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「何?この内容、どこが私の一冊なの?」

そうリリィが言うとその手にしている本を荒々しく閉じテーブルに放り投げた。

(あの二人、絶対に許さない・・)

突然リリィは席を立ち二人が待っている本棚に向かって走り出した、思い起こせば起こすほどリリィの怒りは収まらない。

(どうやってあの二人にこの怒りをぶつけてやろう)

走りながら思う事はそんな事ばかり、今となってはクーモの本などではもうこの怒りは収まりそうになかった。

怒りに任せて走るリリィが二人の所に着くまでにはそう時間はかからなかった。先程の本棚で二人を見つけたリリィの顔は真っ赤になり引きつってさえ二人には見えた。

「クーモ、ケイコ・・」

その声は地の底から振り絞るかのような低い声で二人の名を呼んだ。

その声にクーモは後ずさりをし、若干敬子の後ろに回りこむようにリリィを見つめた。

「あら、早いわね。リリィ。」

涼しげな敬子の声はリリィよりもクーモの方が以外だった。

「早いですって?あんな本を私に渡して何か私の一冊よ!」

そう言うリリィの顔を不思議そうに敬子は覗き込んだ。

「ふう~ん」

その何ともいえない反応にリリィは怒りがはぐらかされているのかと思いキツイ口調で敬子に言った。

「私は私の美しさを永遠と残せる人生の一冊を希望したのよ!あの本のどこに美しさがあるのさ!」

そうリリィが言うと敬子は薄ら笑いさえ浮かべてリリィにむかって聞き返した。

「あなた、あの本をどこまで読んだの?」

「それは、まだ幼年期辺りかしら・・」

その一言を聞くと敬子はいきなり口を手で押さえ込んだ、しかし押さえ込んだその口からは小さな笑い声が少しずつこぼれ始め次第にその声は大きく変わっていった。

その笑い声にリリィがあっけに取られているとその後ろのクーモまでもが訳もわからず笑い出した。

「あなた達、何が可笑しいの」

「だって、あなたこそあの本の本当の凄さがまるっきり解ってない。人生、生まれて来た時から死ぬまで裕福で美しい女なんていないのよ!あなたが真の美しさを手に入れた人生を送りたいのならあの本を最後まで読んで御覧なさい。もし、あなたがあの本を気に入らなかったら私があの本を人生の一冊として受け取るわ。」

そう言うと敬子はリリィに向かって言い切った。

その言葉にクーモは先程あの一冊を読んでいた敬子の様子を思い浮かべた。

(たしか、敬子は悲しみや辛さと言った表情をしたり、とても嬉しそうな表情をしたりしていたな。きっとあの本の生い立ちには辛く悲しい事があったのだろうがそれ以上の人生の喜びが終焉では迎えられたのだろうな)

そうクーモはあの時の敬子の様子を思い浮かべた。

何とも言い返せないリリィはその場で敬子を睨み付け一歩も動かず考えた。

(ケイコがここまで言い切るにはやはりあの後、余程あの子は美しい女となって生涯を謳歌したに違いない)

「解ったわ、もしあなたの言葉に嘘があったらケイコだけではなくクーモにもこの先、嫌と言うほど虐めてあげるわ、覚えてなさい。」

そう言うとリリィは背を向けもと来た道を歩いて行った。


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「ごめんね、アン。ママ、撮影の事ばかりを気にしていてアンの本当の気持ちに気づいてあげられなくて、明日、映画会社に話して契約を少し変更してもらえるよう話してみる。もう少し、学校に行けるように話すから・・」

「うん!」

顔を上げたアンは運転席の洋子に飛びついてその腕に顔を埋めた。

翌日、洋子は早速、映画会社と交渉しアンの拘束時間の変更や待遇面に関して再契約をし直した。決してその内容は洋子達には有利な条件ではなかったがアンの気持ちを考え、その条件を承諾した。

翌朝からアンは学校へ通う事となった。朝と帰りは、洋子が車で送り迎えをして撮影現場にアンを連れて行った。アンにはそんな普通の子が送るような日常がとても大切だった。毎日会う友達はアンを普通の同級生としか見ず、勉強や遊びの話しなどで話しは尽きなかった。そんなある日の授業中、教室に校長先生が真っ青な顔で飛び込んできた。アンの担任と校長先生は何やら話し込み担任の先生までもが顔色を変え真っ青なになっていった。

「アン、すぐに帰りの用意をして!」

まだ学校に来て一時間ほどしか経っていないアンにはその担任の言っている意味が良く解らずにいたが、せき立てる先生の指示通りアンは帰りの支度を始めた。回りの子供たちもその異様な雰囲気に日常とは違う何かを感じたのだろうアンが教室を出るまでそのザワツキは治まらなかった。

外に出ると一台の車の前に映画会社の男がアンに何度も手招きをしていた。車に走り寄るとその男はアンに向かって話しかけた。

「アン、ママが車で事故を起こしたんだ、今から急いで病院に行くからいいね。」

そう言うとその男はアクセルを全開に病院に車を向けて全速で向かった。

病院までの道をどうやって来たのかアンにはまるっきり記憶がなかった、あるのはその男が一生懸命運手している横顔と何やらアンに向かって言葉をかけている様な仕草だけだった。

アンこっち、その声は撮影現場で何時も話すメイクのナンシーの声だった。

「ナンシー!」

その顔は今にも泣き出しそうな弱々しい声だった。

「今、ドクターが洋子を見ているから、心配ないよ!アン」

そんなナンシーの声も震えていた。

その朝、洋子はアンを学校に送った後、いつもの帰り道を車の流れのままに走らせていた。信号が赤になり停車していた洋子の車に歩道を歩いていた一人の黒人がいきなり車のドアを開けたと同時に右手に持っていた銃で洋子に向かって二発連射した。助手席にあった洋子のバッグをつかみその黒人はその場かから逃げ去っていった。洋子はその場から救急車でこの病院へ運ばれ緊急手術をする事となった。映画会社には直ぐに連絡が入り一人はアンの迎えに、そして数人がこの病院へ向かった。

手術は昼を過ぎても終わらなかった。アンの周りには映画関係者の人間が入れ変わり立ち替わり近くを離れずにいたがアンはただひたすら手術室の明かりだけをぼんやりを見つめているだけだった。

手術室の点灯が消え一人のドクターが出てきた、その姿を見ると全員がドクターの周りに歩み寄った。

「洋子はどうなのですか?」そうナンシーが聞くとドクターは首を振り死因の説明を始めた」

「胸部の弾痕が肺に到達してほぼ即死に近い状態でした。この病院に運ばれた時には既に心臓が停止常態でした。」

そう説明しているドクターの背後をするすると一人だけ手術室のドアを空け手術台へ向かってアンは歩き出し洋子の前で立ち尽くし呆然としていた。

「アンは?」

関係者の一人が突然叫んだ。誰もがその場を見渡したがアンの姿はどこにも見当たらなかった。

「もしかして・・」

そう言い出したのはナンシーだった。

手術室のドアを開け皆がみた光景はアンが一人洋子の手を握り涙も見せず呆然とシーツを被った洋子を見つめているアンの姿だった。そのアンの姿に誰しもが映画のワンシーンを見ているようだった。


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その後もアンのテレビ出演は続き一年もした頃であろうかアンが7歳の冬にデイビスがアンの元を離れて行った。

当初、賛成していたアンの芸能界での活動にママである洋子は過剰に力を注ぎ過ぎ、いつの間にか家庭の事はまったく行うことがなかった。

アンを挟んで二人の教育方針はまったく異なりデイビスの学業優先とした意見に洋子はまったく聞く耳をもたなかった。小額ではあったがアンのギャラは二人で生活を送る程度にある事から洋子はアンの芸能活動により力を注いだ。

アンの仕事はその後も順調に続き十歳にして始めてハリウッドからの映画依頼がった。洋子はカナダでの生活を捨てアンと共にロサンゼルスの小さなアパートを借りそこから撮影現場に向かった。

「アン?最近元気がないわね」

撮影現場に向かう車の中で洋子はアンに質問した。

アンには、この映画撮影がとても大切だと言うことが解っていた。ハリウッドに越してから撮影現場やそのスタッフとの会話などアンが話すその全てを洋子は喜んだ。そんな洋子に本当は学校に行きたかった事などアンは話せないでいた。

「そんな事ないわ、撮影は毎日楽しいし・・」

そんなある日、アンは撮影現場で倒れる事となった。その場にいた洋子の動揺は尋常ではなく病院に運ばれるアンに片時も離れようとはしなかった。

病院での診察も終わりドクターに洋子が呼ばれた。

「アンは過労ですね、余程疲れているようです。点滴を今、打っていますからそれが終わり次第に帰れます。それよりもアンの治療中に自分は大丈夫だと何度も言い張り早く撮影現場に帰らせて欲しいと何度も訴えて来ました。アンのあの態度は少し異常ですね精神的に少し追い詰められているような感があります。何か覚えはありませんか?」

そのドクターの言葉にただ呆然とする洋子だった。

帰りの車の中で洋子はアンの様子を聞いてみた!

「アン、撮影少し休もうか」

アンは驚いたように洋子に言い返した。

「どうしてそんな事を言うの?私が倒れたから?ほんの少しめまいがしただけじゃない皆、大袈裟なだけよ!」

そう言い張るアンに洋子も少し不安を感じ始めた。

「アン、本当のことを言いなさい。」

今までにない厳しい口調にアンは驚いたように俯き(うつむき)黙り込んだ。そして、後、もう少しで家に着く頃アンが話を切り出した。

「私、本当は学校に行きたいの、でも撮影を休むとママ嫌でしょ!」

そう言うとアンはまた黙り込んだ。

この言葉に洋子はあの時のデイビスの言葉が蘇った。

「洋子、アンはまだ小学生なんだよ、いくらテレビや映画の話があっても大人の世界に入るにはまだ早すぎるんじゃないか?」

しかし、当時の洋子はアンが町中や、ましてテレビドラマが人気になり自分さえもが社会の注目を浴びている様な錯覚におちいっていた。