上官部下期 訓練中
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夏は水分補給が絶対だ。
特に戦闘職種である図書隊員にとって水分を取らずに訓練をするなどということは自ら死に行くようなものである。だから訓練の合間には必ず水分補給をした。ボトルの見た目に凝るものはもちろん誰一人いない。部活のようにマネージャーがいるわけでもないので必ず独自で用意することになっている。
だが、「うっかり成分」が80%を占める郁に必ず忘れないというのは難しかった。
もちろん忘れた日には必ず堂上に怒鳴りつけられる。水分が無くては倒れてしまうので自腹で自販機に行って買うことになるのだ。
そしてしばらく忘れ物が無かったはずなのに。今日、忘れてしまった。
「うわあ。どうしよう・・・・・」
「なんだ。緊急事態か。」
手塚は冷静にこちらを怪訝な目で見つめてきた。もちろん手塚にとっては『緊急事態』とまではいかないが郁にとっては十分『緊急事態』だ。
「うん。緊急事態。水忘れた。」
緊急という言葉に反応したものの水を忘れたという何とも間抜けな理由を聞いた手塚は大きくため息をついた。
「お前、それ、何回目だ。」
「わかんない・・・・。って、昨日も忘れたみたいにいわないでよ!ここ3週間は忘れてないんだかラっ!」
「ったく・・・。俺は知らない。自分でどうにかすれ。」
要するに、堂上に怒られても手塚は知らない。ということだ。まあこれは郁個人の問題なので仕方がないがここで何かフォローを入れてくれたっていいじゃん、といじける。
仕方ない。自販機に買いに行くか。
自販機に着いたところで郁は目を見張った。
そこには、『売り切れ』の文字がズラリ
「なに・・・・これ・・・・。あたしは水すら飲めないのかーーーーーー!堂上教官に怒られるーーーー!」
「水忘れたのか。」
ぎょっとして振り返るとそこには堂上が仁王立ちしていた。何故ここに、と思ったが時計を見るともう集合時間の5分前だ。常に10分前行動を命じている堂上だ。何があったのかと思っていたら自分の名前を叫ぶ郁の姿が目に入ったのだろう。
「はい・・・。でも、全部売り切れなんです。だから仕方ないのでもう戻りますね。」
Uターンしようとした矢先、堂上が郁の行く先を手で制止した。
「アホか貴様!水分を取らないでどうする!水道の水を持ってこい!集合時間は気にしなくていい。だが、腕立て10回だ。」
いつまでも厳しい堂上だが思わぬフォローに助かった。
その後、堂上が集合場所に戻って郁を待つが、郁が全く戻ってこない。ここから水道まではすぐだ。そう時間がかかるものではない。
「笠原さん、遅いね。見てくるか。」
おう、と小牧に頼み郁の様子を見に行ってもらうことになった。
「か、笠原さん!!聞こえる?」
小牧が水道にたどり着くと水が流れっぱなしになっているところに倒れる郁の姿が目に入った。
どうやら熱中症で倒れてしまったようだ。顔が真っ赤になっている。 水道の水を触ると温く、全く冷たさが感じられなかった。
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今日三本も書いてしまいました汗
しかも、一回で終わらないタイプーーーーーーーーーーーーーーー!
すみません。これも続きます汗。