ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________

敬子も、テンもサンも一頻り涙を流し切った後、敬子はテンに質問をした。

「そう言えばテン、どうしてあなたたちは自分の素性を明かしたの?さっきの説明では私にあなた達の素性を教えてはいけないんじゃないの?」

そう敬子が聞くとテンが困ったように答えた。

「実はそうなんじゃが、お母さんの手にある白の本のおかげなんじゃよ」

「この白の本のおかげ?」

「そう、その白の本はそもそも誰でもが手に出来る本ではないんじゃよ」

「誰でも・・」

「そう」大きくサンが頷いた。

「その白の本と言うのは本が相手を選ぶんじゃ、だからそうそうこの図書館の中でもお目にかかることがない代物なんじゃ、しかしなぜかそれをお母さんが南のテーブルの上で手にする事になってサンは慌ててわしの所に戻ってきたんじゃ、本当はサンは適当なところで居なくなるはずじゃったんじゃがその白の本を見て自分でどうしてよいか解らなくなってしまってしまったんじゃ」

テンの話を聞き手にあるその白の本を見つめ敬子は呟いた。

「本が相手を選ぶ・・・そういえばこの本の何ページ目かに手紙が差し込んであってその手紙にその様な事が書かれていたわ」

そう言うとテンもサンも驚いたように二匹は顔を見合わせた。

「手紙?」

「一枚だけだけど便箋でその様に書かれていたわ」

「一枚・・・」

テンがそう言うとサンが呟いた。

「神様の手紙?」

「どうやらそうみたいじゃな」

二匹は小さな声で呟き合って何を話しているのか敬子には意味不明であったが二匹のその驚き様はただ事でないことだけは理解できた。

「そんなにその手紙はすごい事なの?」

屈託なくテンに問いかけるとテンは困惑したように敬子に言った。

「その手紙は神様からの手紙なんじゃよ」

「神様からの?」

「そう、私たちだって会った事も話した事もないんじゃよ、その神様からじきじきに手紙を授かるなんてお母さんは何を考えてこの白の本手にすることができたんじゃ?わしらですらどうやてこの本と出合うことが出来るのかサッパリ解らないんじゃから・・・」

敬子はテンとサンの驚いた様子を見てその白の本を(めく)って先ほど読んだその手紙を見せようとした。

しかし、先ほどまであったその手紙は幾ら探しても本の間からは出てこなかった。

「何を考えてったって、私はただこの本棚から次の世の一冊を選ぶ事なんて出来そうにないからもし次に本に触れたらたとえその本がどうあれその本を自分の次の一冊に決めようと思っただけで南の端に行ったらテーブルの上にこの本が置かれていただけよ」

「そうなんだ」

何とも不思議そうにテンは聞いていたがサンが敬子に向かって語り始めた。

「お母さんは選ばれたんだよ、次の世に行く際に、ここではその人生を選べるのにそれをせず神様に身を任せたから神様がそれに答えてくれたんじゃよきっと、しかし、その新しい人生はこれからお母さんが一から作り出すものでそれは大変んな苦労が伴う人生かもしれないし、また逆にとても幸せな人生かもしれない、どちらにしてもこれからお母さんがこの本に書かれる物語を作り出す事に相違ないはずじゃ」

「本当にお母さんは神様に選ばれた事だけはいなめないね」

そうテンが言うとサンは敬子の顔を覗き込んで言った。

「そんな事だからその白の本のおかげで私たちは生前の名前を告げることが出来たんじゃよ、本当はさっき話した通りこの図書館を出るまで生前の事は話してはいけないんじゃがその白の本だけは特別なんじゃよ」

続きをテンが言い始めた。

「この図書館の約束事では図書館の中で次の世の一冊を決めてその本を持って出る時、案内人は始めて図書館の出入り口で自分の素性を明かしていいと言った約束事があるんじゃよ、しかしこの白の本はこの図書館の本ではないからその本を選んだ時からわしらはいつでもお母さんに自分の素性を語ることが出来たんじゃ」

「この本はこの図書館の本ではないの?それではこの白の本は何処から来たって言うの?」

「そうこの本は神様の本なんじゃ、だからわしらですら見るのは始めてなんじゃよ、だからお母さんがこの本と決めた時にこの図書館ので出入り口が光輝いたのはお母さんを導いた光なんじゃよ」

「導いた光?それでは、あなたたちは別に私に自分の素性を教えたからと言って何か問題がある訳じゃないのね」

テンもサンも敬子に向かって大きく頷いた。ホッとした表情で敬子は二匹を見下ろし白の本を見つめた。

手にした白の本を見つめていると目の前にある図書館の入り口からは少しずつだが扉が開き閃光が敬子と、テン、サンを照らし始めた。その眩い光はこの上なく温かく包み込む様に穏やかなで不安などのない気持ちがこみ上げてきた。

もう敬子にはこの図書館に来た時の不安な気持ちや悲しみはまったく感じることはなかった。光に包まれテンと、サンに連れられた敬子がその光の先に差しかかろうとした時、改めて敬子の手を握る感触が変わることに気が付いた。

敬子は視線を下げテンとサンを見ると二匹の姿はあの当時の優貴と沙紀の姿へと変わっていた。

「優貴、沙紀」

二人の名前を呼び改めて膝を落とし二人を抱きしめる敬子の姿は少しずつその白い光に溶けて行くように消えていった。

そして図書館の入り口は何もなかったようにまた次の訪問者を待つようにその大きな扉を少しずつ閉めていった。

何年、何十年経ったことだろう。

新しい命が今まさに生まれようとしていた病院の分娩室では今か今かと一人の男が廊下を行ったりきたりしている。同じような光景をこの廊下で幾万回繰り返された事だろう。

「おんぎゃ、おんぎゃ」

分娩室からはこの世に生を受けた力強い産声が響き渡った。

こうしてまた新しい人生がスタートするこの子の人生はいったいどんな人生なんだろう、天国の図書館で選んだ本の様な人生を歩んで行くのか、もしくはこの子があの白の本の持ち主なのかもしれない・・・


ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________

「私たちは案内人としてこの図書館へ来たんじゃが、この図書館の案内人となる者はこの図書館へ来た人間が現世で一番愛した者だけがここへ来る事を許されんじゃ、そしてその人間の案内を(おお)せつかるんじゃよ、しかしその事はこの図書館の扉を潜るまで語ってもいけないしその姿もこの図書館に来た人間にバレてはいけないんじゃ、私たちが何故ウサギか未だに解らんかい?」

そう言われても敬子には二人がウサギになった意味がまったく解らずにいた。

「んんん・・・」

幾ら考えても敬子にはウサギの意味が解らなかった。敬子はあの頃の優貴と沙紀の事を思い返した。当時、ウサギは優貴と沙紀の一番のお気に入りのキャラクターでよくお揃いのウサギの服を着せたものだと心の中で敬子は思っていた。

その心を読んでいるかのようにテンが敬子に言った。

「わしらのこの姿は生前の一番楽しかった、そして嬉しかった頃に一番頭に残った印象を形にしたもんなんじゃ」

「嬉しかった頃の印象?」

そうここではわしら案内人は何にでも変わることが出来るんじゃ、大概は生前の頃の最後の姿、老人か幼少の頃の姿に変わるものなのじゃがわしらは二人して当時、一番印象にあったこのウサギに変わって待つことにしたんじゃよ」

(そうだったんだ、あの頃、優貴と沙紀はどんな物でもウサギが着いていればそれは喜んでいたな、優貴には白いウサギを着せ沙紀にはピンク色の服を着せた事を今更ながらに思い出したわ。)

そう心の中で敬子は想っていた。そして改めてここにいる二匹が優貴と沙紀である事を敬子は実感した。

テンの隣で何やらもじもじとしているサンは何やら言いたげに敬子の方をチラチラと何度も見ていた。

「どうしたの?サン」

そう敬子が優しくサンに向かって話しかけるとサンが敬子に向かって甘えるように言った。

「わしは、沙紀の頃のお母さんの記憶がほとんどなくて北の端でヤンの姿のときに後ろから抱きしめられて本当に幸せだったんじゃ、嬉しくて、嬉しくて涙が止まらなくて体が震えてしまった程に、だから出来ればもう一度わしを抱きしめてほしいなと思って・・・」

サンは顔を赤らめ敬子に言った。

「まて、サン」

怒った様子で制止するかのように声をかけてきたのはテンだった。

「サンばかりずるいぞ。わしだって本当はお母さんに抱きしめて貰いたかったのに・・サンがどうしてもと言って駄々をこねるから許したのに、本当はわしだってあの頃の記憶がほとんどなくて、お母さんに抱きしめられた記憶すらないんじゃ、それをサンはわしが一度もそんな事をしてもらってないのに二度も自分だけしてもらおうとしてずるいぞ」

そう言って怒った表情でテンがサンに向かって怒鳴りつけた。

そのテンとサンのやり取りを見て初めて目の前にいる二匹が我が子である感覚が甦って来た敬子だった。しかし、その言葉を聞いて改めて敬子はどれだけ優貴と沙紀に寂しい思いをさせてしまったのかといった後悔が巡った。

「テン、サン止めなさい」

その言葉はわが子をいさめる母親のように温かく二人を包み込んだ。

「ハイ」

二羽は敬子の瞳をまっすぐ見つめ返事をした。

敬子は二羽の前にひざまずきやさしくテンとサンの肩に手をかけ二羽を優しく引き寄せた。

「優貴、ごめんね。ほんの少しだけお姉ちゃんだから本当は我慢していたんだね、偉かったわね、本当に寂しい思いをさせてごめんね」

そう言葉をかけられると敬子の瞳とテンの赤い瞳からは涙が溢れ出していた。

「だって、沙紀が沙紀が・・」

言葉にならないテンの叫びを聞き敬子は

「解ってる、解ってわ、本当に頑張ったわね、優貴はお姉ちゃんだもんね・・・」

母の優しいその言葉だけで優貴はもう返答が出来ないくらい心がいっぱいだった。

「沙紀もごめんね、突然あなたたちの前からいなくなってどれだけ寂しかった事だろうね」

サンもその言葉だけでもう涙が止まらず返す言葉が出ずにいた。

テンもサンもそして敬子も輪になってお互いを抱き合い長い旅の終焉を迎えるようにその想いを分かちあった。

テンとサンはそれからしばらくの間敬子にしがみ付き母親に甘える子供の様に泣き続けた。


ブログランキング ←読む前にクリック協力して貰えると嬉しいです。
__________________________________________________________________________________________________

敬子はどうしてテンがヤンに向かってサンと言っているか理解出来なかった。しかし、ヤンのその表情はテンに対して負い目を感じているかのように上目遣いでテンの方を覗き込んでいた。しかし、そのテンとヤンの関係が理解できない敬子の頭は混乱したままだった。そう言った状況を察してかテンが敬子に向って話しかけてきた。

「敬子、この人はヤンさんではあるけれどもそれは生前の姿なんじゃよ」

「生前の姿?」

「そう、わしらは何度か転生を繰り返しているんじゃよ」

「何回か・・」

その言葉を聞き、ふとヤンの方に目を向けるとその姿はヤンからサンの姿へと変わっていた。

「サン?どうして」

その言葉にテンが答えるように敬子に向って話しを続けた。

「実はサンがどうしてもお母さんと二人で話したいと言って聞き分けがなくてね」

「お母さん?」

「だってヤンさんのお母さんは・・」

そう言うとテンは改めて説明を付け加えた。

「確かに、サンは生前のヤンの姿で母親を待っていたが待っていた母親とはあんたの事だったんじゃよ」

「私?」

「そう、あんたじゃ」

そう説明を受けても未だ敬子には訳が解らなかった、困惑した表情の敬子にテンが言った。

「何度も言うようじゃが私とサンが待っている母親とはあんたの事じゃよ敬子」

テンもサンも何かを訴える様に敬子を見つめた。

「母親と言われても・・私の子供はまだ三歳を迎える前の優貴と沙紀だけよ」

敬子は目の前にいる二匹が自分達の母親と言われてもどうしても理解できずにテンに対して質問をした。

「それでは、私は渡辺敬子の前はウサギだったの?」

今まで真剣な瞳で敬子の事を見つめていたテンとサンはその言葉に吹き出して笑い始めた。

目の前で陽気に笑っている二匹のウサギをただ呆然と見つめるだけの敬子にはこの二匹の言っている意味がかいもく理解出来ずにいた。

「すまんかったな、こんな事はなかなか理解出来る事じゃないことはわしらも解っているがわしらの何度か前の名前は優貴と沙紀言う名前だったんじゃ」

そう言われて初めて敬子はこの目の前にいる二匹のウサギが自分のわが子である事を理解出来た。あの愛しい優貴と沙紀が今目の前にいる、しかし、目の前にいるその姿にどうしても敬子はあの頃の可愛い我が子の姿か浮かんで来ずどうしてもその言葉を正面から受け止める事が出来なかった。

「優貴と沙紀がどうしてウサギの姿に?」

二匹はお互いに目を合わせか確認した上でテンが話し始めた。