「ソプラノ中川美和サロンコンサート」終演しました。

その後半、音楽劇「パパゲーノの憂鬱」に『りひと』役でゲスト出演しました。


コンサートの前半は中川美和の独壇場。様々な曲をトークを交えながら一人で歌うこと約1時間。僕は楽屋のスタジオで着替えを済ませて待機しておりました。


休憩を挟んで、後半は音楽劇「パパゲーノの憂鬱」
まずはオペラ「魔笛」ミニハイライトを上演。
•鳥刺しの歌(パパゲーノ)
•優しい心を知ることは(二重唱)
•おいらが欲しいものは(パパゲーノ)
•パパパ(二重唱)
「魔笛」の中のパパゲーノに焦点を絞ったハイライトをお届けしました。
「なつかしの歌をうたう会」クリスマススペシャルでは、この劇中のオペラ「魔笛」ハイライトのみお送りしました



そこからいわゆる『楽屋もの(舞台裏)』がスタート。バリトン歌手の【利人】と、その幼馴染みでソプラノ歌手の【美和】が、お互いの気持ちを伝え合えず恋が平行線のまま進む、もどかしいキュンキュン物語。

音大を卒業したばかりの美和に告白しようとお洒落なバーに彼女を呼び出した利人だったが、ついついからかって美和を怒らせてしまう。挙句、美和には彼氏がいることがわかり落胆する利人。

…という一年前のエピソードも経て、彼は何とか彼女に気持ちを打ち明けようとするが、勇気が出せず、どうしてもおちゃらけてしまう。



明日は美和と利人のコンサート。オペラ「魔笛」ハイライトやその他の曲をリハーサルするが、そのコンサートを終えたら美和はその日のうちに留学先のイタリアに飛び立ってしまう。


それなのにやはり告白できず、もがき苦しむ利人の独り言を美和は聞き、彼の気持ちを知る。そして美和の方から本当の気持ちを伝えるのだった。彼氏がいるというのもその場の勢いで言ってしまった美和の嘘だった。

そんな美和の気持ちが全てわかりながらも、結局最後まで照れ臭くて『好き』の一言が言えない利人。


見かねたピアニストの沙織が「パパパ」を弾き始めると、反射的に歌い出す二人…歌の中でなら素直になれる利人と美和は、言葉を超えた【愛】の中で幸せそうに抱き合うのだった。
(終)

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中川美和の筆による音楽劇作品に出演するのは2作目。


前回の「モーツァルトの旅」もそうだったけど、彼女の作品は『歌い手の性(さが)』と『歌のもつ不思議な力』というものをリアルに、それでいてファンタジックに描いていると思う。

「モーツァルトの旅」では、シカネーダが親友モーツァルトの訃報を直前に知らされながらも、舞台の上ではその悲しみを心に押し込めて笑顔で「パパパ」を歌う。

今回の「パパゲーノの憂鬱」では、本心を言葉や態度に出来ない臆病な歌手りひとが、歌を歌っている間だけは本心を語れる。



どちらも歌を通した【本心】と【裏の感情】というものを、歌手ならではの視点で浮き彫りにしている。歌があれば悲しみは押し込めることができる。歌があれば本当の自分を表現できる。この相反する『歌手と歌の関係』は、真逆に描かれながらも歌手の真理であり、歌の魔術でもある。
僕たち歌い手って、実はすごく不器用だし、自分の気持ちと歌の気持ちって、いろんな線で繋がっていたり、切れていたりするんだよな…なんてことを深く共感しながら、今回も中川美和作品に挑みました。


とても難しいし意義があるのだけど、とても自然で単純なことでもある。そんな矛盾を常に同包されているのが彼女の作品の魅力だな、と改めて感じました。





今回初演、ということでしたが、もともとは昨年10月に公演する予定だったのが台風直撃で延期になった経緯もあり、僕たちの感覚としては『再演』に近い印象でした。


ですが、お客様の反応を肌で感じ、またそれも新たな発見だらけでした。そんな訳で、いつかまた【再演】できたら良いな、と思います。


その時まで、皆さまどうぞお楽しみに。


本日お越しくださいました皆様、心より感謝いたします。またぜひお会いしましょう!