前回も沢山のイイネありがとうございました。二次創作なのもあり、当初は興味ある方がいらっしゃるか不安な中書き始めたのですが、楽しみに読んでくださる方もいると知ってとても嬉しいですおやすみ

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前回の二人はやっと結ばれて、気持ちも吐露し合いました。今回はその続きです。結ばれた後の甘さは格別です🥰

 

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二人の生活は日を追うごとに良くなりました。お客さんがはるばる別の街から師青玄の絵を求めてやってくることもあり、師青玄は習いたい人に絵画を教え始めます。師青玄が店舗にいるときは賀玄はなるべく外に出るようにしました。いつもたくさんの人に囲まれている師青玄を見ていられなかったのです。外に出る用事がない時は庭で薪割りしたり、水を沸かしたり、洗濯することで鬱憤を抑えていました。そんな賀玄の気持ちを知って、師青玄はしばしば人だかりの中から出てきて、庭にいる黒水鬼王をなだめに行くのです。

ある時には「俺は君のもの」と書いた紙を渡したり、ある時は後ろからこっそり抱きついたり。鬼王である賀玄に、こっそりだなんて通用するわけはないのですが、賀玄はいつも気付かないふりをして抱きつかれるのでした。時々、師青玄は真正面から賀玄に向かってきて、不意に口付けして去っていくこともあります。一人庭に残された賀玄は薪割りしながら、鬱憤が徐々に情欲に変わっていく自分を感じるのでした。

 

相変わらず、師青玄は夜中に悪夢でうなされる日々が続いていました。その度に、賀玄は横で胸をさすったり口付けしてなだめます。そんな師青玄を見て賀玄は胸を痛め「一番間違った方法で復讐してしまった」と言います。「前までは兄に守られていて、生死離別も知らず、愛恨情仇も知らなかったんだ。信徒達の祈願に応える時も本当にその祈願を理解していたとは言えなかった。凡人になって初めて夢の中から覚めたんだ。今までの自分がどれほど無知だったのかがわかった。この無知が五人の命を奪ったんだ。罪人として罰を受けるべきだし、受けて然るべきなんだ。だからこの悪夢も自分で向き合わないといけないんだ。」そう言うのでした。どれだけ賀玄が、それは師青玄の間違いではないと言っても、師青玄は自分を許せない様子でした。「そんな顔するなよ!ちょっと寝不足なぐらい大したことないよ!」という師青玄をなだめて寝かした後、賀玄はいつも一人後悔に苛まれるのでした。

 

書画坊の商売はとても上手くいっていましたが、師青玄は時折、絶の鬼王である賀玄が手脚の不自由な凡人の側で、平凡な生活を送っていること、店舗の雑用をしていることに、後ろめたい気持ちを持っていました。「自分自身、成し遂げないといけないことはないの?」と聞いても、賀玄は「ついていく。したいことがあるなら、一緒にする」と言います。「でも君は黒水沈舟だよ!」「それがどうした?それは他の人がつけた呼び方だ」と気にも留めない様子でした。そんな生活が続いたある日、師青玄は賀玄に切り出します。皇城内の廟は、もうみんな自分達で回せるようになって心配することもないから、いろんな地方に出向き、人助けできることがあれば人助けしたいと伝えます。それは贖罪かもしれないし、性格上そうしたいのか、他の神官達が祈願に応えられない人達の手助けをしたいと思ったのです。もちろん、賀玄はついていきます。

 

一つ目の行き先として、師青玄は''博古鎮''はどうかと尋ねます。博古鎮は賀玄が人間として壮絶な人生を生きた土地でした。また、賀玄が復讐する時に師青玄を連れていき、師青玄にとっても神官から凡人に転落した場所でした。賀玄は博古鎮に行くことで、師青玄の心のわだかまりを取り除くことができるかもしれないと思い、賛成します。二人は目標地を博古鎮に定め、準備して出発します。出発する時、皇城のたくさんの住民やお金持ちのお客さんが送別に来てくれました。道中賀玄は尋ねます。「なぜ縮地千里を使わせてくれないんだ?」「ははは!今は俺は凡人なんだ。凡人なら凡人がすべきことをすべきなんだ。それに、一緒に道中いろんな風景を見ることもできるだろ?それも良いと思わない?」二人は山の中腹に寄って、梧桐樹にしばしのお別れを告げました。凡人になってから、師青玄は年月が経つのが異様に早く感じます。また秋がやってきて、一年経っていたのです。梧桐樹も、葉が枯れて落ちて、二人との別れを惜しんでいるようでした。

 

師青玄は凡人になってからの四年目、彼のそばには黒水沈舟がいました。強すぎる黒水沈舟は、自分なんかの言う通りにしなくても良いのに、自分と一緒に未来に向き合おうとしてくれます。師青玄は、理解してくれて、尊重してくれて、一緒に目標を叶えてくれる賀玄がそばにいることに感謝しました。賀玄の抱擁の中で、四年目を楽しく終えたのでした。

 

 

博古鎮に到着しました。師青玄にとっては、神官から凡人に転落した始まりの場所であり、賀玄にとっては師無渡によって、家族五人が命を落とした場所なのです。敵討ちは果たしたのに、家族の骨灰はまだ埋葬しておらず、幽冥水府に置いたままでした。骨灰を埋葬することも今まで忘れていたようで、それに思い至った時、賀玄は最初から最後まで、自分が一番大事だったのは師青玄なんだと改めて思うのでした。あんなに遠回りしたのに、何百年前の故郷に戻って、賀玄はそのことにやっと気付くのでした。

 

ここで一緒にできることはないかな?そう尋ねる師青玄に、家族の骨灰を一緒に埋葬してくれないか、と賀玄は言います。賀玄の元々の家があった場所にはもはや何もありません。数百年前の隣家の近くの井戸を目印に、家があったであろう場所にたどり着きました。賀玄は井戸を眺めながら何か思い出しているようで、師青玄は少し離れた場所で一人になる時間を作ってあげました。

 

この井戸は、賀玄にとって数少ない母親との思い出でした。彼が生まれた時両親はすでに年老いていて、家は貧しく、兄弟姉妹がたくさんいたにも関わらず、賀玄と妹だけが生き残ったのです。まだ小さかった賀玄は、毎日母とこの井戸に水を汲みに来ました。母が近くに住む人達と近所話をしているときに、賀玄はいつも側で待っていました。そのうちの一つが李氏で、自分の娘を将来賀玄のお嫁さんにすると約束したのです。小さい頃から、この娘が将来お嫁さんになるんだよと、言い聞かされてきました。可愛い顔をした、よく笑う、性格の良い女の子でした。二人はよく一緒に母親達の近所話が終わるのを待っていたし、子供ながらに、この娘に対して一生責任を持たないといけないと理解していました。賀玄は小さい頃から賢く、先生からも並外れた才能があると賞賛されていました。しかし、(師無渡によって、師青玄と運命を入れ替えられたことで)不運が重なり、どうしても名を上げることができませんでした。李氏は許嫁の娘を同じ町を大きな家に嫁がせることにするのですが、娘は嫌がり、強制的に連れて行かれたのです。

 

少し離れたところで、師青玄と子供達の笑い声がしました。子供達は''賀生''のごっこ遊びをしていて、師青玄は子供達に「賀生」の漢字の書き方を根気よく、何度も何度も書いてあげていました。(賀生というのは、賀玄が不運な人生に絶望し、今まで自分を苦しめた人全てを惨殺して力尽きて死んだ後に、町の人が彼の生涯を一つの物語として書き上げ、「勧善懲悪」の物語として言い伝えてきたものです。)日が暮れて子供達が帰るのを見送りながら、賀玄は師青玄が何をしようとしているのか分かった気がしました。二人はその後、竹林の墓地で骨壷を埋めました。「ごめん、やっと家に帰してあげることができて」そう言いながら、賀玄は跪いてお墓に向かって頭を下げました。

 

夜になり、火を起こして身体を温めます。師青玄は沈黙を破るように切り出しました。「どうして傾酒台で俺の法力を持って行かずに、封印だけしたの?」「・・本当は、一度も傷つけようと思ったことはなかったけど、何度止めても師無渡に会いに行こうとするから・・」そのまま復讐計画に巻き込まざるを得なかったんだ・・・。最後まで言えませんでした。元々の計画では師無渡が三度目の天劫(法力を上げるための試練)を迎える直前に、師青玄の法力を封印することで、師青玄が本物の神官ではないということを知っている人がいると知らしめて、師無渡が天劫を迎える時に集中できず、その隙に自分の地盤に引きずり込んで復讐を果たそうと思っていました。それが、師青玄と謝憐によって計画が乱され、最終的には怒りに負けて、師青玄をも凡人にしてしまったのです。

 

’’凡人’’になることが何を意味しているのか、二人ともわかっているけれども、誰も口にはできません。口にしたくないのです。少しして、賀玄は続けました。「師無渡と一緒に死にたいと言った時、師無渡が俺にあんなにひどいことをしたことが分かっても、そこまで慕っていることに、怒りが抑えられなかったし、もしかしたら嫉妬かもしれないけど、その時はとにかく傷つけたくなってしまったんだ・・」師青玄は賀玄の背中をさすりながら、「兄が死んだことで、一緒に死のうと考えたと思うなら、それは間違いだよ。兄を亡くしたのはもちろん辛いけれど、その時死にたくなったのは罪悪感からなんだ。俺一人のせいで、君を不幸にしただけでも罪なのに、一家五人の命を奪うことになったんだから。」また続けます。「俺の命を奪わず残してくれて、ありがとう」師青玄はこの時、賀玄が生かしてくれたことに、初めてお礼を言ったと気付きました。「何も知らない状態から目覚めさせてくれて、感謝してるんだ。生きることで、償う機会ができる。それに好きでいてくれて、そばにいてくれてありがとう」「俺も感謝してる。この何百年で、お前は唯一、少しの間復讐を忘れさせてくれる存在だったし、復讐を終えた後も、心いっぱいの憎しみや無念さを消し去ってくれた。これまでもお前だけだったし、これからもお前だけでいい」

 

博古鎮は皇城ほど栄えてはいないものの、静かで美しく、住民は素朴な生活を送っていました。皇城のように、繁栄の裏で生活に困る人がいるようなことはありませんでした。生活に困るわけではないけれど、子供達はお金持ちを除いては字を学ぶ機会はなく、畑仕事を手伝うのが普通でした。そのため師青玄は住民と相談した後、賀玄の家の跡地に義塾を建て、宿泊場所と広間を設けました。そして、広間で子供達を集めて無償で字を教え始めます。子供達の親にも大変喜ばれ、家でとれた野菜や果物をお礼に持ってくることもよくありました。

師青玄は義塾の一角で絵も飾りました。義塾は地域で受け入れられ、金銭的な援助も受け拡大していきました。義塾の中に、いろんなところから集めた書物も置き、’’藏書閣’’(図書館)を設けました。当時、そのようなものはまだなかったので、これが町の名物になり、遠くからも書生がここにやってきて、この藏書閣を見に来るのでした。博古镇はこれがきっかけで''藏書の鎮''と呼ばれることになります。

 

義塾と藏書閣が成功したことで、二人が離れる時がやってきました。二人は義塾の経営を常連の書物好きの若い夫婦に任せます。当初師青玄が博古鎮を選んだのは、賀玄にとってここで失ったものが多く、無念が多く残っていると考えたからです。少しでも何かの役に立ち、賀玄が失ったものを埋めることができたらと思ったからでした。

 

ある晩、二人が抱き合っている時に、賀玄は師青玄の頭に白髪が増えてきたことに気が付き、一瞬息をのみました。どうしたの?と尋ねられて、なんでもないと答えるのですが、強く強く存在を確かめるように師青玄を抱きしめるのでした。

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いよいよ次回が最終回のあらすじです。コメントも大歓迎なので、気軽に感想や意見などを頂けたら嬉しいですおやすみ