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敬子が光に向って歩いて行くとどうもその人影がヤンである様に敬子には思えてきたがその確証がもてない、何とかしてその影を確認しようとして敬子はその人影に走りより叫んでみた。
「ヤンさん?もしかしてヤンさんなの?」
敬子がその人影に声をかけてみたが光の先に向かって歩くその人物は敬子の言葉を無視して光の中に溶けて行くようにその先へと向って歩き続けた。
「ヤンさんなの?」
そう敬子が話しかけるが、その人物はその光とともに少しずつ敬子との距離を広げながら図書館の入り口へ向って行った。
その姿を敬子が追いかけてどのくらいたった事だろうか?
そろそろ、図書館の入り口のドアの近くまで来ている頃ではないだろうかと敬子が思っているとその光の輝きは突然収まった。
光が収まりに目が馴れず少しの間、その場で目を凝らしているとその先に立っている老人はやはりヤンであった。
「ヤンさん、やっぱりヤンさんだ。何度も名前を叫んだのに何で答えてくれなかったんですか?」
そう敬子が言うとヤンは無表情で敬子に答えた。
「ごめんなさい敬子さん私・・・」
そう言うとヤンは何やら困ったようなそぶりで近くにあるテーブルの端に目線を向けた。
「ん?」
敬子がその視線の先に目をやると自分をむかえた一羽のウサギがテーブルと椅子の間から長い耳を突き出し姿を現した。
「テン?それともサン?」
敬子にはその年老いたウサギの姿のどちらがテンでどちらがサンなのか見分ける事が出来ずにいた。ただどうして一羽しかここにいないのかが不思議であった。
「あなたはテン?それともサンなの?」
そう目の前のウサギに聞くと、そのウサギは敬子に向かって少し憮然とした表情で答えた。
「わしは、テンじゃ」
「ごめんなさい、私にはどちらがテンでどちらがサンなのか未だに区別がつかなくて、二匹とも双子のようにそっくりだから・・」
そう言って照れ笑いをした。そして改めてテンに聞き返した。
「そう言えばサンはどうしたの?なぜここにいないの?」
そう質問されたテンはヤンに視線を向けた、そしてうつむいたままのヤンに向って天が話しかけた。
「満足したか?サン」
その言葉にヤンはゆっくりとうなずいた。
「ヤンさん?・・・」