北米大陸と太平洋を越える夜間飛行は順調であった、
窓外はもちろん漆黒の闇。
定刻午前5時に羽田空港に機体が降りるのであれば、
スポットに接着し降機する頃ようやく陽が昇るはずである。
機上の人となった患者さんは、
安心されたのか深い眠りについていた。
日本に到着後はターミナル間を車で移動し、
国際線から国内線への乗り継ぎ、
ストレッチャーを組み込んだJAL便で再び1時間の空の旅、
伊丹空港へとむかう。
帰郷の旅はいよいよ大詰め、
伊丹空港からは陸路で関西の病院へと移動、
病院到着後ニューヨークから託された患者さん情報が引き継がれる。
「長い時間ありがとう」そう言われると、
患者さんは笑顔で故郷の病院の病室へ消えて行かれ、
ニューヨーク・マンハッタンからの患者さんの長い旅は、
無事に完結した。
「一期一会」の私たちの仕事はここまでであるが、
患者さんにとって社会復帰に向けてのリハビリは、
ここからがスタートであり「ありがとう」の笑顔の向こうには、
「これから故郷で治療頑張るよ」という覚悟と思いが感じられた。
準備に少しばかり時間はかかるが、
ほんの数キロ離れた市内の搬送と変わりのないモチベーションで、
何万キロも離れた海外患者搬送は当たり前のように行われる。
なぜなら、いつ何処にいても患者さんの「帰郷の念」に、
変わりはないからである。