今日は雨ですTT
今度雨をテーマにした堂郁も書こうかな。
一本で終わる感じのSSです。
恋人期 堂郁
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「じゃじゃーん!」
いつも堂上から呼び出すが今日は久々に郁から呼び出された。小牧のニヤニヤに見送られ、今は郁のニヤニヤの前にいる。
差し出したのは小さなパウンドケーキ。程よい焼き具合で抹茶色に染まっている。
「どうしたんだ、これ。」
「先週作ったんです。寮で火は使えないけど電子レンジなら使えるってことに気づたので。パウンドケーキは材料混ぜればできるんです。先輩から材料貰って作りました。」
先週の公休は用事がある、と言われていた事を思い出した。その時は柴崎との買い物でも行くんだろうとたいして気に留めなかったが今思えば『用事がある』と言われたのは初めてだった。
毎回『柴崎と買い物』であったり『飲み会』だったり特に伝えるように言っているわけでは無いが必ず具体的に要件を堂上に伝えてくる。
「そうか。で、これを俺に?」
首がちぎれるんじゃないかというくらいの勢いでブンブン縦に振った。
「犬みたいだな。」
「えっ、あたしがですか!?せめて猿から下げないでください・・・ ゴリラとかの方がまだいいですよう。。。」
予想の斜め上の発言に驚いた。いや、いつものことと言えばいつものことなのだが真顔でそういわれると面白くて仕方がない。
「お前、注目するところそこじゃないだろ、普通。しかもゴリラでいいって・・・」
「人間にしてくれるなら人間がいいです!っていうか人間ですよ、あたし。」
「わかってる。そうムキになるな。このパウンドケーキは抹茶味なのか?」
だいぶ話が反れたので軌道に戻す。 再び郁の顔に笑顔が戻った。 相当頑張って作ったのだろう。
「はい。でも、味見してないんですよ。見た目が良かったから大丈夫かなーって思って。」
うっかり成分80%以上の郁が『味見をしていない』というとかなり心配になった。しかも、見た目が良かったから大丈夫ってどんだけだ!という突っ込みは純粋な郁の笑顔を前にしては言えない。
人生で初めてパウンドケーキ作ったんです。と頬を赤らめて言われてはなおさらだ。
そしてそれがものすごく可愛い。
「食べていいか。」
またまたぱっと顔が明るくなった。
「はい!もちろんです!教官のために作ったんですから。」
抹茶色のパウンドケーキはふんわりしていて不器用な郁がここまでできるのかというくらい素晴らしい出来だ。
口の中に入れるとほんのり抹茶の香りがした。
「ん・・・?」
しょっぱい。汗でもかいて自分の口に入ってしまったのかと思ったが、それにしても・・・・・しょっぱい。
「どうかしましたか?」
きょとんとした子犬のような顔で郁がこちらを見つめてくる。
「もしかして砂糖と塩を間違えて入れたなんてことは無いよな?」
先程まで笑顔だった郁の顔が一気に青冷めたのが目にとれた。堂上に有無を聞く前に手から食べかけのパウンドケーキを取って口にする。
「しょっぱ!なにこれ!?教官、しょっぱかったらしょっぱいって言ってくれて全然いいんですよ。ああ、本当ごめんなさい。g量ってやってもこんなありきたりな間違いするなんて呆れちゃいますよね・・・。」
ホント、すみません。とシュンとうなだれる姿は落ち込む郁には少しばかり申し訳ないが可愛い。こうなってしまえば砂糖と塩を間違えたことすら可愛いように思えてくる。
「俺はどうやら重症の郁病にかかってしまったようだな。」
「やっぱり呆れちゃいましたよね、すいません、ホント。」
「いやいや、そうじゃなくてだな。お前可愛すぎだ。」
「えっ!?今のどこに可愛いなんて要素あったんですか!教官、もしかして熱でもあるんじゃ・・・」
混乱する郁を抱き寄せて黙らせる。
「いいから。それ以上可愛いことするな。寮に帰れなくなる。」
耳までゆでだこのように赤くなる郁を見て自分まで恥ずかしくなった堂上だった。
★
「で、堂上教官はどうしたの。」
寮に戻ると早速堂上の反応報告会を柴崎にすることになった。報告会ではなく、これは尋問に近い。
「なんか・・・よくわかんないんだけど・・・『重症のイクビョウ』とかなんとか・・・」
「はあ?あんたら呆れるわー。ホント、糖度高すぎ。こっちまで胃もたれしちゃいそうだからやめてよー。強いお酒ちょうだーい。」
えっ、酷い。と食って掛かる。
「あんたねえ。イクビョウの意味わかってないでしょ。」
コクリ、と頷く。
「アイス一個で教えてあげるわ」
せっかく柴崎に報告してるのにー と愚痴を漏らすと「当たり前でしょ。」とシレっと返された。何が当たり前なのかよくわからないがいつも何かと協力してもらったりしてるので歯向かえない。
クソ、悪戯深い笑みすら美しい。
外食一回にされないだけ安いもんだ、ということでアイス一個に応じた。
「あんたのことがスキすぎて砂糖と塩を間違えたのすら可愛く思えちゃった~ってことよ。 あー、説明するのもベタ甘過ぎてつらーい!本じゃなくて検閲すべきはこっちのバカップルだわぁ」
一瞬意味が分からなかったが数秒経ってやっと意味がわかり顔が真っ赤になる。
「うそーーーーーーーーーーーーーーーー!」
この時の郁の叫び声は女子寮中に響いて後々大きな話題となったそうな。
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