先生がやめられて
次をひきつがれた先生に
いつもの風邪薬を
もらいに行った。
診察室でみてもらいながら
M先生の静かな笑顔がフラッシュバック。
涙が出そうになる。
新しい先生は
いつもの薬をM先生スペシャルと呼び
丁寧に説明してくれた。
時代の流れにも即したやさしさがそこにある。
そして
敢えてそれを語らなかったM先生。
いつもの薬だから
交わす言葉もほんの少し。
でも
あの瞬間、フラッシュバックした瞳の中に
敢えて言わない姿勢の底にあった優しさに
言葉で言い表せない存在そのものに
私の胸はいたたまれなくなった。
沢山の患者の中の一人にすぎない。
待ち合い室に戻り
主が変わった部屋の空気をありありと感じる。
壁に飾られていた絵は、時々変えられながら
いつも一貫した空気がそこにあった。
その瞳もその絵も
いつもそこにあり
あまりに自然にそこにあって
それが無くなってみて届けられたものに
心が震える。
今、思い出せば
すべては、ここにある。
いのち
とか
愛と
人は呼ぶのかな。
言葉に現しきれない
瞳の奥から届けられたもの。