1月19日に168回直木賞が発表されました。

 

受賞作の1作 千早茜『しろがねの葉』は、昨年11月に訪れた石見銀山の戦国時代末期の頃が舞台と聞き、久方ぶりに小説を読もうかしらと食指が動いています。

 

 

 

 

これまでも、石見銀山を舞台にした小説は、杉本苑子『終焉』1977、

 

 

あさのあつこ 『ゆらやみ』

 

 

 

土橋章宏『いも殿さま』2019、

 


 

 

澤田瞳子『輝山』2021、

 

 

と続き、いずれも銀山のガイドを務められている方たちからもよく調べて書かれているとのことでしたが、今回の千早茜さんも現地に足を運ばれ取材を重ねての執筆だそうです。

 

物語として、堀子たち、その家族がどのような生活をおくってきたのか、戦国時代末の時代が鉱山開発の技術背景などを知るきっかけになるのではと想像します。

 

まだ、この作品を読んではいないのですが、本の表紙の写真をみるとタイトルを想起させるような植物が描かれています。

 

この表紙のモデルになった植物は、ヘビノネゴザ。シダ科の植物です。

 

 

見た目においてシダと大きく違うのは、葉っぱの裏側にうろこのようなものがあることが見分けるポイント。

 

この植物、重金属に汚染された土壌の上で生き残る能力だけでなく、土壌中の重金属を上手く植物体内に蓄積する能力を持つことから、ヘビノネゴザが生えていたら鉱物(=銀)があると判別できたといいます。

 

史跡 石見銀山遺跡 龍源寺間歩の碑の近くに生息しており、ガイドさんに説明されるまでは、気にも留めないごくありふれたシダ科の単なる植物という認識でしたが、わかる人にはわかるお宝を示す植物だったのです。

 

 

堀子さんは、中腰位の高さの穴を1日30センチ進むくらいのペースで掘り進めたそうですが、見学で使っている坑道の左右上下のところどころにひおい坑(鉱脈を辿って堀た坑道)があります。

 

ガイドさんの説明があって、銀山の柵内の町の様子や坑内について理解を深めていきますが、石見銀山見学を終えるころには、近代化していない時代の鉱山開発エンジニアリングの世界は、とてつもなく壮絶なものであり、ここの銀山が徳川幕府を支え、世界に日本の存在を誇示していたのかと痛感するに至ります。

 

 

 

今回の直木賞 『しろがねの葉』を読んでから、この銀山を抱える町に足を運ぶ価値も十分にあると思います。

 

歴史の教科書でも世界遺産の検定のテキストでも知りえなかった、この石見銀山の持つ歴史的価値のアウトラインを、実際に訪問したことで理解が進みました。

 

大森の町から大久保間歩に向かう途中に、いまもこの銀山・大森町に住む人たちの『大森町住民憲章』が建てられています。

 

多くの人が石見銀山を訪ね、この土地の持つ価値を大森町の住民と同様に誇りに思い、その価値を未来に向けて引き継いでいける社会であってほしいと切に願います。

 

 

大森町には少ないながら宿泊が可能な施設があります。

朝の大森町の町並み。

小学校に向かう子供たちの姿が、まだこの町が未来に向かって生きている証のように感じられました。