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「フッフツ・・ハッハハハハ」

高らかに笑うその声は図書館中に響き渡った。

二人はその場を振り返り、瞳に飛び込んで来たリリィの姿は美しくそしてトゲのあるホワイトローズの様であった。

「そうよ、ケイコ。あなたの言っている事は全て正解よ」

敬子とクーモが待っていた棚の真後でリリィが二人をにらめ付けていた。

そのリリィの笑顔には勝ち誇ったような自信が伺えた。

「私はねケイコがこの図書館に来た時から見ていたの。だけどね、それ自体は偶然だったのよ、入り口近くの本を読んでいた私はあなたが門番の二匹のウサギと入ってくるのを見たの、その時に気が付いたのよ。

このまま普通にこの図書館を進めば一番初めに出会うのがクーモだって事を、クーモが山済みにしてあった本は前から気が付いていたわ、だけど別にクーモが選ぶ本なんか私には何も興味はなかったの、もしあなたがクーモと出会い何時までも自分の一冊を探し出せないでいる子供のクーモを可愛そうと思ったのならきっとクーモの人生の一冊を一緒に探してあげるのではないかと思ったのよ。

そしたら案の定、あなたは私の思っていた通りにクーモと出会い山済みになっていた本へ向かいその中からクーモの本を選ぼうとした。

後は簡単だったわ、私はその前にクーモの山済みの本へ先回りをして隠してしまえばあなた方はその本欲しさに私の言うことを聞くって事よ」

そう説明するリリィの目線はすでにクーモの足元に向かい、どうにも気になって仕方がないようであった。

「説明は終わりよ、さああなた方が選んだと言う私の一冊をこちらによこしなさい」

リリィがクーモに向かって手を出すとクーモは足元に置いてあった本を手にし、胸で抱きかかえた。

「クーモ!よこしなさい」

その強い口調にもクーモは怯まなかった。

「嫌だね!それよりも俺の本は何処にあるんだ?」

「あなたの本?ああ、それならこの本棚の三つ程後ろに置いてあるわ」

胸に抱えた本を敬子に渡し、クーモは一目散にリリィの現れた裏の棚の三つ先まで走って行き自分の残していた本を見つけた。

「あった!・・・ん?」

そのクーモの表情は安堵の表情からまたしても怒りの表情へと変わっていった。

クーモはその場で向きを変え自分の本をそのままにしてリリィに向かって走って行った。

リリィの前に向かうとクーモは真っ赤な顔でリリィに怒りをぶつけた。

「リリィ、本の数が少ないじゃないか」

真っ赤な顔でそう言うと、リリィはクーモに向かって言い返した。

「クーモ、あなたの本の中を見た?」

「中?何だよ、それ?」

「いいからあなたが残しておいた本を開いて見てごらん」

そう言われるとクーモは何が何やら解らないまま、その場からまた本を残してきた場所まで戻って行った。

二十冊はあろうか、その山済みされた一番上の本をクーモは手に取り表紙を捲る、そして次を捲る。何ページを捲っても何も書かれていないその本をクーモは呆然と見つめていた。

そして次の瞬間、その山済みになっている本の山を怒りのままに手で払い除け、崩れた本を一冊、一冊見回した。

「なんでだよ」

その悲痛な声は木霊し何度も敬子の耳に響いた。

落胆


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今、敬子は心地よい時間の流れを感じていた。(なんて素晴らしい人生なのだろう、こんなにも劇的で美しい人生が世の中にあったなんて・・)

読みきった本の余韻を全身で感じながら敬子は少しずつクーモの元へ戻ってきた。

閉じた瞼をゆっくり開き黙って敬子を見つめているクーモに向かって手を伸ばした。

その手をクーモは握り返して敬子を起き上がらせた。

「クーモ、この本よ!」

敬子はクーモに満面の笑みを投げかけた。

「本当に?本当かい」

そう半信半疑でクーモが敬子に聞き返すと敬子はこれ以上のない自信のある笑顔で答えた。

「本当に、素晴らしい女性だったわ、その美しさは生い立ちの不幸がより一層後半で彼女の人生の美しさを引き立たせる程に素晴らしいものだった。私はこれ以上の本をこの後、探す事なんて出来るのか疑問すら思うわ」

その言葉にクーモは安堵したのかその場に腰をついた。

「良かった、本当によかった!これでリリィから俺の本を取り返せる!ありがとう敬子」

「さあクーモ、ゆっくりしている場合じゃないわよ、この本をもってリリィの所へ行くわよ」

そう言うと敬子とクーモはその場を跳ね上がるように立ち上がった。

クーモがその本を右手に抱え敬子と歩く足取りは一刻も早く自分の本を取りも出したいと言った意気込みさえ感じ、先程までリリィに対して抱いていた憎しみのような悔しさは消えかかっていた。

敬子とクーモはリリィが待つ場所までの道のりを今まで読んだ本の話や過去に読んだ本の話を繰り返した。

それは互いに今まで得られなかった会話を共有すると言った楽しい時間であった。

長い時間歩き続け二人はリリィと出会った本棚の前に着いた。

「この本棚よね!」

そう敬子がクーモに聞くとクーモは本棚の本を確認して大きく頷いた。

敬子にはあれから何日、どの位の時間を費やしたのか感覚はないが、とても長い時間を費やしたような感覚があった。

「ここだよ」

そうクーモが言うとその場でクーモは大きな声を出しリリィの名前を叫んだ。

「リリィ、リリィ。戻ってきたぞ!」

クーモの声は図書館中に響き渡ったがリリィからの返答はなかった。

その場に静けさが戻り敬子とクーモは顔を見合わせた。

「どうしたんだろう?」

そう敬子が言うとクーモは「ここで待つ!」そう一言だけ言ってリリィの本を足元に置き黙って座り込んだ。

幾ら待ってもリリィは現れず、やがてクーモも敬子も少しずつ不安が込上げてきた。

ここで初めて敬子はこの図書館の中について疑問に思っていた事をクーモに聞いてみた。

「ねえクーモ、この図書館の中はどの位大きいの?」

「ううん?」

クーモは悩んだ様子で答えた。

「俺も、ここに来て長いんだけどこの本の棚の終わりは見た事がないんだ」

「えっ、じゃあ、クーモですらこの図書館の正確な大きさを知らないの?」

「うん」

そうクーモは申し訳なさそうに答えた。

「それとね、クーモにリリィ、ここには私たち以外にも人はいるの?」

「居るよ、いっぱい!でもね、ここで人に会うのは本当に珍しい事なんだよ、だってこれだけの大きさだろ、幾らか先までは見えるけどずっと先になると白く反射して先が見えないだろう、だから先にだれがいるのかさえ解らないんだ、俺やリリィ、ケイコと三人が出会う事って言うのは本当に珍しい事なんだよ!」

(ここでは人と出会う事がそんなに珍しいのに何故、リリィはクーモの本を隠したんだろう?リリィにはクーモが何時戻ってくるか解らないだろうし、別に嫌がらせなら隠したままでも良い事、もしクーモに自分に合う本を探させて本当に探して来られると思ったんだろうか?)

敬子にはリリィの真意が以前より知っているクーモに対する嫌がらせと言うよりも、もしかしたら自分に対して行った行為ではないのかと言う疑問に変わってきた。

「ねえ、クーモ。もし、私がこの図書館に来た事を始めからリリィが気付いていたらどうかしら?」

「どうって?」

クーモには敬子が考えている疑問はみじんもなかった。

「クーモが最初に言っていた“言葉の意味が解らない”と言うのはリリィも一緒だったんじゃないかしら、この図書館でリリィも最初は真剣に自分の美しさを次の世界でも約束されるような本を探していたんじゃないかしら、でも時間が経つにつれ読んでいる本の言葉に解らない意味の言葉が出てきた。クーモの場合はそれでも、もしかしたら自分の一冊がこれかもしれないとその本を除けていたけどリリィにとっては新しく来た人間に自分に合う本を探させたほうが早いと思ったんじゃないかしら」

そう言うとクーモの表情も一変して来た。

「それじゃあ、リリィは俺の本を隠して自分の一冊を俺に探させたかったのではなく始めからケイコに自分の本を探させるために俺の本を隠したって事かい?」

「そう、もしかしたらリリィは私がこの図書館に入ってきた時から何処かで私を見ていたのかも知れない、あの入り口から一番近い所にいたのはクーモ、あなたよ!リリィはそれを知っていてもしかしたらこんな展開になるかもしれないと思い急いでクーモの山済みにしている本を隠したんじゃないかしら、そして私達は見事にリリィの策略にはまってリリィの本を探し出して来たって事じゃあないのかな」

そうクーモと敬子が話しているその後ろの本棚からかすかな笑い声が聞こえてきた。


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「たしかこの棚だったな」そうクーモが言うとクーモは初めて敬子と出会った場所に向かい読みかけていた本を棚から抜いた。

「ここ?」

敬子にも見覚えがある棚の位置だった。

自分が始めてこの図書館に入って来てまずは、この図書館がどれほど大きいか歩いてみようと思い、間も無くしてここでクーモと出会ったのである。前を見ると、そこにはかすかに図書館の入り口が確認できた。

「そうだ、ここだよ。ここで初めて敬子と出会ったんだ」

「それで、その女優と言う言葉が入った本は何処にあるの?」

気持ちが焦る敬子の声は少し上ずっていた。

「たしか、この本だよ」

取り出したのは今までクーモが読んでいた本のほんの二、三冊横の本であった。

その本はとても厚く重くリリィが望む女性の凄さまで感じ取れるくらいの雰囲気を持っていた。

「まさかこんな近くにあったなんて」

そう敬子が呟くとクーモもだまってうなずいた。

「まさかこの本があのリリィが望んでいた人生の本かも知れないなんて、考えてもみなかったよ」

「貸して」

クーモがその本を棚から抜き敬子に渡すと敬子はその場に腰を落としゆっくりとその厚い表紙を捲って1ページ目からその本を読み始めた。

時間はゆっくりと過ぎていった。

その本を読む敬子の姿をクーモはただ、だまって何時までも見つめていた。

そして敬子は1ページ、1ページ丁寧にその本を読んだ、その本の人生はきっと凄まじい人生であったのだろう見ているクーモにも、その本を読む敬子の表情でその人生が理解出来た。

読み始めこそ楽しそうな表情であった敬子もページをめくるにつれ悲しみや辛さと言った表情に変わっていった。

その敬子の表情だけでこの本の主人公の生い立ちは決して幸せとは思えない内容であったのだろうとクーモは感じた。

しだいに本も中盤にさしかかると幸せの始まりかの様に敬子の表情も変わり温かく嬉しそうな表情に変わって行った。

あれだけの厚い本が見る見るめくられて行き、敬子はまるでその本の主人公その物になっているようにクーモには思えた。

本も後、数ページを残して敬子の瞳からは大きな涙が幾つも幾つも流れ落ちていた。

しかし、その表情は先程のような家族を思い涙していた様な悲しい印象はクーモには感じ取れなかった。

そして最後のページを捲ると敬子には達成感とも充実感とも取れるようなこの本の人生を送った者のみしか得られないような最高の笑顔をクーモに投げかけた。

「はあ、終わった。」大きく息を吐いて敬子が言った。

「ちょっと疲れたわ、クーモ」

敬子はその場で横になり仰向けになって目を閉じた。その様子をクーモはただ黙って温かく包み込む様に敬子を見つめていた。