小津安次郎監督映画「秋刀魚の味」 | michiruの書斎Ⅱ

michiruの書斎Ⅱ

「michiruの書斎」を書いていましたが記事が繋がらなくなりましたので、別に「michiruの書斎Ⅱ」を設けました。管理人は現在79歳になります。現在スライド映写機について、本をまとめています。

    

 

小津安二郎は、『大人の成熟』した世界を描いている。
とにかく、酒を飲むシーンばかり。日本は、ノミニケーションが文化だ。
その酒を飲む中で、交わされる会話が、実に洒脱なのである。
若い女性を嫁にもらった同級生の堀江(北竜二)を、飲み屋のオカミサンを前に、

 

河合(中村伸郎)と平山(笠智衆)は、簡単に殺してしまう。

そして、葬式の算段をする。

笠智衆は、24歳になる娘 路子(岩下志麻)が、家事などをしてくれるので何不自由なかったが、いつかは、嫁に出さなくてはいけないと思っていた。
ひょうたんのあだ名がある佐久間先生(東野栄治郎)の『娘(杉村春子)を便利に使いすぎた』という述懐が、笠智衆の心をゆり動かす。
その日常を淡々と描く中で、日本の人間関係の濃密なつながりを描いていく。
笠智衆のお父さん役が、日本のお父さんの典型なのだろう。
艦長であった笠智は、トリスバーのママさん(岸田今日子)に、先立たれた奥さんの面影を見る。
結婚式の後で、そのトリスバーに行くが、ママさんから『葬式だったの?』
ときかれて、笠智は『そんなものだ』という。
『晩春』は、同じようなシーンとなるが、もうすこし、華やいでいる。
一方で、花嫁姿の娘の父への挨拶は、簡便化している。
のんびりとした生活の中に、日常のさまざまな事象がせめぎあってひとつの物語となる。