概要
いたばしボローニャ子ども絵本館は、2002年(平成14年)に廃校になった板橋第三小学校の一室を改装して設置された絵本の専門図書館です。1981年(昭和56年)に板橋区立美術館で開催された「ボローニャ国際絵本原画展」をきっかけとして、板橋区とイタリア・ボローニャ市は絵本を通じた文化的な交流を深めてきました。1993年(平成5年)からは、ボローニャ国際児童図書展事務局から海外絵本の寄贈が始まり、2004年(平成16年)9月15日に寄贈された絵本を直接手に取れる施設として、板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館が開館しました。翌2005年(平成18年)7月には、板橋区とボローニャ市は友好都市を締結するに至っています。現在、いたばしボローニャ子ども絵本館はボローニャ市から寄贈された海外絵本を所蔵。全国でも珍しい海外絵本の専門図書館として知られています。
施設
廃校になった板橋第三小学校の3階の一室を利用し、世界約85カ国25,000冊の海外絵本を所蔵。本は館内での閲覧に限り、貸し出しは行っていません。ただし、団体向けに展示用貸し出しは受け付けています。
(左)国別に分類された絵本。(右)「グリム童話」などがある世界の名作えほんコーナー
(左)有名作家えほんコーナー。(右)靴を脱いで使うフリースペースには「日本のえほん」「赤ちゃんのえほん」「アジアのえほん」が並ぶ
(左)仮訳付えほんコーナー。(右)日本の絵本と海外版が並ぶセットえほんコーナー
(左)大きなベンチを備えた閲覧スペース。(右)絵本に囲まれた閲覧席
(左)「いたばし国際絵本翻訳大賞」の歴代テキストが並ぶコーナー。(右)踊り場の絵本館展示スペース
ここもポイント!~世界の絵本が楽しめるブックフェア
いたばしボローニャ子ども絵本館ではボローニャ国際児童図書展(ボローニャ・ブックフェア)事務局から寄贈された絵本を紹介する「世界の絵本展」(ボローニャ・ブックフェア in いたばし)を開催。絵本館内では随時蔵書を活用した企画展示を行っています。
今年はボローニャ国際児童図書展に出展され、イタリアから届いたばかりの32カ国410冊の児童書の中から世界各国の絵本を紹介します。「長くつ下のピッピ」の作者リンドグレーンや「L'Amant(ラマン)」の作者デュラスの新作絵本をはじめ、ブックデザインとして優れた児童書に贈られるボローニャ・ラガッツィ賞の今年の受賞絵本も展示。絵本館に寄贈された本の中から選び出した「世界の言葉」60言語以上の絵本コーナー、恒例となった翻訳大賞コーナーなども設けられます。
・日時:8月16日(土)~24日(日)9:00~19:00 ※16日は11時開場 18日は閉展
・場所:成増アートギャラリー 板橋区成増3-13-1(成増図書館向かい)
・入場料:無料
ここもポイント!~国際理解を育む翻訳大賞
板橋区では1994年(平成6年)から外国文化にふれ、国際理解を育むことを目的に「いたばし国際絵本翻訳大賞」を選出しています。イタリアで開催された「ボローニャ児童図書展」に出展された絵本の中から、英語とイタリア語の絵本をテキストとして1冊ずつ選び、それを翻訳した作品の中から大賞を決定するというコンクールです。海外で出版されて間もない未翻訳の絵本に出会える機会として人気があり、日本各地から応募があります。最優秀翻訳大賞受賞作品の中には出版されたものもあり、「青少年読書感想文コンクール」の課題図書や「日本絵本賞読者賞」に選ばれるなど、高く評価された作品があります。絵本館では今までの入賞作品を展示しています。
図書館からのメッセージ
板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館館長
加藤博司さん
板橋区は、2015年(平成26年度)に、「いたばし未来創造プラン」を策定しました。成長戦略の中で「文化・スポーツによるにぎわい創出」が掲げられ、当館も「絵本館の魅力」を広く発信するため、来観者の利便性を高めるサービスに努めています。
蔵書の絵本は海外のものがほとんどなので、通常の図書館で使う分類番号が使用できません。国別、作者名をアルファベット別で分類するなどの工夫を試みていますが、それでも本を探すには手間はかかるかもしれません。しかし、その手間には自分の好みと合う本を見つけ出すという楽しみがあります。思わぬ発見もあり、まるで宝探しをしているような気持ちになるでしょう。
年間の来館者は約5,800人、1日平均20人という小さな絵本館ですが、近隣の子供から、遠方から来館する大人の方まで、幅広い年齢層の方に活用していただいています。絵本の言語は外国語であっても絵を熱心に見入る子供たちや、日本語訳テキストと照らし合わせながら何時間も読み耽る大人たちなど、絵本の楽しみ方は人それぞれです。
現在、取り組んでいる課題は図書館の特徴を生かしたイベントをさらに充実させることです。子供向けの「おはなし会」では、手遊びや外国語での読み聞かせも行っています。いろいろな国の絵本の中から「食べ物」のイラストを探して「私のお気に入り絵本」として展示するなど、ひねりを加えた催しにも取り組んでいます。外国絵本を有効活用するには子供の目線だけでなく、大人の目線も大切です。さまざまな点において創意工夫していきたいと思っています。
EDITORIAL NOTE 日本人も高く評価された世界最大級の絵本原画コンクール
館名に使われる「ボローニャ」は北イタリアの都市名である。ボローニャ市では1967年から毎年3月にボローニャ国際児童図書展(ボローニャ・ブックフェア)を開催。世界で最大級の規模を誇る絵本原画コンクールで、子供の夢が詰まった作品が世界各国から集められ、イラストレーターの登竜門としても知られている。いたばしボローニャ子ども絵本館には、2013年3月に開催された国際児童図書展で最優秀賞を受賞した絵本作家・刀根里衣さんの作品が展示されている。刀根さんの作品は、きめ細やかでメルヘンチックな画風でありながら、力強い一面もうかがわせる。絵本の魅力がじわりと伝わってくるのは、この図書館のロケーションによるところが大きい。元小学校の一室に開設された図書館だけに、その空間は木の温もりにあふれ、懐かしさを感じさせる。絵本にいそしむには格好の雰囲気を漂わせている。(Tipsy Chico)
刀根里衣さんの作品の展示コーナー
板橋区立いたばしボローニャ子ども絵本館
利用案内
休館日:毎週月曜日、月末日 ※祝休日と重なる場合は、直後の祝休日以外の日
開館時間:火~日曜 10:00~17:00
アクセス
住所:東京都板橋区本町24-1 地図
電話番号:03-3579-2665
ホームページ:http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/002/002177.html
取材協力_板橋区立いたばし子ども絵本館 取材_湘南文学舎