かもめが翔んだ日 | Listening is Believing

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RUGBY Dinner No Side Club店主/リバイアスミュージック代表 竹内方和のプライヴェート日記

昨日、読了しました。
「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、そのあまりの壮絶な展開は予想を軽く凌駕するほどでした。

まず、昔テレビで知った「リクルート事件」と江副氏についての事実と自分の理解が全く違っていたので、とても興味深く読むことが出来ました。
江副氏の生い立ちから広告業界へ入ったきっかけ、その後の怒濤の快進撃、その裏での数々の失敗とそれがあったからこそ成就した「成功」という名のリクルート事業、そしてバブルの崩壊により、全てが暗転し始めた90年代。

特にリクルートの子会社であるリクルートコスモスと不動産担保融資会社ファーストファイナンスが巨額の不良債権を抱え、その債券を親会社のリクルートでさえも賄いきれなくなった時、何とか良い方向へ舵を切ろうと各関係者の間で抗鬱剤を飲みながら苦悩し続ける江副氏の姿には、やりきれない思いでいっぱいになりました。

家族よりも大事だと言い張ったリクルートという名の自己の魂のプライドと現実、盟友とも言うべき銀行との折衝、創業時からの先輩、同僚、部下との数々の軋轢、何百人もの社員達への責任、自分を支え続けてくれた家族への思い、そして百億円にまで達していた江副氏個人の借金...

万事休す。
もはや解決不可能な状態にまで達し、いよいよ年貢の納め時か、と思いきや、信義に生きる男ダイエー中内 功オーナーが、それを危機一髪のタイミングで救いの手を差し伸べる。リクルートのために、全社員のために、全てのプライドを捨て、その救いの手にすがるかのように、ダイエーにリクルート株を売却することを決めた江副氏の泣いて馬謖を斬るが如くの悲壮の決意。

本にもかかわらず、ひと時も目を離さず固唾を飲みながら、一語一句に集中して読みました。

最強の企業戦士を産み続けた本物の「時代の寵児」こと江副浩正。
色々な意見があるとは思いますが、自分は彼が下した数々の決断はほとんどが決して間違っていなかったと思うし、「男の人生は仕事だ」と言い切るその強い心と姿勢に共感しますし、心から尊敬します。
自分の人生のほぼ全てをそれに費やし、時には家族をも犠牲にしてまで仕事に打ち込むことはほとんどの人にとって、とても困難なこと。江副氏がここまで仕事に熱くなれるのは、天才だからこそ見つけることが出来た「仕事の真の醍醐味」を知っていたからではないかと思います。

「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

これはリクルートの社是ですが、仕事はもちろん、人生全てに通底する言葉だと思いました。自分も「仕事の真の醍醐味」をいつか見つけることが出来るように、もっともっと音楽に仕事に人生に熱く一生懸命にのめり込んでいこうと思います。

新田次郎さんの「風林火山」に続いて、また一つ「座右の書」に出会うことが出来て、今は感激でいっぱいです。