時々お酒をご一緒する俳優座の女優さん
桂ゆめさんが出演する「桜の園」を
六本木俳優座劇場に見に行った。
高校時代チェーホフの小品「たわむれ」を読み、
皮肉だけどロマンティックな物語運びに惹かれる。
大学では英文学の講義で、星新造先生(たぶん星新一さんと兄弟)が
チェーホフが描くのは「スライス・オヴ・ライフ」だと語っていた。
その後、さほどチェーホフと親しかったわけではない。
「桜の園」を何度かお芝居で見て岩波文庫を読んだぐらいか。
瀟洒な屋敷暮らしが長かったせいで
浪費癖がなかなか抜けない年老いた女主人ラネーフスカヤ。
地方の名所である桜の園の持ち主だ。
彼女はパリから戻ってきた。
養女のワーニャ(ゆめさん)は、ストイックな倹約家。
白いレース襟・黒いシックなロングドレスを身にまとい、
てきぱきと家事を遂行する。
ワーニャは日頃はクールだが、理不尽な対応や侮辱を受けて
自尊心を傷つけられると感情をあらわにする。
ワーニャは新興企業家のロパーヒンを憎からず思う。
彼も彼女に心を寄せるが、自らは何も言い出せず。
自由になりたい、恋愛を成就したいと考えながらも
既成の社会の枠からはみ出せない。そのもどかしさ、
恋に揺れる気持ちをゆめさんは切なく演じていて、
舞台映えしたし、もっとも共感する人物像だった。
豪邸のセットや小物は簡素ながら重厚感があり。
淡々とした物語の随所にちりばめられた
ユーモラスな演出に心なごんだ。