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敬子も、テンもサンも一頻り涙を流し切った後、敬子はテンに質問をした。

「そう言えばテン、どうしてあなたたちは自分の素性を明かしたの?さっきの説明では私にあなた達の素性を教えてはいけないんじゃないの?」

そう敬子が聞くとテンが困ったように答えた。

「実はそうなんじゃが、お母さんの手にある白の本のおかげなんじゃよ」

「この白の本のおかげ?」

「そう、その白の本はそもそも誰でもが手に出来る本ではないんじゃよ」

「誰でも・・」

「そう」大きくサンが頷いた。

「その白の本と言うのは本が相手を選ぶんじゃ、だからそうそうこの図書館の中でもお目にかかることがない代物なんじゃ、しかしなぜかそれをお母さんが南のテーブルの上で手にする事になってサンは慌ててわしの所に戻ってきたんじゃ、本当はサンは適当なところで居なくなるはずじゃったんじゃがその白の本を見て自分でどうしてよいか解らなくなってしまってしまったんじゃ」

テンの話を聞き手にあるその白の本を見つめ敬子は呟いた。

「本が相手を選ぶ・・・そういえばこの本の何ページ目かに手紙が差し込んであってその手紙にその様な事が書かれていたわ」

そう言うとテンもサンも驚いたように二匹は顔を見合わせた。

「手紙?」

「一枚だけだけど便箋でその様に書かれていたわ」

「一枚・・・」

テンがそう言うとサンが呟いた。

「神様の手紙?」

「どうやらそうみたいじゃな」

二匹は小さな声で呟き合って何を話しているのか敬子には意味不明であったが二匹のその驚き様はただ事でないことだけは理解できた。

「そんなにその手紙はすごい事なの?」

屈託なくテンに問いかけるとテンは困惑したように敬子に言った。

「その手紙は神様からの手紙なんじゃよ」

「神様からの?」

「そう、私たちだって会った事も話した事もないんじゃよ、その神様からじきじきに手紙を授かるなんてお母さんは何を考えてこの白の本手にすることができたんじゃ?わしらですらどうやてこの本と出合うことが出来るのかサッパリ解らないんじゃから・・・」

敬子はテンとサンの驚いた様子を見てその白の本を(めく)って先ほど読んだその手紙を見せようとした。

しかし、先ほどまであったその手紙は幾ら探しても本の間からは出てこなかった。

「何を考えてったって、私はただこの本棚から次の世の一冊を選ぶ事なんて出来そうにないからもし次に本に触れたらたとえその本がどうあれその本を自分の次の一冊に決めようと思っただけで南の端に行ったらテーブルの上にこの本が置かれていただけよ」

「そうなんだ」

何とも不思議そうにテンは聞いていたがサンが敬子に向かって語り始めた。

「お母さんは選ばれたんだよ、次の世に行く際に、ここではその人生を選べるのにそれをせず神様に身を任せたから神様がそれに答えてくれたんじゃよきっと、しかし、その新しい人生はこれからお母さんが一から作り出すものでそれは大変んな苦労が伴う人生かもしれないし、また逆にとても幸せな人生かもしれない、どちらにしてもこれからお母さんがこの本に書かれる物語を作り出す事に相違ないはずじゃ」

「本当にお母さんは神様に選ばれた事だけはいなめないね」

そうテンが言うとサンは敬子の顔を覗き込んで言った。

「そんな事だからその白の本のおかげで私たちは生前の名前を告げることが出来たんじゃよ、本当はさっき話した通りこの図書館を出るまで生前の事は話してはいけないんじゃがその白の本だけは特別なんじゃよ」

続きをテンが言い始めた。

「この図書館の約束事では図書館の中で次の世の一冊を決めてその本を持って出る時、案内人は始めて図書館の出入り口で自分の素性を明かしていいと言った約束事があるんじゃよ、しかしこの白の本はこの図書館の本ではないからその本を選んだ時からわしらはいつでもお母さんに自分の素性を語ることが出来たんじゃ」

「この本はこの図書館の本ではないの?それではこの白の本は何処から来たって言うの?」

「そうこの本は神様の本なんじゃ、だからわしらですら見るのは始めてなんじゃよ、だからお母さんがこの本と決めた時にこの図書館ので出入り口が光輝いたのはお母さんを導いた光なんじゃよ」

「導いた光?それでは、あなたたちは別に私に自分の素性を教えたからと言って何か問題がある訳じゃないのね」

テンもサンも敬子に向かって大きく頷いた。ホッとした表情で敬子は二匹を見下ろし白の本を見つめた。

手にした白の本を見つめていると目の前にある図書館の入り口からは少しずつだが扉が開き閃光が敬子と、テン、サンを照らし始めた。その眩い光はこの上なく温かく包み込む様に穏やかなで不安などのない気持ちがこみ上げてきた。

もう敬子にはこの図書館に来た時の不安な気持ちや悲しみはまったく感じることはなかった。光に包まれテンと、サンに連れられた敬子がその光の先に差しかかろうとした時、改めて敬子の手を握る感触が変わることに気が付いた。

敬子は視線を下げテンとサンを見ると二匹の姿はあの当時の優貴と沙紀の姿へと変わっていた。

「優貴、沙紀」

二人の名前を呼び改めて膝を落とし二人を抱きしめる敬子の姿は少しずつその白い光に溶けて行くように消えていった。

そして図書館の入り口は何もなかったようにまた次の訪問者を待つようにその大きな扉を少しずつ閉めていった。

何年、何十年経ったことだろう。

新しい命が今まさに生まれようとしていた病院の分娩室では今か今かと一人の男が廊下を行ったりきたりしている。同じような光景をこの廊下で幾万回繰り返された事だろう。

「おんぎゃ、おんぎゃ」

分娩室からはこの世に生を受けた力強い産声が響き渡った。

こうしてまた新しい人生がスタートするこの子の人生はいったいどんな人生なんだろう、天国の図書館で選んだ本の様な人生を歩んで行くのか、もしくはこの子があの白の本の持ち主なのかもしれない・・・