天官賜福の中国版には旧版と新版があり、新版は2023年5月頃に発売されていて、少し内容が改編されているのと、10万字の加筆、番外編の追加があります。

日本語訳の小説もアニメも今のところほとんど旧版を元にしていると思います。新版が届いたので、新版で改編されている箇所をとりあえず読んだところまで書いてみたいと思います。

 

大枠のストーリーは同じですが、細かいところの説明描写が増え、より理解しやすくなったように思います。

 

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・謝憐が花嫁の輿に乗っている時に、南風と扶瑤と、「嫁ぐ時についていく侍女が二人足りない」「家が貧しかったということで我慢してください」と言う会話があったと思います。新版では、まだ会話が続きます。

 

謝憐「貧しいのなら君たちは雇えないな」扶搖「俺たちは手がかからないよ」謝憐「毎日物をあれこれ投げて、食べ物も投げて粗末にするのに、手がかからないだと?」扶搖「お嬢様、そんなにお喋りだと、旦那様に嫌われますよ」謝憐「旦那様は私のことを愛しているから嫌ったりしないよ」扶搖「本当に愛しているなら、こんなに何年も待たせてから結婚しないでしょ」謝憐「はぁ..。それは旦那様も本意ではないから、旦那様のせいじゃないよ。」扶搖「狐に心を奪われて自分を見失ったんじゃないか?」謝憐「あれ、台本が変わった?お嬢様がお嫁に行く話から妖怪狐が出る話に変わったの?」南風「まだやってるのか!」

 

・・・なんか、ちょっぴり甘くないですか?なんだか何とも言えない甘さ...。

 

・郎蛍が削られて登場しなくなり、小蛍が包帯を巻いている設定です。謝憐が虐められていた小蛍に「お嬢さん、お茶を一杯いかがですか?」と言う描写がありましたが、新版では虐めていた男の子に「お前みたいなブスなんか誰もお茶なんかに誘わねぇよ」みたいな暴言が増えていて、それを受けて謝憐がお茶に誘う、という感じに変わっていました。

 

・小蛍は、人間ではなくその場所の土地神様という設定になっていました。宣姫との対戦中に遠くまで投げ飛ばされて、元々霊力が弱かったのもあり、消えてしまいます。人面疫のくだりは、花嫁の死体のうちの一つが人面疫にかかっていた設定でした。(正確に言うと、かかっていたというより、多分白無相の妖術で謝憐だけに人面疫が見えたようです。)

 

・南風と扶搖に関しては正体のヒントがいくつか増えました。指示を出す時に、命令口調だったので、謝憐は彼は殿の中でそんなに偉いのかと思った、など。

 

・牛車を降りてから三郎が謝憐のガラクタを持って観に入る描写がありました。新版では、謝憐が何度自分で持つと言っても三郎が持たせなかった描写が追加されています。謝憐は仕方なくござだけ持つことになりました。(二人が夜一緒に寝ることになったござです。)謝憐がどうしても持ちたがるので軽そうなものだけ持たせたのかな?些細な改編ですが、どうしてここはこう改編したんだろう?と考えるのも楽しいです。

 

・太子悦神図を謝憐が寝た後に三郎が描いて、朝謝憐が起きた時には壁にかかっている描写がありました。新版では、「太子悦神図はないの?」と三郎に尋ねられた後、謝憐がすぐにざっと描き始め、その後二人は太子悦神図について語ります。正式な太子悦神図にはどういった細かい決まりがあるのか、色は何色までか、色の意味合いは何か、袖の長さはどれぐらいかなどの細かいことについて夜遅くまで語ります。次の日、謝憐が起きたら三郎が描いた立派な「太子悦神図」が壁にかかっていました。昨晩語ったことが漏れなく全部反映されています。何なら謝憐が忘れ去っていて、昨晩語っていなかった細かい部分(耳飾り)まで描いてあったほどでした。謝憐は三郎はどうしてそんなことまで知っているのか不思議に思います。

 

・「仙楽太子についてどう思う?」と尋ねられて三郎が「君吾に嫌われてるんだろうな」と返すシーンがあります。三郎「でなきゃ二回も追放されないでしょ?」謝憐「世の中のことは単純に好き嫌いではなく、悪いことをしたら罰を受けないと。君吾は責務を果たしただけ」という会話がありました。新版ではまだ会話が続きます。

 

三郎「じゃあどう考えればいいの?」謝憐「複雑だから、じきにわかる時が来るよ」三郎「今分かりたいんだ」謝憐「誰かを評価していて好きだとしても、何があっても永遠にその人のことが好きではないでしょ?」三郎「どうして?もしそうなら、それは大して好きじゃないだけ。」謝憐「じゃあ、誰かに対して、好きか嫌いしかないの?」三郎「何かおかしい?正しいものは正しい、間違ってるものは間違ってる、愛なら愛、恨みなら恨み。明白だと思うけれど。」三郎は謝憐の呪枷を見て「この話はやめよう」と言います。謝憐「どうしてこの話をやめるの?」三郎「あなたがこの話をしたくなさそうだから」ここまで会話が増えています。三郎の''それは大して好きじゃないだけ''の発言が少し前倒しされたように思います。

 

・牛車で鬼に遭遇した次の日、牛車のお爺さんに連れられて、たくさんの村人がお祈りしにくるシーンがありました。この時、村人の女性達が三郎を見て顔を赤らめる描写があったと思います。(一行だけなので見落としがちなのですが...)

 

新版では、三郎が功徳箱にもたれかかっていて、女性達が三郎を見るや否や顔を赤らめてながら功徳箱に小銭を一枚...だけではなく思わず何枚も入れてしまう描写があります。もう小銭も入れて立ち去ったのに、また戻ってきて、三郎を見ながらまた小銭を入れる...。そんな様子を見て、謝憐は見てられなくて、功徳箱から小銭を掻き出して女性達に返す描写があります。そんなことしたら帰ったら家の人に怒られるよ、と心配したのです。より一層、三郎の女性からの人気ぶりを表す描写に変わっています。

 

・謝憐が三郎の腕の刺青を見て、三郎が袖を下ろす場面がありました。三郎が視線に気づいて袖を下ろして「小さい頃に入れたんだ」と言います。新版では更に会話があります。

 

謝憐が「素敵な花紋だね」と言うと、三郎は「花紋じゃなくて名前なんだ」と答えます。「君の名前?」と聞くと、三郎は「違う」と。それを聞いて謝憐はもう尋ねません。「どうしてもう聞かないの?」三郎が尋ねます。謝憐は「自分の体に他の人の名前を彫るのは特別な意味があると思うから、他人は聞くべきじゃないと思って」と答えます。三郎は低い声で笑って、この話題は終わります。あぁ...あと一歩!あと一歩聞いて欲しかった!でもこの段階であと一歩聞いても、三郎は「謝憐だよ」と答えるのかな?まだ答えない気がする。“好きな人の名前”みたいな感じで答えるのかな?

 

・国王が“巨陽将軍”と“倶陽将軍”を書き間違えたくだりの話は、旧版ではただ単に説明として書かれていましたが、新版では半月国に向かう途中、三郎が謝憐に解説するという形に変わっていました。三郎が物知りなことをより表していると思います。

 

・謝憐が蛇に噛まれた時、三郎が口で毒を吸う場面がありました。この場面で、三郎のこんな表情を初めて見た謝憐が三郎に「大丈夫?」と声をかける場面が足されています。扶搖はそれを聞いて「あいつはどうもないよ!刺されたのはお前の方だろ!」と返します。そして三郎が口で毒を吸うのですが、この場面で南風が「何恥ずかしがってんだ。女の子じゃあるまいし。」と言います。「恥ずかしがってないよ、変なこと言わないで」と謝憐も返します。このあとが衝撃的でした。

謝憐「ありがと...待って。吸った毒血は?!・・・まさか飲み込んだの?!」

三郎「熱が出てるよ」

謝憐「そんなことどうでもいい!毒血は吐き出さないと!毒と同じなんだから中毒になるよ!!」

南風「どうでもいいわけないだろ!」

扶搖「熱が出てるのに気が付かなかったのか?」

・・・三郎!!!・・・甘いですね。

 

・罪人坑には二人だけ投げ入れるという設定だったと思います。新版では、全員投げ入れようとした、という設定に変わっていました。そして謝憐が、私が先に飛び降りてみんなを受け止めるよ、と言うくだりが追加されていました。そのため、三郎が謝憐の前に飛び降りて謝憐を受け止める、という流れがより自然になりました。

 

・罪人坑の下での会話で、「他に聞きたいことはないの?人間かどうかとか」「人と付き合うのは相性が大事で好きなら乞食でも好きだし、嫌いなら皇帝でも嫌い」の会話がありました。新版ではこの間にもう一つ会話が挟まっています。

 

「他に聞きたいことはないの?人間かどうかとか」「どうしてそんなことを聞く必要があるの?」「必要ない?」「必要ある?人間のような振る舞いしてないよね?」「・・・」「三郎、君は強い。でも芝居は下手だ」「強いのが分かっててどうして一緒に飛び降りたの?」「飛び降りたのが、君が弱いと思ったからだと思ってるの?」「じゃあどうして心配したの?」「心配したのは“君”だからで、強いも弱いも関係ない」「・・・」「人と付き合うのは相性が大事で・・・(以下略)・・・」

少し会話が増えました。よりこの時の謝憐の気持ちが分かりやすくなっています。

 

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新版の感想としては、スッキリとまとまってて、より分かりやすくなった気がします。あとは罪人坑のあたりなど、この人物がなぜここでこの行動を取ったのか?の前情報が少し増えていて、よりその行動が納得できるものになりました。

 

風信の罵詈雑言が僅かにマシになっていたり、他にも細かい部分で変更は色々ありますが、大事そうな部分だけ拾ってまとめてみました。こうして見ると、割と重要な部分が足されてる気がします!!(少なくとも信徒としては大事すぎる情報が増えています...。)

 

謝憐と三郎の会話が増えて嬉しい...おやすみより謝憐の気持ちも、三郎の気持ちも分かりやすくなって嬉しい...おやすみまた読み進めたら、随時第二弾以降も更新します。

 

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