天官賜福の新版(2023年5月発売)の変更点・追加部分⑩です。甘い大きめの改編は第一弾で紹介してしまったので、割と地味めかもしれません。
①細かい部分ですが、謝憐が蠍尾蛇に噛まれてから三郎の顔色が悪くてしばらく一言も話さない描写があったと思います。
旧版では、南風が「扉すらないのにどうやて閉じ込めるんです?まさか上から直接放り込むんですか?p237」と尋ねた時に、謝憐が答えるかどうか迷っていると、三郎が答える描写でした。
新版では、謝憐は答えようとしたけれど、思い直して機転を効かせて、「それは知らないな」と言い、三郎に口を開いて欲しくて「あー、私も知りたいなぁ」と付け加える描写があります。
そこで三郎がやっと「放り込むんだ」と口を開きます。口を開いたのを聞いて、謝憐は近づいて「三郎は物知りだなぁ」と褒める描写があります。
三郎はそんな謝憐の意図を見抜いていたかのように謝憐をチラッと見ます。謝憐は見透かされたようで少し恥ずかしくなりますが、三郎の目尻が下がったのを見てホッとします。
機嫌を損ねたと思った謝憐が、三郎の機嫌を取ろうとする姿が、ちょっぴり甘いです。
②こちらも細かい改編です。
三郎が善月草を謝憐に塗った後に、商人達が土埋面を発見して、三郎が謝憐に「さっきの薬草は大丈夫 p247」という場面がありました。
小説ではその後、謝憐は「三郎は気が利くな。本当にありがとう p248」と言います。(旧版ではこの辺りではまだ三郎の機嫌は直っていないので言葉数が少なめです)
新版では、謝憐が三郎に「もしかしてさっき、もうあれ(土埋面)を見つけていたの?」と尋ね、「そうだよ。何か問題ある?」と答える描写が追加されています。
謝憐は、あんな恐ろしいものを無視することができるなんて...と思いながら「何も問題はない。君はすごいね」と返します。
謝憐は、多分あれは三郎にとっては気持ちの悪い虫と同じような感覚なんだろうと思うのでした。
③三郎が謝憐を抱っこしながら刻磨将軍と戦う時の描写が少し追加されています。旧版では「謝憐は思わず腕を上の方に伸ばしてしっかりと三郎に抱きつき、無意識に彼の服の肩先をぐっと掴む。p266」という描写です。
新版では、「謝憐は思わず腕を上の方に伸ばして、最初は首に抱きついたけれど、すぐに妥当ではないと思い、胸元の服を掴んだが、それも妥当ではない気がして、肩先の服を掴んだ方がいいのか?と思って、掴んでみたら細い三つ編みの髪を掴む描写になっています。
女狐の尻尾を掴んでしまったかのように慌てて手を離し、''どうして触れられないところばかりなんだ!''と思います。
甘いですね。何が甘いって、(一瞬ですが)首に手を回しているのも、(一瞬ですが)胸元の服を掴んでいるしおらしい姿も、甘くないですか?その一瞬だけを切り取って永久保存したくなります
④この後、罪人坑の下での会話が増えていて(記事69の最後で紹介しています)そのあと、謝憐が降ろしてもらうときの描写も少し増えています。旧版では謝憐が「やっぱりまずは降ろしてくれないかな?p269」と言って三郎が「ちょっと待って」と言って降ろす描写でした。
新版では、抱っこされている状況にいつの間にか慣れてることに気がついた謝憐が、降りようと少しもがいた時に、抱きしめる手がよりきつくなり、謝憐は気付かせようとします。
謝憐「できれば・・・」三郎「何?」謝憐「できれば・・」三郎に肘で少しつついて、気付いてもらおうとしますが、三郎は気づかないふりをします。三郎「できれば何?」
謝憐はどうしようもなくなり、「できれば、先に降ろしてくれないかな?」と言います。三郎はそれを聞いてやっと気付いたかのように、恭しく「なんだ、そんなことか。兄さん直接言ってよ。もちろんだよ」と言います。
さっきの会話 (記事69の最後)で花城が二回言葉に詰まったので、謝憐も仕返しされたようでした。謝憐は「若いのに、君はなんて奴だ」と言います。三郎はひとしきり笑った後、「僕が悪かったよ!誠意の証に、兄さん、どうぞ」と言いながら謝憐を下ろします。
しらを切る三郎。きっと下ろすのが名残惜しかったんだろうなぁ...。ずっと抱っこしてたかったんだろうなぁ甘いですね。
⑤『花将軍』という言葉が出て、旧版では扶搖が「でも、どうして彼女はあなたのことを『花将軍』と呼ぶんですか?別に花っていう姓でもないのに p287」と言われ、謝憐は「気にしないでくれ。あの頃、適当に偽名を考えて花謝と名乗っていただけだから」と答えます。
新版ではこの後に、扶搖が「花冠武神謝憐?」と尋ね、謝憐が「そういえば、どうして君はそんな古い呼び方を知ってるんだ?」と返す場面が追加されています。
扶搖「じゃあどう彼女と知り合ったんです?」謝憐「食事を作ってる時に知り合ったんだ」と返すと、扶搖は何とも言えない表情になり、少し気持ち悪くて吐きそうな感じもするし、人を罵りたそうな表情もしていた、との描写があります。
新版では随所で扶搖と南風の伏線が濃くなってます。
⑥半月が罪人坑の下に降りてきた時に、謝憐と三郎の二人の人影を見つけて「あなた達は誰?」と尋ねる描写が増えています。謝憐「私は神官で、彼は私の友だ」と答えます。
半月「神官は一度も来たことがないから、ここのことはもうとっくに構わないと思っていたわ」話し終わるや否や、謝憐をじっと見つめて、「あなたは...どうして霊光が全くなくて、悪い運気がたくさんついているの?」謝憐「・・・」
謝憐は顔の前の''悪い運気''を払うような仕草をして、「そんなに酷い?」と尋ねます。半月「酷いよ。しかも、どうしてこんな強い邪物と一緒にいるの?」それを聞いて三郎の上がっていた口角が少し下がります。
謝憐「彼のことを言ってるの?彼は邪物じゃないよ」と返しますが、半月は少しためらってから、謝憐が騙されているかもしれないと思って、小声でそっと、「本当はそうだよ」と教えてあげます。
謝憐は優しく「関係ないよ。彼がどんな姿でも、友なんだ」と答えます。半月はしばらくして「確かにそうかもね。あなたは素敵ね」と返します。
ここの追加はきっと、謝憐の「彼がどんな姿でも友なんだ」を引き出すための追加ですね。罪人坑に落ちてからの会話もありましたが、より謝憐が三郎に対して無条件に信頼していることを表しているように思います。
⑦半月が謝憐を見て、当時の花将軍だと気がつく過程についての描写が追記されています。旧版では、刻磨将軍が半月をボロ人形のように叩きつける描写がありましたが、新版では謝憐の前で、大柄な男性が小さな女の子を叩くなんてことは許されず、謝憐は刻磨将軍を一発で失神させます。
その一発が、小さい頃の半月と一緒に遊んでいた時に、よく半月に見せていた大道芸の技(素手の瓦割り)だったので、それで半月が花将軍だと気がついた、という描写になっています。
そして、旧版では謝憐が「蛇を呼んで、私たちに見せてくれないか p292」と言いますが、新版では三郎が命令口調で言います。半月はそれに対して、同意の「うん」ではなく、服従するかのように「はい」と答えます。
鬼王である三郎の気迫がそうさせたのか、別の何らかの伏線なんだろうか?まだわかりません。
⑧蛇を操っているのが小裴将軍だと判明するくだりが少し改変されています。
謝憐が一連の出来事を整理しながら口に出し、黒幕が神官だと見当がついたので、犯人に自分から名乗り出てほしかったこと、明光殿の勢力が強いため他の神官が見て見ぬふりをしていたこと、通霊陣で謝憐が尋ねた時に裴将軍も通霊陣で聞き耳を立てていたため、他の神官は何も語れなかったことなどが説明されています。
初読の時は、天界での明光殿の勢力などもまだいまいち理解していないまま読んでいたので、この改編によって明光殿の勢力が強く、他の神官達も誰も恨みを買いたくないことが、より明確に描かれていて分かりやすくなったと思います。
⑨旧版では、小裴将軍の正体が明るみになってから、しばらく刻磨将軍と対話(どちらが悪いとかのやり取り)してから、風師がやってくる流れでしたが、新版では、正体が明るみになってすぐに風師が現れ、みんなを風で罪人坑から引き上げ、風師の口によって城門が開けられた背景が語られる描写に変わっています。
⑩「花城が『殿下』と呼ぶ時のその二文字は、この上なく大切にされているように思えた。p321」に、ほんの少し追加されています。「花城が『殿下』と呼ぶ時のその二文字は、この上なく大切にされているような感じで、あたかも相手が高貴な王族か、服従する対象かのような呼び方なのだ。そのため謝憐は呼ばれる度に、軽い気持ちで受け取れないと感じてしまう」
この改編によって、伝えたいことの輪郭が少しはっきりしています。
⑪「どんなに探りを入れても、君には一切の綻びがなかった。なら必然的に『絶』だ。君は楓か血みたいな赤い服を着ていて、何でも知っていて、なんでもできて、怖いものもないときている。そんなのは、あの諸天の神々が話題に上るだけで顔色を変える『血雨探花』以外に思い当たらない気がするけどね。p322」の後に、新版では「それに、真剣に隠そうとしてないよね?」と続きます。
「それって僕のことを褒めてるんだって思ってもいい?」の後、旧版では(そう言ってるんだけど、聞いてて分からないのかな?)と謝憐が心で思うのですが、新版では声に出して花城に返します。
このあたりも、思うだけではなくて口に出して伝えることで、より甘くなっています。
⑫謝憐が初めて郎千秋に会った時に、若い神官が郎千秋を催促して謝憐と関わらせないようにする描写がありました。新版ではここに少し追加されていて、巡視中の青銅製の兵士に怪しまれて声をかけられるる場面が追加されています。
殿の名前を聞かれても、法力を聞かれても「ない」と答える謝憐が怪しくて攻撃しますが、郎千秋が戻ってきて、謝憐を助けます。その後に、他の神官達の「同じ太子殿下でもえらい違いだよ。泰華殿下こそ本物の王族の気品があるってもんさ」などの会話に続きます。
郎千秋の登場部分の改編によって、より人柄が分かりやすくなっています。
⑬「仙楽もわかっているな。なぜ今日ここへ呼ばれたのか p344」の後の会話が少し改編されています。謝憐「半月関のことですよね?」君吾「そうだ。さっき殿では意見が分かれたんだが、どう処置したら良いと思う?」
謝憐は少し考えて「貶謫でしょう」と言います。君吾は少し笑みを浮かべながら「もっと考えなくていいのか?」と尋ねます。謝憐「もう考えなくて大丈夫です。小裴将軍はあまりに多くの殺戮をしています。凡人へと貶謫すべきです」君吾の笑みはより濃くなります。
謝憐は、殿で意見が分かれたと聞いて、明光殿の勢力が強いのなら、きっとたくさんの神官が彼の肩を持ったと思い、自分から悪役を買って出て、あえて厳しめの提言をすることで、君吾が妥当な処置を取りやすいようにしたのです。
謝憐の人柄がよく表れています。この場面での君吾の「笑み」も何だか深掘りできそうです。
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やっぱり今回は少し地味めかもしれませんでも花憐ファンの方や、何度も読み返されている方なら、二人の追加された些細な会話や動作も気になるかなと思うのですが、どうでしょう...
余談です。
もうすぐ花城の誕生日ですよね皆さん、何かされますか?
実は、今まで人生に「推し」というものがいなかったのと、信徒になって初めて迎える誕生日なので、何したら良いのか分からなくて...
もしおすすめの過ごし方や、祝い方があれば教えてほしいです