最近メディアでも頻繁に取り上げられている注目の歯周病治療器の実体験&説明会セミナーに参加してきました。参加希望者多数のため年内の予定がほぼ満席状態の中、先日追加講演会決定という報を受け、参加希望をクリックしたら受け付けていただきました。やや斜めから見るスタンスで臨んでいるような私のようなものが、高い興味関心を持って、先々の予定を押さえられている先生方を差し置いて参加することに後ろめたさを感じながらも聴講させていただきました。結論から申しますと、そのコンセプトと技術的な物に関しては素晴らしいと感じました。さすがに東北大学発のシーズから開発されたものだけはあるなぁ、といったところです。もし自分が今受験生で歯学部を志望していたら迷わず東北大学を目指すことでしょう。それはさておき、実際の臨床に応用するかどうかということになるとどうでしょうか。やはりメディアでの取り上げられ方もあるのですが、ラジカル殺菌という側面だけが脚光を浴びているようでして、それが効果を発揮するには患者さん本人のブラッシングに対する意識改革と行動変容がなにより重要でそれが前提になるという事実があるようです。歯周病治療に関しては、多くの歯科医院が日本歯周病学会が示す「歯周病治療のガイドライン」に沿って、保険診療を軸に治療を進めていきます。その一連の治療の流れの中にこの治療器を導入することになると費用的な負担を強いなければなりません。ランニングコストだけで歯一本当たり約3,000円かかります。あとは歯科医院側の都合ですが、投資回収費、その他もろもろ含めて最低でも歯一本当たりの一回の治療費は1万円を超えるでしょう。そして何よりも重要なのが先にも述べましたが、報道されない側面、患者さんのブラッシング行動をスマホアプリを用いて管理(少し強い言い方ですが)していくことです。私は導入費用(歯科用診療台の値段よりもはるかに高価です)等よりなにより、この部分にハードルがあるのではないかと思います。もし導入するなら、もっと歯科医院各々の治療コンセプトを重視して、ラジカル殺菌効果を存分に生かせる用い方をするのが良いように感じました。例えば当院なら、高齢者や有病者で外科的治療が困難で金銭的に余裕のある方を対象にして、通常の歯周病の定期メンテナンスと並行して、この治療器を用いた殺菌力を応用した療法の2本柱で歯周病管理をしていく、といったところでしょうか。まぁ、何を語っても導入しなければ絵に描いた餅ですが、今しばらくは業界と世間の動向を見守ってみます。