不覚だった。
なぜあんなに頭にきたのか。
なぜあんな安い挑発に乗ってしまったのか。
なぜ・・・涙がでたのか。
自分でもわからなかった。
いや、わかりたくなかったのか。
園長室から飛び出した私は、先程案内された自分の部屋へと向かっていた。
あいつに言われた事が図星だったから、自分でも驚くほど感情的になってしまったんだ、きっと。
宗助と離れることが不安でたまらなかった。
なんでだろう。深い繋がりができるほど時間を共にしたわけでもないのに。
だけど彼と一緒にいると妙に心が休まる。限りなく素に近い自分でいられる気がする。
信用できると思った初めての人かもしれない。
それを・・・あいつが茶化すから・・・。グーで殴ってやればよかった。
部屋に着き扉を開けて中へと入る。
扉の鍵を閉めようと思ったが、鍵はついていなかった。
案内された時も思ったが、簡素な部屋だ。
六畳の部屋にベッドと机が置いてある為、かなり狭く思える。
他にはほぼ何もなく、私自身が持ってきた荷物もほとんど何もなかったため、簡素な上に殺風景な、とても女の子の部屋とは思えないものだった。
ベッドまで歩いていき、そっと横になる。
(あ・・・太陽の匂いがする。)
寝転がったベッドはふかふかで、太陽の良いにおいがした。
トントン
扉をノックする音が聞こえた。
「・・・・・・。」
私は応えず、目を閉じた。
「結ちゃん!いるんでしょ?開けてよ。」
宗助の声だった。
追って来てくれたことがうれしかった。
彼なら間違いなく追ってくるとわかっていたが、それでもうれしかった。
「・・・鍵なんてないよ。入れば。」
気持ちとは裏腹に素っ気なく言い放つ。
「いや。結ちゃんが開けて。」
「・・・・・・。」
ベッドから起き上がり、扉を開けてやる。
「・・・!」
宗助だけではなかった。
宗助の後ろに案内をしてくれた日向葵が立っていた。
「・・・何?」
「遠野君に謝るんだ。」
私を真っ直ぐに見てそう言う宗助。
「嫌よ。どうしてあんなやつに謝らなきゃならないの。」
「先に酷い事を言ったのは君だろう。
心ない言葉や行動でどれだけ傷つくか・・・君はよくわかってるはずだ。
だから謝るんだ。
もちろん遠野君にも君に謝ってもらう。」
「・・・わかったわよ。
後で・・・ちゃんと謝る。」
「うん。約束ね。」
安心したように、ニッコリと笑う宗助。
その場しのぎの嘘だとは考えないのだろうか。この人は。
私を・・・信用してくれてるの・・・かな。
「水嶋さん。本当にごめんなさい。
要くんには必ずきちんと謝らせますから。」
日向葵がそう言って謝って来たが、私は「別に・・・あんたが謝ることじゃないでしょ。」と不機嫌そうに言い放った。
「ううん。あの子は私の弟みたいなものだから。私からも謝らせて。」
「弟?あいつあんたにベタ惚れじゃない。
かわいそー。まぁどうでもいいけど。」
「・・・そう見える?」
「え?どう見たってそうでしょ?」
大抵の人があいつを見ればわかるだろうと思える程わかりやすいと思ったが、この女は相当鈍いのだろうか。
「え?遠野くんがどうしたの?誰か好きなの?」
宗助はまったく理解していないようだ。この人はきっと究極にそういった色恋沙汰には鈍いのだろう。
なんだか気が抜けてしまった。
「宗助にはわからない話しよ。
もう帰るんでしょ?
私は大丈夫だから。もう行っていいよ。」
笑顔を取り戻した私に安心したのか、「そっか、じゃあまた明日来るからね。」と言って帰って行った。
これから私はこの場所でやっていけるのだろうか。
幸せになんて・・・なれるのだろうか。
#10へ続く