このお話も三題噺です。
前回のお話とはまた違ったお話のようです。
言うなればそう、ふわふわとした綿菓子のようなお話ですね。
こちらの本も棚に並べておきますので、宜しければお読みください。
ある、寒い日。
家族みんな出かけて一人になってしまった家で、璃玖(りく)はお気に入りのマグカップに入った、
あったかいアップルティーを飲みながら家族の帰りを待っていた。
「お父さんとお母さんはお仕事だから…買い物に行ったお兄ちゃんが一番早く帰ってくるかなぁ」
璃玖は、まだかなぁ、まだかなぁ、とわくわくしながらソファーに横になり、脚と二つに縛った長い髪をピコピコさせている。
その時、目の前に絵本が落ちていた。
「あのお話だぁ…」
璃玖は嬉しそうに本を読み始める。
そのお話は、悪竜から姫を救った騎士が、姫を迎えに来る約束をし、その証に指輪を渡して旅に出ていく、というお話だ。
よく兄に読んでもらっているお気に入りで、特に挿絵の指輪がとても綺麗で、璃玖は気に入っていた。
璃玖はお気に入りのページを開く。
そこにはとても綺麗な指輪を指にはめている姫が描かれている。
「綺麗だなぁ…」
キラキラとした瞳で璃玖は絵を見る。
「璃玖もこんなのほしいなぁ…」
そういって嬉しそうに璃玖は微笑んだ…。
「…く、璃玖?」
「ん・・・?」
璃玖が目をあけると、そこには兄の瑞葉(みずは)がいた。
「お…にぃ…ちゃん…?私…寝ちゃったんだ…」
璃玖はいつのまにかソファーで寝ていたようだ。
「大丈夫か?」
瑞葉は、年の離れた妹である璃玖をとても心配し、アップルティーを作ってくれていた。
「大丈夫。本読んでたら眠っちゃっただけ」
こく、と暖かいアップルティーを飲みながら、璃玖は笑顔で答える。
「よかった。帰ってくるの遅くてごめんな」
瑞葉は璃玖の頭を優しくなでなでとする。
それにううん、と璃玖はにこにこして返事をする。
「何の本読んでたんだ?あ、これか」
ソファーの上の絵本を見て、瑞葉は微笑む。
「またその本読んでね、お兄ちゃん」
にっこー、と満面の笑みで璃玖は言う。
「ああ。また読むよ。あ、そうだ」
ガサゴソと袋をあさりだした瑞葉は、何かを見つけたようで嬉しそうに微笑んだ。
「璃玖」
「?」
首をかしげる璃玖に瑞葉はなにかを渡した。
「プレゼントだよ」
綺麗な包装紙に包まれているものは…。
「くまさんだぁ!」
かわいいくまのぬいぐるみだった。
「ふわふわしてる!」
ぎゅー、と璃玖はむいぐるみを抱きしめる。
「ありがとう、お兄ちゃん」
花のように微笑む璃玖をみて瑞葉も嬉しそうに微笑む。
「璃玖、くまのリボンを見てごらん?」
「なぁに?えーと、あっ!」
璃玖がぬいぐるみの首にあるリボンを見てみると、そこには指輪が結び付けられていた。
「騎士がお姫様に送った指輪に似ていたから買ってきたんだ。前からほしがってただろう?」
その指輪は絵本とそっくりだった。
「すごい綺麗」
璃玖は目をキラキラさせて見ている。
「璃玖の指にはまだ大きいけれど、璃玖が大きくなれば指にピッタリになるよ」
「え~」
う~、と頬をふくらませた璃玖に、瑞葉は笑いながら言った。
「お姫さまだって騎士が来るまでずっと待ってたんだ。璃玖だって待てるだろ?」
璃玖は指輪を眺めると、顔をあげて瑞葉をみて笑顔でうなづいた。
「うん!璃玖待てるよ!」
「よし。じゃあそれまで指輪を大切にするって約束しような」
「わかった!約束だよ!」
二人は笑顔の約束をした…。
それから、何年か後。
約束が守られたかどうかは定かではないが、ある少女の部屋に飾られている、どこか見覚えのあるくまのぬいぐるみの首元のリボンには、指輪のようなものが付いている痕跡がのこっていた――…。
おしまい