食後のコーヒーを飲みながら一息つく。
何故かコーヒーだけは目を見張る程の種類が揃っており、選んで淹れたコーヒーはとても美味しかった。
「さて。とりあえず君が住む場所を早く決めないとね。
毎日外で寝てたらさすがに僕の体がもたない。」
「部屋で寝ればいいじゃない。宗助に下心がないことはわかったし。
私が宗助を襲う事もしないからさ。」
おどけてそういう私に、宗助は溜息をついて「そういうわけにもいかないでしょう。」と言った。
「てかさー、宗助って何歳なの?見た感じ一人暮らしだと思ったんだけど、彼女とかいるの?」
「僕?来年30だよ。
彼女は・・・いないよ。」
またしても一瞬不思議な色を湛える瞳。
でもなんだかあまり深く突っ込んではいけないような気がした。
「30!?へぇ・・・。もっと若いかと思った。」
てことは私と10歳以上も離れているのか・・・。
「結ちゃんは高校行ってないんだっけ?行ってたら何年生だったの?」
「1年生。華の女子高生ですよ?ドキドキする?」
「いや、全然。
そんなことより、親戚とか周りの大人の人に相談はしなかったの?」
「そんなことって・・・。若い女の子と部屋に二人きりなんだからドキドキとかしないの?」
ぶつぶつぼやく私に宗助は先を促す。
「あの女と関わりのある人間なんかの世話になるの絶対嫌だったし、お父さんの兄弟とか親戚とかはお父さんが死んでから全然連絡がつかなくなっちゃった。
まぁ連絡ついたとしても世話になるつもりもなかったけど。」
「そう言うけどさ、本当に一人でどうするつもりだったの。
ずっと昨日のような事、続けていく気だったの?」
「・・・。」
私が小学生の時に自らの命を絶った父親。
私が中学を卒業すると共に姿を消した母親。
私は生きる為に必要な金を得る為に、夜の街で男を餌にしていた。
色目を使って男をホテルへと誘い、先にシャワーを浴びさせ、その間に財布から金を抜き取り逃げる。
回数をこなし慣れた私に油断が生じ、昨日危機を迎えたのだ。
男に追われ捕まりそうになった時、宗助が私を助けた。
もし宗助が昨日助けてくれなければ、私の人生は昨日で終わっていたかもしれない。
仮に昨日難を逃れていたとしても、きっと過ちを犯し続け、いつか捕まっていただろう。
これからのことを考えなければならない。
俯いて黙っている私に宗助は気遣うように声をかけてきた。
「約束して。
昨日みたいなことは今後一切やらないって。
辛い事ばかりで・・・傷ついてばかりで・・・自暴自棄になってしまいそうだけど。
もう頑張らなくていいからさ、自分を諦めることだけはしないで。
ね?」
「・・・うん。もうしないよ。
宗助が・・・一緒にいてくれるんなら。」
「よし。約束ね。
でも僕だってずっと一緒にいてあげられるかわからないからさ、やっぱり居場所を探さなきゃ。」
「えー!一人にしないって約束したじゃん!」
「だから居場所ができれば一人じゃなくなるでしょう。」
「そんなの大人の屁理屈よ!助けたんだから責任とってよね!」
口を尖らせながら抗議する私に溜息をつく宗助。
「あのね・・・。
まぁとりあえず居場所が見つかるまではここに居ていいからさ。」
「仕方ない。今はそれで手をうっとくわ。
あ、でも宗助も寝るときは部屋で寝てね。
居候の癖に部屋を占領するの後ろめたいから。」
「・・・大した居候だよ。」
諦めたように苦笑を浮かべた宗助に私は満面の笑顔を返してやった。