僕が尊敬する合唱指揮者・指導者はこの世に3名います。
そのお三方いずれも、熊谷という街で私は出会いました。
僕の音楽のルーツであり、目標であり、その先生方の遺伝子を受け継ぐことが僕のライフワークの内の1つでもあります。
・大澤壮吉先生
…大澤先生については以前も記事を書かせていただきました。僕を音楽の道へと導いてくださった恩師です。
大澤先生の指揮法は例えるなら波であり、流れであり、空気でもあります。全身を使って、そこにうねりを創り上げる。海であり空であり、大地でもありました。波動、生命その全てをまとい、繊細でありながら豪快でもありました。その指揮は美しくしなやかで…。
一言で表現するなら【生命】を宿した音楽でした。
・小林利道先生
…僕が熊谷高等学校に通っていた時、熊谷女子高校で合唱部の指導されていたのが小林先生です。合同演奏会の時にだけ先生の指揮で歌わせていただきました。小林先生の指揮法は例えるなら山であり、その頂から放たれる神々しい光。
根を下ろしたように立つ先生が指揮棒を振り上げた瞬間に、大地が震え、空が響くようでした。
こんなエピソードがあります。高1の時の合同練習です。
組曲「心の四季」の第一曲「風が」の冒頭だったと思います。
「究極の指揮はね、振らないことなんだよ」
とおっしゃるとピアニストに合図をし、前奏が始まりました。先生はただそこに居て、僕らを見渡していました。ゆっくりと呼吸をしていき、僕たちが歌い出す瞬間になった時…僕は自分の中に何らかの「衝動」を感じ、気がついたら歌い出していました。
あの時、その場にいた全員が感じたであろう、あの衝動。これこそが究極のアンサンブルだと感じました。
小林先生の指揮は一言で表現するなら「宇宙」
壮大な時間と空間を共振する音楽でした。
・岩田正彦先生
…熊谷高等学校で、大澤先生の前任であり、現在も熊高OBを中心とした合唱団などで指揮を振られている岩田先生。実は僕は一度も岩田先生のご指導は受けたことがないのです。ですが、熊谷の音楽祭などではいつもお声をかけていただいたり、いろんなお話を聞かせていただける機会もありました。僕は個人的にいつも岩田先生の指揮を舞台袖や客席から拝見させていただき、その指揮スタイルに大変な感銘を受けております。
岩田先生の指揮は、その凛とした立ち姿と身にまとう気品が、それ自体が音楽のようです。一切の無駄がなく、的確で美しい。軸がブレず、身体の芯から脈打つような躍動が感じられる、まさに理想的なバトンテクニック。
岩田先生の指揮は「叡智と品格」
完璧で高質。あんな風に僕も振ってみたい…。
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僕の幸運は、この素晴らしい【重鎮】的存在である先生方がいらっしゃるこの街で音楽を始められた事、といっても過言ではないでしょう。
音楽とは何か?
究極の世界とはどんなものか?
人はなぜ歌うのか?
そんな問いかけを、先生方からいただい教えを通して常に自問しているような気がします。今も熊谷でお会いする機会があるとご挨拶させていただきます。その度に自分の中に音楽のルーツを感じ、身が引き締まります。
今夜も熊谷ベーレンタール男声合唱団の指導でした。11/21の熊谷ミュージックフェスタに向けて、熱い練習が繰り広げられています。今回またさらに先生方の遺伝子を引き継いだ究極の演奏を目指して頑張ります!!