってしまいますよね。来客のためだけの玄関って。。。?

 

 

リビング

リビングは家族が集まる場所です。TVのリモコン、DVDなどの置き場所、新聞、雑誌、本もいつの間にか集まってきます。本棚とともに文房具をしまう引出しなどあるといいですね。

家族にとって重要な実印、書類(保険証書、権利書、家の引渡書・保証書、機器の取説、竣工図、確認通知書など)もすぐに見られる場所に置いておくといいでしょう。

お子さんが小さければおもちゃの片付けも必要です。

 

キッチン

最近はパントリーをキッチンにつける方が多いようです。

しかし、何を入れるのか考えず大きなスペースを作ったために、

奥のものが取り出しにくく使いづらいとか。

食器類はどこ、調理器具はどこ、と想像しながら、パントリーには

何を置くのか考えましょう。

 

パスタ、調味料、お米、小麦粉、カップ麺、などなど・・・様々なものがあります。

それ自体はあまり大きなものはありません。

 

入れるものに合わせて大きさや奥行きを考えましょう。

例えば、幅90cm高さ180cm奥行15cmの棚があれば、1面で足りる、2面で足りるとか、

伝えていただければパントリーの大きさも決めやすいですね。

 

キッチンで忘れてしまいやすいのが、ゴミ箱。

少なくとも生ゴミ、燃やせるゴミ、不燃ゴミ、ペットボトル、ビン類、電池とか。

せっかく綺麗なキッチンができても、ゴミ箱が出ているのは残念な光景です。

特に生ゴミの処理の手順は、よく考えておきましょう。

 

 

洗面脱衣

洗面脱衣の収納を考える時に、まず最初に考えておくべきことは、洗濯機を

洗面脱衣に置くのか、キッチンの脇に配置するのかをまず決めておきましょう。

最近はキッチン、ランドリー、洗面、浴室を連続させるやり方が主婦の人気を

得ているようで、住宅展示場に行けば多くのモデルハウスがこのようなプランです。

 

そしてさらにここに室内干しスペースとファミリークローゼットなるものを併設する

のが、最先端?でしょうか。

 

考え方としてはいいと思います。しかし、さほど大きな住宅でなければファミリーク

ローゼットに6畳の広さのはいらないと思いますよ。

そんな家族全員の服をここで管理するからと要望もされたこともありますが、

却って使いづらいと思い分散配置で納得してもらったこともあります。

 

洗濯機がなければファミリークローゼットには一般的に浴室で使うリネンのストックや

下着類、パジャマ、など。

 

洗面脱衣には脱いだものを入れるランドリーボックス、当日使うリネン、掃除用具や洗剤類、歯ブラシなどのグルーミング用品でしょうか。

 

洗濯機がある場合は、そこで使う洗剤や漂白剤類、ブラシなどの収納を考えておきましょう。

 

トイレ

まずは、トイレットペーパーのストック、洗剤類、ブラシ、消臭剤など。

特別大きなスペースは入りません。

 

納戸

なんだかんだ言っても、やっぱり納戸は必要です。

キャンプ用品とかちょっとした日曜大工に必要な工具、ガムテープやビニール紐などなど、

揚げ始めればどんどん出てきます。

だからと言って、無限じゃないのよ!納戸は。

 

寝室

ウォークインクローゼットをWICと表記することを知ったのは、2~3年前。

いまではWICがない住宅を探す方が難しいですね。別に悪いとは思いませんが、

寝室が狭いのにそこにWICをわざわざつけますか?

WICは一旦別の部屋に入ってその壁面全体が収納になっているものです。

 

何か気がつきませんか?

中で人が歩く部分にはものが置けないのです。人の動線部分も部屋に取り込んで

いますので、その分余分なスペースが必要になっているのです。同じ収納量であれば、

壁面収納のほうがコンパクトになるということも知っておいてください。

 

収納を考える前にしておきたいこと

暮らしていると自然にものが増えてきます。不思議ですねぇ。

しかしものが自然に増殖するわけでも、押しかけてくる訳ではなく、その家に

住んでいるその家族が意図的?または無意識に増やしているはずです。

 

たっぷりの収納を取りすぎると、なぜかそれを埋めるかのようにものが増えて

くることが多いようです。そこは自制心をもっていただきたいと思いますが、

その前にあまり収納収納と考えることなく冷静に考えてみてください。

 

家造りの本を見てWICだの、玄関収納だの、ファミリークローゼットだのパントリーだの。

それらが絶対に必要で、これがなければ絶対にダメで、これらがある住宅が私たちの夢の

住宅なんです、って思い込まないでください。

収納が欲しいのでしょうか?スタイルが欲しいのでしょうか?

 

「どれだけ収納が欲しいか」ではなく、「どんな暮らし方がしたいか」のかを伝えて

欲しいと思っています。

 

自分たちの暮らしを想像せずに、モデルハウスで見たイメージにとらわれてしまうと

想像とは違ったものになるということはよくあります。

 

モデルルームはイメージ優先で作ってありますので、キッチンだけで1000万円近い

ものを入れている場合もあります。

家の広さも異なりますので、見学時には注意してください。

 

設計者との打ち合わせでは、まず憧れの家のイメージを伝えてください。

ネットで見つけた写真でも、雑誌でも、なんでも構いません。そしてなぜいいと

思ったのかを伝えてあげてください。

 

流行にとらわれず、頑なにならず、素直な気持ちで打ち合わせに臨んでいただければ、

設計者といい関係を築けると思います。

 

そうすれば、いい家ができるはずです。